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東エリアで王子がまた襲撃を受けた事もあり、休暇開け早々に班を整える。
早朝、まだ空は薄暗く、寒さが残る宿舎前の広場に全員が集められた。
金糸であしらわれた王家の紋章が、朝日に照らされ輝く腕章。騎士たちは心なしか、清々しい表情で整列をしていた。
副団長のリンデンが声を張り上げる。
「いいか!これより厳選なる調査の元、編成し直す!!
名前を呼ばれた者は前へ!
一斑班長ライラ! 副班長ノア!
二班班長エルネ! 副班長カイラギ!
三班班長トーヴァ! 副班長ジルド!
四班班長マーカス! 副班長アリエ!
それから、春には一斑増える。
この中の誰かが班長、副班長になるから気を抜くなよ!」
次々と名前が呼ばれていく。
団長のアオトは拡声器を使っている。
「今後、新たにスカウトした人達も、これから徐々に入団する事になっている。
先輩として、腕章掲げて気合い入れていけよ!
もう……誰も死なないように!
特に一斑!ここはもう実力重視だ。最前線でやれる奴!
まだ今は全体的に人数が少ないが、第四騎士団は強くなる!楽しみにしておけ!」
「それと最後に!本部の修繕工事がそろそろ終わる。次はこっちだ。春には本部に戻るぞ」
ーー
「一斑の副班長になったよ。悪く無い位置だよね。班長は前と同じ人だし。」
ノアは電話で軽く報告をしていた。
「良かったじゃん。昇進おめでとー!!お城の事、今より調べやすくなるねぇ」
「ありがと。用事ができたら、城内にも行けるかもね。…ところで、ユキから連絡あった?」
「うん。兄ちゃんからは…ちょっと前に連絡あったの。大変だったみたいで。一人同期の人亡くなっちゃったんだって。でも、王子様は無事って。酷い怪我らしいけどね……。
それでね、兄ちゃんがローラン様の従者さんに気に入られちゃったみたいでさ。しょっちゅう来るって言ってたよ」
「あー…多分、王子直属の護衛に誘われてんだろうなぁ。いま警備固めてるらしいし。まぁどうせ断るんじゃない?」
「うん、断るの大変って言ってたよ…大人しく護衛だけ、は無理そうだもん」
そこへ、一階から母ユウカに声をかけられた。
「ハルー!手紙届いてるわよ!高等学校からと…あとは…誰からかしらこれ?何も書いて無いわ」
「あ、呼ばれちゃった。高等学校からだってー。分かってても怖いよね…」
「まぁさすがに大丈夫でしょ。じゃぁ俺も戻るわー。またね」
「うん、またね!色々頑張ってねー」
電話を切るや否や、
「はーい!すぐ行きまーす!」
階段を駆け下りた。
みんながリビングでコーヒータイムをしていたので……
「私もコーヒー飲むー」
「早く開けてー。さすがに合格してるでしょ。でも、こっちの宛名がないやつ。何?」
アキから封筒を受け取り、開封した。
「よかったぁー。合格だね。落ちてたらアリスに怒られるどころじゃ済まないもん。色々マズイわ。……春から高等学生かぁ。」
もう一つ。簡素な封筒。なんの印も無い。糊で留めてあるだけ。
「え……これって……」
読みながら、ハルは固まってしまった。
「ん?」
アキが手紙を取りテーブルに広げ、そこに書かれていたのは……
『拝啓
この度、第四騎士団では新たな人材を迎える運びとなりました。
つきましては、貴殿の力を我が団にて振るっていただきたく、入団をお願い申し上げます。
詳細は追ってお伝えいたしますので、翌週の二月二十四日、午後に神殿前宿舎・会議室までお越しください。
第四騎士団団長 アオト』
「へぇーーしかもちゃんと印まで入ってるじゃん」
「寒いのに、窓から覗いてたものねぇ…」
「……ハル。団長から直接だと拒否権はほぼ無い。頑張ってきなさい」
「ハルーーー?戻っておいでーーー??」
ハルは石像の様に固まったまま。
「よかったじゃない。高等学校は辞退の連絡しておくわね」
ーーこの日、ハルの人生に新たな道が突如出現した。
ひとまず一章を〆ることにしました。
次からは二章です。




