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ひととま  作者: 珈琲
第二章
54/104

2-3

最低限の荷物を持って、早朝から宿舎に来たハル。

早過ぎて、まだ誰も居なかった。


ちょっと張り切り過ぎたかな…でも、良い空気だし、遅刻よりは絶対に良い!


ベンチでゆっくりしてたら時間がきて。

皆んなの前で、紹介されて。


「やばいなぁー緊張するなぁー」


「そう?名乗って挨拶だけよ。覚えてもらいたいじゃない。じゃぁ私先に。」


一歩前に出て、名乗って挨拶。

ほんとそれだけ。


「それは、そう…」


ハルも前に一歩出て

「ハルと言います。これからよろしくお願いします」

たったこれだけなのに、動悸が…。


その後はスムーズに。班長、副班長に連れられて訓練の様子を見学したり、ちょっと参加したり。

森で魔物討伐も。街に行かないように片付ける。


早朝からいたのに、あっという間に夕暮れ。空が綺麗な色してる。



案外ベッドは心地よいね。

「疲れたー。緊張したーー」

ノアといて、私語無しとか初めてだし。



「本当、初日は疲れるよね。ハルは何歳?私、もうすぐ16になるんだけどさ」


二人部屋なの忘れてた!独り言のはずが、返事が返ってきてしまった。


「あ、私は次で15だよ。夏。八月ね」


「夏生まれなのにハルなの?」


「うん、双子だから。夏を真ん中にしてハル、弟がアキなの」


「人のこと言えないけど、親めっちゃ癖強だね…。うちも、レモン農家の長子だからって安直にレモンにされたのよ。さすがに酷すぎでしょ?美味しいのは認めるけどさ、名前にはちょっとさ…」



「考えたことなかったけど、確かに癖強いかも…お母さんが。でも、レモさんも大変なんだね…。

そういえば、警察部隊からきたんでしょ?カッコいいじゃーん」



「昔から憧れてたの。街のお巡りさん的なの。事件、事故を解決してカッコいいでしょ。……でもさ、最近王子様が狙われて…魔物関連って調査して報告して終わりなのよ。

警察部隊は基本人間で構成されてるじゃない。魔族とか魔物とかは強さが違い過ぎて危険だからスルーなのよね。

私、どちらかと言うと魔族寄りだからさ。こっちの方が役に立てるかなって。一応、一年お巡りさんやれたし!」



「なるほどー。理由が立派すぎる…うちは代々魔族って聞いてるけど…

私、魔法苦手だからちょっと疑ってるの。お父さんが元騎士団員だし。兄ちゃんも弟もそんな感じだし、ずっと憧れてて」



「じゃぁ、お互い憧れの場所に来てるのね!

魔法苦手な魔族がいるなんて、おもしろ〜い!そんな事ってあるんだね!

……あとさ、ここの人たちみんなカッコ良すぎない?魔族とかそっちの人多いんだよね!筋肉のつき方が違うよね、やっぱり。みんな肌白い!

それで強いんでしょ?!人間だと強い人はゴツいしデカいし、すぐ日焼けするし!」


「考えたことなかったよー…」

やばい、レモさん、めっちゃ喋るなぁ…ちょっと口が疲れてきちゃった……。



「まぁね、人間だって十分鍛えてる人はカッコいいよ?でもさ、スマートさってやっぱり別の良さがあるじゃない?

ライラ班長は背も高いし、大人の色気っていうか余裕ある感じで素敵だしさ、ノア副班長は髪の毛上の方で三つ編みのお団子だよ?めっちゃ可愛かったじゃない。それで強いなんて最高ね。一年目で副班長なんてすごいし!

知り合いなんでしょ?今度紹介してよー!

ハルの好みは??どんな人がタイプなのー??」



ヤバい、レモさんが止まらない。

「めっちゃ見てるね…私、緊張しっぱなしだったから何も覚えてないよぅ……特に考えたことないし、副班長は知り合いだけど、、好みとか知らないし……」


「あぁ、気になったら色々調査したくなっちゃうのよ!うずうずしちゃう!頭脳も大事だけど、彼氏は強くてかっこいいほうがいいじゃない?あとで先輩たちに聞きにいっちゃおうかなぁー。それに、リオ団長が一番かと思ってたけど、間近で見たら他の団よりずば抜けてるわ!」



「そっか…ごめん、ちょっとトイレいってくるねー」




「はーーーーー……」

咄嗟に部屋を出るも、ため息が。

ちょっとレモさん大変かも…

よく、友達の恋バナは聞いてたけど……

聞く専だから自分の事考えたことも無かったなぁ。

……いや、もしかしてあれが普通の女子!?

アリスに相談せねばっ!!



ーーやっぱり…今時の子タイプだった。


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