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深夜、家の裏の森で。
ハル、ノア、ヒスイが集まって、自分の武器に慣れる為に魔物狩りや戦闘ゴッコなんかをしています。
「おおおらぁぁぁぁ!!」
ガキィィィン
「ぐぐぐ………!!」
ジャシイィィン
ノアの一撃を、ヒスイがはじき返す。二人は模擬戦の真っ最中だ。
そこへ、岩に腰かけてぼんやり二人を眺めているハルが呟く。
「魔法でできた武器って、こんなにきれいなんだね。お父さんのも兄ちゃんのも、別に光らないからさ」
ガキィィィン
「土も風も…光らないからね……ぐぐぐぐ……」
ジャシィッ
「はぁはぁ…はぁ…雷とか眩しいん…だよ…」
「だよね。火と雷と光と…光源になるのってそのくらい?じゃあ、お互い武器見えにくいかんじ?」
ハルは頬杖をつきながら話している。
「ぉらぁぁぁぁ!!!」
ヒスイの胴体を切りかけた瞬間、パッと武器を消して回し蹴り。
ドガッ
「いって」
「はぁはぁ……いや…自分の武器で目眩しとか洒落んなんないからね。そこは、大丈夫だよ…」
ノアは水筒の水を一気に飲み干し、
地面に寝転がってるヒスイにも水筒を投げ渡した。
「はぁはぁ…俺は眩しいからだいぶ不利だな。
あー疲れた。明日仕事だからそろそろ戻るわ」
そう言って、手を振って別れた。
「ノア、私ともやろーーー!!」
ハルが元気よく手をあげるも…
「いや……危ないから魔物狩りにしよう…」
落ち着いた口調で言われてしまった。
「はいはーーい…
夜中の森へ、二人は入って行った。
一人だとちょっと怖い森も、二人なら安心。
ハルも雷を纏わせた鎌で、息を合わせて大きな魔物もバッサバッサと斬り進んで行く。
「やっぱり嬉しーー!自分の力だけでやれるんだもん。いっつもアキに頼りっきりじゃさ、なんか悪いじゃん?」
「悪くはないと思うけどね。でも、自分で、っていうのはやっぱりいいよね。
ちょっと自信ついたんじゃない?」
「うん!!だって、今までは……自信持てるとこなんもなかったもん…。もーちょっと早く武器創れるようになりたかったなぁー」
ふてってはいるものの、ハルの笑顔は眩しかった。
「諦めるの待ってたんじゃない?やっぱり女の子怪我したら辛いじゃん。それにさ、騎士ってやっぱり国を守る為なら死ぬよって奴だし…死んでほしくないんだよ」
「うん。でもノアも兄ちゃんも死んでほしくないからね」
「だから死なないように頑張るって感じ。黒幕見つけて倒すまでは死ねないし」
ノアはそっと笑った。
「倒してから死んじゃってもダメだからね?」
「はいはい。分かってますよー」
「私だって守れるからね!」
「はいはい、守られますよー」
ハルの頭にポンと軽く手を置くノアは、ちょっと嬉しそうだった。
大きな湖の辺り、岩に腰をかけてちょっと休憩。月や木々が水面に、鏡の様に映っているのが見える。
「私さ、この国って、神さまが国王さまを選ぶくらい凄いんだって思ってたのね。おとぎ話でもあるじゃん?」
「だよねー。普通は信じるよね」
「でもさ、実際は誰かが選んでるっぽい訳じゃん。今までも、死ななくていい王子様がいっぱいいたって事でしょ?それ思ったらさ…なんか実は凄く怖い国なのかなって思っちゃって。他の国でそんな話聞かないし…」
「そうだね。権力争いが起こるのは仕方ないとしても、次期国王以外皆殺しは、やり過ぎだよね。
もし俺が暗殺されてなかったら。きっと気づかないままだったかもしれない。気づいたときには手遅れだったかもね」
俯いて、寂しそうにノアは言った。
「今回全部食い止めて、もう止めさせようねっ!私も頑張るから!…ノアがもう泣かないようにね」
ノアの頭をポンポン、と手を置いた。
「……ありがと」
「帰ろっかぁ」
「そうだね」
二人は元来た道を、ゆっくり帰って行きました。




