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ひととま  作者: 珈琲
第二章
55/104

2-4

最近ではすっかり教える側になってしまったノア。



勉強しながらだからなぁ。疲れる……


休憩時間は休憩室のソファで、ゴロゴロするのが日課になってしまった…

大半魔族の団員が疲れるんだから、俺が疲れない訳ないだろうに。あーぁ。もーちょい体力ほしいなぁー。



「だいぶお疲れみたいだね。副班長昇進おめでとう。同じ一斑なのに全然話せないな」

グリムが久しぶりに話しかけてきた。



「どうもー。俺に余裕がないんじゃないかな」



「怪我は治ったみたいで安心したよ。魔族じゃないのによくあそこまでやったよね。あんなに気を許してるお前初めて見たし」


「……覚えてないなぁー」


「つれないねぇ。結構サポートしたんだけどな」


「…あの時はありがとね。みんなには内緒で」


「はいはい。もうじき新団員も迎えるし、さらに忙しくなりそうじゃん。その前にどっか飯とか」


「今日の夜なら行けるよ。あとさ、またサポートして。お前もだいぶ上でしょ?」


「そうだけど…まだまだ着いて行くの大変なレベルだからあんま余裕ねぇんだよ。最近団長がハードル上げてるじゃん。

でもあの子…ハルちゃんだっけ?頑張ってるね。案外大丈夫そうじゃん」


「多分、あの家がオカシイんだよ……あの人たちについてくのほんとキツいもん。ハル的にも、ここの訓練なんて“強めの運動“くらいだろ」


「まじ?俺、結構キツいよ?」


「まだまだ緩いね、グリムは…てゆーか、訓練中に余所見やめてくれる?」


「チラッと見えたくらい、いいだろ」



「おい、休憩終わってるぞ」

ライラ班長が呼びに来た。


「え!?すみません!!」

「あっ!」

慌てて立ち上がる。


ガッ、とノアの胸ぐらを掴んで詰める。

「おい、ノア。副班長として早く自覚持て。時間くらいちゃんと見ろ。指導する立場だろ。

…グリムは戻ってろ」


「は、はい!」

ダッシュで休憩室を出て行った。



「強ければいいってもんじゃねーんだよ。お前、以前も一回遅刻してるよな。ふざけんじゃぇよ。上が緩けりゃ部下は従わねぇし、気の緩んだ班なんてまた、死人が出るだけなんだよ」


「すみ…ません…」


「神殿まで十往復だ。さっさと行け。今日中に戻れ」

バッとノアから手を離した。


「……はい…」




「はぁーーー。完全にやらかしたなぁ……」

山だから全部が坂道。全力ダッシュで往復一時間。

そして、もう今はお昼過ぎだ。


「これはマズイ。今日中に戻れなくなってしまう……」



ーーー


「あーーやっと七往復。死っぬ」

すっかり日が暮れた。

あぁ、地面が恋しい。横になりたい。

でも横になったらもう立てなくなりそう…


「やっぱまだ走ってたか。お疲れさん」

水を待ったグリムが来た。


「何か、用?」


「いや、俺だけ免除も悪いなぁと」


「そう?別に、いいんじゃない?俺のせいだし。

じゃ、時間無いんで」

ダッシュで坂を駆け上がる。


「あ、待っ……ったくさー。一緒に走ろうと思ったのに」


そこへ、ぞろぞろと街の巡回組が宿舎に戻ってきた。そこには、ハルとレモの姿もあった。


「何してんの?」


「ノ……副班長がまだ走ってんの」


「マジで?!じゃぁ俺たちも追いかけようぜー」

「いいねー」


「班長怒らすと怖いわね…でも、面白いしちょっと行こうよ!先輩達と仲良くなるチャンスよ!私も走るわ!」


「えぇー……帰……!」

レモはぐいっとハルの腕を掴み、追いかける羽目に。



夜も深くなり、時計の針が深夜0時を過ぎた頃、様子を見に来た班長ライラの姿が。

「お疲れ様でーす」

「あ、お疲れ様です!」

次々と声をかけられる。


「なんでこんなにいっぱい居んだよ」


周りには一緒に走った皆さんも、地面に寝転んだり座っていた。


「はぁ…はぁ…知りませ、ん!」

地面に横たわりながらノアが言った。


「まぁいい。明日は遅刻するなよ」


「…はい!」

あ。デカい声出ちゃった。


「お前らも早く部屋戻れ」




近くにハルがいたからつい、声をかけた。

「ねぇ、なんでハルも、走ったの?」


「わかん、ない…」


「まじごめん…明日…起こして…」

フラフラと立ち上がり、部屋へと帰って行った。


「え、何!?そーゆー関係!?」

レモが即座に反応した。


「いや、まじ何もないよ!?」




翌日は、壁伝いによろよろ歩くノアが発見され、

団長が「使い物にならん!」


と、いう事で非番となった。


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