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ひととま  作者: 珈琲
第二章
52/104

2-1

レイ王子とローラン王子は瀕死の重傷を負いながらも、夜を徹して処置が続けられた事で、一命を取り留めていた。


国王は、ルカ王子が王城に連れ戻されるタイミングで、レイ王子もローラン王子も王城へ。

目の届く所で、療養してほしいと思ったからである。



厳重な警備を敷かれた王城。

偶然か否か。また、暗殺部隊が王子達の警備に当たらされているのである。



「国王様!お言葉ではございますが、暗殺部隊は雑用ではございません!王子達の警備とは何事でございますか!今、我々は王子達に危害を加えた者共の捜索に……」



「少しくらいかまわんだろう。まずは守りだ。何かあった時、小回りが利く。もしルカと接触する奴がいたら取り押さえるのも容易いはずだ」



「ですが……」



「おやおや、アーノルド左大臣。そんなに慌ててどうされたのです。私めの管轄、警察部隊も総動員しておりますから。安心して王子たちの護衛を頼みますよ」



「お前は今日呼ばれてないだろう!何しにきたのだ!」

青筋を立てながら、アーノルドは声を荒げた。



「国王様の御前です。お控えください。

私は国王様へ報告に来たまでですよ…

国王様、王子達の記憶調査の結果でございます。

ニ日遡り、確認しました。

ローラン様は黒いフードの男達と、誘拐犯。

レイ様は第二騎士団の面々と誘拐犯との接触。

ルカ様は二日間、護衛以外との接触はありませんし、怪しい動きもございません。

申し訳ございませんが、犯人特定に繋がるものは映りませんでした…」


「以前より精度が高くなっているが……もう少し遡って記憶を見ることは?」


「申し訳ございません。私も部隊長も、遡って見れるのはニ日前まで…魔力の限界でございます」



「そうか…わかった。ナコル、後ほど私室へ来い。話がある。アーノルドは引き続き、捜索と王子の護衛だ。もう下がれ」


「承知致しました」

ナコルは一礼し、退室した。



「国王様!警察部隊よりも…」


「煩いぞ。アーノルド。王子を守れ。誰も死なせるな。分かったなら、もう下がれ」



「……承知、致しました」




ーーーー


王城内も静まり返った深夜。

コンコン。ノックの音が響く。


壁に護符がたくさん貼られた国王の私室。


「国王様」


「入れ」


入って来たのは右大臣ナコル。



「ナコル、ここ最近の動き、どう見る」


「やはり“怪しい“としか言えません。私も、幼少期は確かに信じておりました。運も実力のうち。国王の幸運は民の幸運であると。

……ですが、アーノルド率いる暗殺部隊が率先し捜索。当時、ノエル様殺害犯として捉えて来た者は、事件から数日経過していた為、証拠も記憶の確認も取れず釈放。

騎士団や警察部隊の強化で偶然の予算削減、ノエル様捜索に当たらせたこの五年……事は何も起きませんでした。

捜索を減らし、予算が増えた今年、王子の事故が突然起こりました」



「どう考えてもおかしいだろうな。何かの“呪い“にかかったような文献は無い。歴代国王は十代以上遡っても、兄弟はいつもいない。国王一人だ。いつも大臣として居るのはアーノルドの家系。

……あとは……決定的な証拠か」


「左様でございますね。共犯者や目的がまだ掴めておりません。王子達を守りながらでございますので、遅くなっております」


「守って遅くなる分にはまだ仕方がない。七代前国王の手記が見つかっていなかったら、私も神の御加護として受け入れていたのだろうしな……」



ノエルの死を聞き、受け入れられなかったあの時。


この部屋で第二王妃シルヴィアが取り乱して大暴れして大泣きしたあの時。

投げたクッションが棚に当たり、崩れ、

偶然か否か、一冊の古びた本が目に留まった。


七代前の国王エイノールが、幼少期から書き留めた日記だった。



『神ではない――“誰か”が国王を選んでいる。』



不思議と、ノエル以外はみんな生きている。

大怪我を負っているものの、生きている。

死んでいないのだ。


「なあ、ナコル。不思議だとは思わないか?ノエル以外皆、生きているんだよ。第一王子はもうじき十六になる。

父の話だと、十を過ぎたあたりからどんどん減っていったと聞く。

何か起きているのか?私は活動の制限しかしていない」


「何かが狂っているのかもしれないですね。明らかに焦っている様です。誰か…何か知っている人がいる、とか…?」


「まずは騎士団の調査を。

何か知っている者がいるかもしれない」


「承知致しました」

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