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ひととま  作者: 珈琲
第一章
47/104

46

―ドゴンッ。

廊下に響く重い金属音。


近くに立っていた一人が、驚いたように振り返る。

ユキは踏み込み、そのまま一撃で仕留めた。


ドサッ。


「!?おい!どうした!」

「お前!……鎖を、どうやって――!?」

食事をしていた二人が剣を持って飛び出してきた。


二人目、接近してきた瞬間にユキが剣を振り下ろす。

三人目はその背後から剣を振り下ろしてきたが、咄嗟に右手で土の魔法。

魔法陣から直線上に岩の柱が造られ、壁ごと押し潰した。

声を上げる暇すら与えなかった。


これで三人。


テーブルの上にある、騎士達の所持品の山を漁る。

自分のスマホを見つけ、緊急キーを押した。


――近くに他の団員がいたら、気づくかもしれない。


側にある木の扉を開ければ、そんなに広さは無いがガランとした倉庫だった。


ユキが足を踏み入れた瞬間、さらに二人が飛び出してきた。


四人目、軽く剣を横に切り払う。

五人目はナイフを放ってきたが、岩を盾にして弾き、そのまま押し潰す。

六人目、背後から迫り、背中を蹴り倒した後、剣を突き刺す。


「あー……痛ってぇ。折れてるの忘れてた……」

ユキは右手首をなでながら顔をしかめつつも、周囲を確認した。

これで六人。


騒ぎを聞きつけて斬りかかってきた四人も、ユキは魔法で押し潰し、地面を隆起させ、その隙に剣を振るう。

ユキは反撃する暇も与えず、淡々と制圧していく。


「もう終わったかな?」

あとはリーダーみたいなのと依頼人みたいな…


別の通路、背後から怒声が響く。

「おい!!お前何をしている!」


「……大人しく殺されたくないからさ」

静かに質問に答えた。

血に塗れ、剣を持つ姿はまるで殺人鬼の様。

側からみればどっちが悪役かわからない。



リーダー格の男は、焦りと恐怖で後退る。

「鎖壊せるとか聞いてねぇぞ!下っ端じゃねぇのかよ!どうなってんだ!テメェ!話がちげえよ!!」

依頼人に向かって、大声で喚き散らした。

ユキは表情を変えず、正面から素早く踏み込んだ。


「チッ……浅いか。力が入らなくなってきたし」

リーダーが血を吐き倒れ込むのをひとまず放置し、逃げる依頼人を追った。


連絡用か何かか、黒い機材に手を伸ばしていた。


一気に距離を詰め、腕ごと機材を貫き破壊する。

「させねぇよ」

ユキが冷めた声で言った。


次の瞬間、依頼人の手元が赤く光る。


!!


ユキが後方へ飛び退いた直後、爆炎が弾けた。

火の魔法だ。

巻き込まれたら終わる。危ない。


「チッ…」

手も足も痺れるように痛い。喉も乾いた。

でもそんなのは今は我慢。構っていられない。

スピード勝負だから。


床を蹴り一気に詰め寄る。

相手を壁へ押し、叩きつけるように剣を突き立てた。


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