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ひととま  作者: 珈琲
第二章
53/105

2-2

手紙に記された日。

二月二十四日、午後。宿舎前にて。

午後の勤務は始まっており、ほとんど人影は無い。


ハルは、思いっきり深呼吸をした。


昔っからの憧れが。憧れって、実現しないから憧れなわけで。

でも実現しちゃった。また次の憧れを探す旅に出るんだ。きっと。



「よし。」

それから五回くらい深呼吸した。



コンコン。


「どうぞ」


「失礼しますー…」


ドアを開けると、そこには団長と副団長と。班長一同、そして、ハルと同じ様に私服の女性が一人。


「よく来てくれたね。ハル。この人も同じだよ。警察部隊から引き抜いたレモン」

団長が和かに声をかけた。


「あ、は、初めまし、て…」


「初めまして!警察部隊から来ました、レモンと言います。恥ずかしいので“レモ“とか“リモ“と呼んで下さい!魔法はあまり得意ではありませんが、調査や捕縛、体術は得意です!」



あ。名前で苦労してる人だ。



「初めまして…ハルと言います。そのまま“ハル“で大丈夫です。魔法は苦手なので…武器、使います。よろしくお願いします」


二人してペコペコと、頭を下げる。


「二人とも俺の知り合いだし、レモもほとんど魔族の家系だからな。ハルは魔族。親族に騎士団員がいるからそれなり?……まぁ、上手くやってくれな」


「それと、二人とも一班で。最前線いけるだろう」


「一斑、ですか…?」

ハルが確認をした。


「そう、一斑。今は王子の命を狙う輩を倒す事が第一。戦闘に特化させようと思っているんだ。

もちろん、他の班も十分活躍できる者を配置している。基本スカウトは即戦力だからな。一斑にまずは配置だ。

早速だが、着替えをしてきてくれないか。更衣室に全サイズが並んでいる。合うのを探してくれ」


団長に促され、着替えてくることとなった。



ーーーー


履き心地の良いスラックスに、肩の所に「1」と刺繍がされているジャケット。サイズはぴったりのがあったし、なんだか気持ちが引き締まる。紺色はスタイルも良く見える!



「なかなかいいじゃん!初々しいなぁ。あんまり女性居ないから華やかになるねぇ」

副団長が嬉しそう。


「一斑の班長、ライラです。よろしく。これから施設内を案内をするので、着いてきてください」



静まり返った王子住居施設や途中の訓練場、山頂付近の神殿と、室内運動場など案内された。

警備は多く無い。今は守る人が居ないから。



「最後はこちら。明日から宿舎に住み込みになるので、荷物纏めて来てください。部屋は二人同室です。今日の荷物置いて行って大丈夫ですよ」


ぐるりと案内されたけれど、ほぼ山だしなかなかの広さなのもあって会議室に戻ったのはもう日が落ちてから。




バタバタバタバタ……バンッ!!



息を切らし、勢いよくドアを開けたのはノア。



「おい、ノックしろよ」

団長に叱られてしまった。


「すいません」

コンコン。とノックした。



「……いつから……?」


「……今日、からかな……?」


「なんで言わなかった?」


「兄ちゃんもアキも、言わない方がいいって」


「まじアイツらなんなん……!」



パン、パン、と団長が手を叩く。

「はいはい、お喋りはその辺で。

ハルには俺から声かけして呼んだ。即戦力だから一斑。これは決まり事。団のルールとか教えといて」


「俺ですか?」


「そう。班長と分担してな」


「まじかー…」



ノアがうなだれちゃった…

そうだよね。私もちょっと気まずいもん。

距離感難しすぎる。

これは後で相談しないと……。



ーーー


「ハル。ちょっといい?あっちの店入ろ」

門を出たところで、ちょっと不機嫌そうなノアに声をかけられた。



「言わなくてごめん…」

大好きなコーヒーが、なんか飲み込めない。


「まぁ…まじびっくりしたよ。次からはちゃんと言ってね。

はっきり言うと、やりにくい。でも班決めは俺もハルも関われないから仕方ない。どーしよっか」

腕組みしながら、考えている。


「だね……とりあえず、私は敬語で話そうかな、と。やっぱり先輩だしさ」


「まぁそうだよなぁ。フランクすぎたら良く無いね。俺はちょっと言い方キツくなるかも。でも気にしないでおいて。あと、あんまりハルの事見れない。話す時は電話とかメールがいいかな。贔屓とか思われたく無いし」


「うん。それがいいかも」


「バス停まで送るよ」


「ありがと」


「でも、夢は叶ったんだもんな。ふてってごめん。

おめでと」


「ありがと!」




すっかり暗くなったバス停までの道のりは、案外短かった。


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