2-5
「なあ、ユキ、騎士団もいいが、王子の護衛もいいと思うぞ?」
「なぁユキ、近々、王家直属の騎士団が五百年振りに復活するんだ。各団や外部から、少しずつ精鋭を集めている。まだ少ないからお前も推薦する!どうだ?」
「ローラン様もお前を気に入ってくださっている!会いたいとまでおっしゃっておるのだ!」
「なぁ、ユキ、給料倍以上は出す!頼む!!」
「なぁユキ、、、」
「なぁ……」
…………。
「おい、ユキ。大丈夫か?顔色悪いぞ?」
突然、声をかけられたユキは、ビクッとした。
休憩所のソファでぐったりしているユキを見かねて、団長のリオが声をかけてきたのだ。
「あ、団長か……。良かった。なんかノイローゼになりそうなんですよ…」
「あれからずっと、ストロフに追われているのだろう。お前まだ治療中だよな」
「ゆっくり病室なんていれませんから。
毎日来るんですよ。
それに俺…第一騎士団がいいので……」
「そうか。ちょうどな、春からお前をニ斑の班長にしようと思っていたんだよ。新人なのに強いだろう?皆、口々に言っていてな。
あの緊急事態切り抜けて。頼もしかったらしいぞ。ストロフからの執拗なスカウトもある。
もし、望むなら班長になりな。そしたら諦めるだろう。
まだまだ覚える事はたくさんあるけどな」
「逃げる為でもいいんですか?」
「構わないさ。認められているんだからな。判断力や実力は重要だ。
あの怪我であれほど暴れ回っておいて、ピンピンしている。君は必要な人材だよ」
「班長やらせてください」
ユキは即答し、頭を下げた。
「ふふ…面白いね。王家直属の騎士団すら断るなんて。普通は名誉な事なのに」
「ずっと父親見てたんで。第一騎士団がいいんですよね」
「君のお父さんも元々第一騎士団?俺も知ってるかな?」
「そうですね…誰か、は言いませんけど」
「分かった。では、春からの活躍も期待しているよ。でも、ちゃんと病棟戻って治療はしてくれ。スリッパ血まみれだぞ」
「ありがとうございます」
ユキは再度、頭を下げた。
ーーー
なんか成り行きで班長になっちゃったなぁ。
まぁいーけど。そろそろ戻るか…
「あーあ。傷口開いてるね。包帯真っ赤だよ?」
突然、声をかけられた。
「誰?!」
「この前はありがとうね。君、全然来てくれないから来ちゃったよ」
「だっ…第……」
人差し指で、しーーってされたし、気配無かったぞ?
「静かにして。内緒だから。こっそり来たんだよね。」
後ろにはストロフがいた。
「うわぁ……」
「ユキ。王子の前で不敬だぞ」
「お前のせいだよ」
つい素が出てしまった。
後ろを振り向くローラン王子。
「ストロフが迷惑かけたみたいで、悪いね」
「いや、まぁ…はい。
ローラン様、あの。足は……?」
「あぁ、腕利きの治療師にくっ付けてもらったんだよ。杖は必要だけど、少し歩くぐらいはだいぶね。
今後はもう追いかけないようにさせるから。」
「ありがとうございます」
ホッと一安心した。
「あのさ、連絡先教えてよ。友達欲しかったんだよね。普通の。機嫌とろうとしない人」
ん…?
「兄弟仲良い訳じゃ無いし、友達らしい友達とか居ないし、義兄も意味わかんないし。
そのくらいなら良くない?もう護衛には誘わないからさ。お願いだよ」
「う…ぅん…まぁ…」
超断りにくいやつじゃん。
「やった!じゃあ今後俺のことはローランでいいからね。敬語も要らないよ!
ストロフ、今日は良い日になったよ」
……その後、気づいたら一時間くらい喋ったけど、普通そうで良かった。別に俺の話なんて、面白くは無いだろうに。
「じゃぁそろそろ帰るね。また話そうよ。楽しかったよ」
ユキは、ご機嫌で帰っていくローランの後ろ姿を眺めていた。
ノアといい、ローランといい、なんで俺…??
門のところでローランを待っていたリオ団長。
「話できましたか?」
「アドバイス通りにさせてもらったよ。結構押すといけるね」
「それは良かった。お気をつけてお戻りください」
「ありがとうね。おしゃべりって楽しいもんだね」




