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「あーぁ。まいったなぁ」
一枚の紙ペラを読みながら、団長アオトが呟いた。
「また何かあったのか?やっと落ち着いてきたのに」
指導から戻ってきた副団長のリンデンが、声をかける。
「これ」
王家の印が押された公式の手紙。
国王と右大臣の連名。
『極秘』の文字。
ここ最近の王子傷害事件で、誰も亡くなっていないことへの感謝が記されていた。
が、後半はノエル王子の捜索願い。
大々的にはできないので、九歳当時の顔写真、特徴等記載され、
各団でそれらしい人物の調査を頼む内容が記されていた。しばらくの間は、毎週報告せよ。と。
「探ってんのかぁ…」
「まぁ、「多分いそう」ってかんじなんだろうけどな。偶然が重なって。王子が全員襲われたけど、怪我はあっても死ななかったからな。今までだったら皆、死んでるのだろうな、きっと。
ずっと第二王妃様がメインだったけどさ。今回は国王様まで出てきたって訳」
「報告した方が…いいのか…?」
「それはダメだ。味方か分からない。
殺す為に探していたら大変だ。
とりあえず、呼んできてくれ」
ーーー
「失礼します」
副団長に連れられ、ノアが入室してきた。
「おー。ご苦労さん。急に悪いね。これさぁ」
団長が声をかけ、持っていた手紙を渡す。
「んーー?……………まじですか」
「まじなんだ。すっかりお尋ね者だな。
捜査報告の義務が発生した。
それにしても、お前九歳で人相悪過ぎないか?」
「だよな。目つきやばいよな」
団長の言葉に、副団長も同調した。
綺麗な薄い、水色のストレートヘア。
金の混じった水色の瞳の少年が、猛烈に睨んでいる。
「あの当時は、メンタル死んでて。
みんな死ねって思ってましたし、剣持ったきっかけは、レイ殺そう。でしたからね。
この写真が一番マシだったのかな?」
「九歳でそれか…だいぶいっちゃってんな」
「人間変わるもんだな…」
「エリックさん家でかなりメンタルケアしてもらって、だいぶ落ち着きましたね」
「今は?」
「そこは、もう…ね」
「本当は?」
「……ちょくちょく」
「まぁ……ケアは大事だな。
いま病院や学校でもカルテやら名簿やら遡って漁られてるようだ。下手な行動はやめた方がいいな」
「そこまでやってるんですね…。
予算も減ったみたいだし、探すのは諦めたのかと思ったんですけど」
「どうする?国王様には報告するか?印も押されているから、何かしら報告しないといけない」
「はぐらかして欲しいですよ。俺としては。
まだ…暗殺部隊が関わっているくらいしか知りません。左大臣、アーノルド側の奴だろうなぁ。って。まだ主犯とか分からない…」
うーーーーん……と、三人で腕組みして考える。
「ルカ様から何か連絡は?」
団長が口を開いた。
「全く。やり取りが危ないので。右大臣と警察部隊長は少なからず、前日の記憶は辿れます。タイミング次第ではバレます。
レイは死んでいいけど、他は死んでなきゃどうでもいいし。
次は誰を狙うのか…それとも、先に俺を殺しにくるか……」
「俺ならまずは、お前殺してから。にするだろうな。歯車狂わされた元凶から。
だから、炙り出しかな」
団長が怖い事言い始めた。
「うわ…」
「うん、俺もそう。じゃないと安心して殺れないじゃん」
副団長までもが怖い事言う。
「一旦は“該当者無し“って報告するしかないか。バレたら首飛ぶよなー。下手したら死刑じゃね?」
団長は、頭を抱えた。
「はぁ……。バレないように、かぁ。追う側が、追われる側になるとはね。
諦めるまで、待ちたいところですが……」
ため息しかでない。
「こればっかりは、神様に願うしかないな。
俺、まだ死にたくねーよ……って!!!
兄貴見つかったら芋づる式にバレる!」
「あ!忘れてた!ヒスイもいたわ。言っときます」
「俺も電話しとく」




