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ひととま  作者: 珈琲
第二章
60/105

2-9

同じ頃、外から城内への扉は、今は閉ざされている。

すでに常駐している先輩救護隊がいるので、避難している新人達に出番は特に無い。


終わるまで待機。


今年の救護隊のトップ層とはいえ、窓から外の様子を伺う者、泣き言を言う者、率先してやる事を探す者など、人となりが知れる。


アキも例にもれず、謎に回復薬を飲み続けているせいで、周りから変な目で見られていた。



「アキくん、だっけ?どうかしたの?体調悪いの?顔色悪いよ?」

救護隊トップの成績で入隊したサラが話しかけてきた。


「あ、いや、別にそういうんじゃないよ。ちょっと今すごい貧血なだけだから…」

外で姉が、猛烈に魔力を使って暴れ回っているから。魔力供給が追いつかない、なんて言えない。


「貧血なりやすいの?」


「ううん。ちょっと……緊張してるだけ…かも?」


「魔法で治せばいいのに。やってあげるよ?」


「大丈夫、大丈夫。本当に…そのうち治るから」

お願いだからあんまり聞いてこないでー。


「そっかぁ。じゃぁ、何かあったら言ってね!これからよろしくね!」


時々、本にでてくる聖女様ってこんな感じなんだろうなぁ。なんか純粋そうだし、浄化されそう。


「うん、よろしくね…」


「あっち、王子様とお姫様達がいるね。」

アキはなんとなく気まずいのでちょっと吹き抜けの二階、四人の王子がソファに座っているのが見えたので、話を振ってみる。


「珍しいよね。王子様達がみんな揃ってる、なんて。今まではほとんど顔なんて出さなかったのに。間近で見ると、やっぱり気品があるというか、格が違うというか…

お姫様方は時々お茶会やパーティで会うけど…やっぱり全然違うわね。」

サラは、ビシッと決めた、礼装を着こなしている王子達にうっとりと見つめてしまう。


「え?お姫様とお茶会?パーティ?……君はどこの人??」


「うふふ。叔父様が、ここで右大臣しているのよ」

小声で言った。


「叔父様??」


「うん、叔父様。」


「えっ!?超エリートお嬢様じゃん」


「実はそうなのよ!お陰で“出来て当たり前。トップで当たり前“ってプレッシャーがすごいわよ。礼儀作法とかもね…。次期国王の嫁になれ、とか…」


「それは…大変だね…。じゃぁ、もう婚約も?」


「ううん。まだなのよ。今までならとっくに次期国王様が決まっているのだけど……今回は全然らしいのよね」


「そっかぁ」

今までならとっくに王子達、一人以外全員死んでるんだもんね。

「お城の事、詳しいの?」


「他の人よりは。ってくらいね。叔父様にしょっちゅう会う訳ではないし……」



「やあやあ。俺も交ぜてくれないかな?

トップのサラちゃん、三番手のアキくん。

俺、二番だからさ。仲良くしてくれない?」

成績二番手のツカサが、割って入ってきた。


「どうも…」

アキはとりあえず会釈だけ。

仲良くする態度じゃないなぁ。


「まさかここで大臣のお嬢様に会えるなんてね。ぜひ色々教えてほしいなぁ〜」

サラの手を握った。


「やめてください!」

バッと手を振り払う。

「貴方、何度かパーティで見かけてますが…マナーが全くなってないのね」


「へー。そんな簡単に女の子に触るんだね。ハレンチ〜」


「は?平民で何も知らないくせに生意気な……」

アキの胸ぐらを掴んで怒り出した。


「平民でも、女の子の手を勝手には握らないよ」


「やめなさいよ。貴方、乱暴で煩いわ……。こんなので救護隊なんて、ありえないわ」


「実力だよ。お嬢様。こう見えて、魔力は強いのさ」


「試験に性格もあればいいのに。最悪。

……ねぇアキ………この匂い、何かしら?さっきはしなかったわ」


「可愛いのに気の強いお嬢様だね。

……? 何も変な匂いなんて無いじゃないか」


「匂い?」

アキも周りをくんくん……嗅いだ。

「本当だ。さっきまでこんな匂いしなかった気がする…何の匂いだろう?何か…金属臭っていうか…魔力でも入ってるような?弱い人は分からないような微量の……」


「怪我人入ってきてるんだから、血の匂いだろ。

俺の魔力が弱い、みたいな聞こえ方は失礼じゃないか。そもそもさっきからお前失礼だ」


「君も平民に対して失礼ばっかりだから、おあいこ」


「お前と話すとイライラするな」


「それはどーもー。平民だし、話かけなくて良いよ」

こーゆー奴は嫌いだ。折りたくなる。


「んー…何か………胸焼けしそうな匂いね」

サラはお構いなしに、匂いを探っていた。


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