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―ドゴンッ。
廊下に響く重い金属音。
近くに立っていた一人が、驚いたように振り返る。
ユキは踏み込み、そのまま一撃で仕留めた。
ドサッ。
「!?おい!どうした!」
「お前!……鎖を、どうやって――!?」
食事をしていた二人が剣を持って飛び出してきた。
二人目、接近してきた瞬間にユキが剣を振り下ろす。
三人目はその背後から剣を振り下ろしてきたが、咄嗟に右手で土の魔法。
魔法陣から直線上に岩の柱が造られ、壁ごと押し潰した。
声を上げる暇すら与えなかった。
これで三人。
テーブルの上にある、騎士達の所持品の山を漁る。
自分のスマホを見つけ、緊急キーを押した。
――近くに他の団員がいたら、気づくかもしれない。
側にある木の扉を開ければ、そんなに広さは無いがガランとした倉庫だった。
ユキが足を踏み入れた瞬間、さらに二人が飛び出してきた。
四人目、軽く剣を横に切り払う。
五人目はナイフを放ってきたが、岩を盾にして弾き、そのまま押し潰す。
六人目、背後から迫り、背中を蹴り倒した後、剣を突き刺す。
「あー……痛ってぇ。折れてるの忘れてた……」
ユキは右手首をなでながら顔をしかめつつも、周囲を確認した。
これで六人。
騒ぎを聞きつけて斬りかかってきた四人も、ユキは魔法で押し潰し、地面を隆起させ、その隙に剣を振るう。
ユキは反撃する暇も与えず、淡々と制圧していく。
「もう終わったかな?」
あとはリーダーみたいなのと依頼人みたいな…
別の通路、背後から怒声が響く。
「おい!!お前何をしている!」
「……大人しく殺されたくないからさ」
静かに質問に答えた。
血に塗れ、剣を持つ姿はまるで殺人鬼の様。
側からみればどっちが悪役かわからない。
リーダー格の男は、焦りと恐怖で後退る。
「鎖壊せるとか聞いてねぇぞ!下っ端じゃねぇのかよ!どうなってんだ!テメェ!話がちげえよ!!」
依頼人に向かって、大声で喚き散らした。
ユキは表情を変えず、正面から素早く踏み込んだ。
「チッ……浅いか。力が入らなくなってきたし」
リーダーが血を吐き倒れ込むのをひとまず放置し、逃げる依頼人を追った。
連絡用か何かか、黒い機材に手を伸ばしていた。
一気に距離を詰め、腕ごと機材を貫き破壊する。
「させねぇよ」
ユキが冷めた声で言った。
次の瞬間、依頼人の手元が赤く光る。
!!
ユキが後方へ飛び退いた直後、爆炎が弾けた。
火の魔法だ。
巻き込まれたら終わる。危ない。
「チッ…」
手も足も痺れるように痛い。喉も乾いた。
でもそんなのは今は我慢。構っていられない。
スピード勝負だから。
床を蹴り一気に詰め寄る。
相手を壁へ押し、叩きつけるように剣を突き立てた。




