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ひととま  作者: 珈琲
第一章
45/105

44

……ザザーー…ザザーーーン…


遠くで波の音が聞こえる。


「……ユキ……起きろ…」

誰かが小声で呼びかける。


「んーー……」


薄暗い部屋の中、ユキは目を覚ました。


「んぁっ!?……ここは??」

声は出せても、体が思うように動かない。


周囲から小声が漏れる。

「しーー……」


「馬車ごと誘拐って……」

「俺らを庇ったローラン様は別室に連れて行かれたよ……」

「頼む……ローラン様…」

「さすがにヤバいって……護衛丸ごとだ。

俺ら戻ったら死刑かな…」

「あっち、街の人かな…子供がいるんだよね……」

ボソボソと、仲間の小声が聞こえてくる。



皆の手は後ろで縛られ、足には雑に鎖が巻きつけられていた。

動けば肌に、鎖が食い込んでくる。


「……だから感覚無いのか…」

ユキは自分の足元を見れば、靴の隙間から血がこびりついていた。

手首の痛みも酷く、感覚があんまり無い。

アキに連絡できたらいいけど…やっぱ無理だよなぁ…。


「まだ小さな子供だもんなぁ……そりゃぁ怖いだろに……」

近くで子供が寝ている。

二人は、六歳や十歳くらいだろうか。なんだか昔の記憶と重なり、目が離せない。



「沈黙の札がついているから……魔法は使えない。ローラン様を助けつつ、どうやって脱出したら……」

「私が囮にでもなれたら良いのだが……」

先輩とストロフがぶつぶつと、つぶやく。



部屋は薄暗く、転移魔法の痕跡が床にある。

光が入る窓もなく、締め切られた冷たい石の床と壁。わずかに潮の匂いがした。



この部屋には見張りはいなかった。

遠くから、何かを引き摺りながら、誰かが近づいてくる足音が聞こえる。


コツ…コツ……コツ…コツ………ズル…ズル……



ーーー嫌な予感しかしない。


ガチャ。ギィィィィ……


鉄の扉が重く開いた。

真っ黒なフードを被った五人。うち、四人が入ってきた。

一人は入らず、黙ったまま見ている。



「起きたか。明日朝には迎えが来る。

ずっと寝ててくれても良かったが……コイツが偉そうにしやがるからちょっと教えといてやったよ。」

デカい男が、ニヤけた顔をしている。


バサッと、ユキのすぐ目の前。

床に投げ捨てられたのは、第三王子のローランだった。

下の方には雑に巻かれた布。

暗い染みが広がっている。


顔色は白く、歯を喰い縛りながら喉の奥から僅かに声を上げている。

このままでは、朝までもたないかもしれない。


「ローラン…様…」

何も出来ず、周りは声をかけるだけ。

「……ローラン様!」

先輩の声が、少し大きく出てしまった。

すぐに男が足の鎖を踏みつける。


「いっっ……!!」


「声デカい。ヒョロ男の癖に団員に罪はないーとか、自分は残るから他は逃がせー、とか英雄気取りでさぁ。

どうする?お荷物な王子サマ見捨てて逃げとく?このドア開けておいてあげようか?」

ニヤニヤしている歪んだ口元が見える。


「ほらよ」

一人が、布に包まった何かを放り投げた。

ゴトッ…と鈍い音が響く。

床に色が付いた。


「王子サマも大変だよね。もう逃げれなくて。

知ってる?王子売買は昔っから選ばれた人だけしか出来ないからみんなの憧れなんだよ」



「おいおい、あまり喋るなよ…」

「はぁーい」

静かに注意した男は、リーダーのようだ。

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