41
王城の会議室に、各騎士団の団長たちが急遽集められた。
「今回の事件は国としても重く見ている。深夜、明確に第四王子、イチハが襲撃されたことは看過できない」
国王は静かに告げた。
「イチハ様のご無事は何よりでございます。しかし、第四騎士団におかれましては、王子を守りきれなかったという事実。
今後もこのような事が繰り返されれば、国の威信は地に堕ちましょう。
ゆえに、第四騎士団の人事、戦力配分は一度徹底的に見直すべきでありましょう。団長、副団長とて例外ではない」
左大臣のアーノルドも続ける。
「今回の件では特に第四騎士団を責めれる者はいないでしょう。予想し得ない事態でございました。
実際、イチハ様が襲われた際は第四騎士団は関与しておりません。
北の国民は不安も大きくなっておりますが、ただ、第四騎士団は今回の任務で国民には犠牲を出さず、正しい行動しました。第四騎士団の団員には感謝状と腕章あたりで士気を上げるのが良いかと…」
右大臣のナコルが割って入る。
「……そうだな。ナコル、手配しておけ。
魔族や他国の関与も否定できない。国内外も調査を続け、騎士団の強化も必要だ。予算を増やせ。ノエルの様な事態は避けたい」
団長たちは頷きながら聞いていた。
「そういえば……深夜の襲撃では、ルカ様は一切狙われず、無傷でございましたな。
此度の件、初めからイチハ様を狙ったようにも見えます……」
アーノルドは、わざとらしく言葉を切った。
「何が言いたい?」
国王が、眉間に皺を寄せ、静かに言った。
「大変申し上げ難いことでございますが……今一度、ルカ様の周辺を徹底的に調査する必要がありましょう。
ノエル様とイチハ様の折り合いが悪かったのは皆の知るところでございました。ルカ様はノエル様の実弟でございますゆえ。
しばらくは外出も交友もお控えいただくのが、国のため、陛下のためかと存じます」
目を瞑り、腕組みをする国王。
(やっぱりそうなるよなぁ…)
アオトも目を瞑り、悩む。
「……分かった。しばらくはルカをこちらへ。様子を見よう……」
微かにため息が漏れた。
「これを機に、国内の警備体制を見直す。新たな脅威があれば、即座に対応すること。いいな」
国王の言葉に、全員が深く頷いた。
こうして王城では、騎士団の今後と国の安全について、夜まで静かに会議が進められた。
ーーー
「あーー終わった……」
伸びをして疲れた顔のアオト。
「お疲れさん。大変だったみたいだなぁ。大丈夫かい?」
第一騎士団団長のリオに後ろから声をかけられた。
「あぁ……死ぬかと思ったよ。1カ月くらい有給取りたいくらいだね。今日も深夜に叩き起こされてから寝てないし」
「それはそれは…久しぶりなんだし飯でも行かない?」
「悪ぃ、仕事がやってもやっても終わらないんだわ。また今度誘って。メンタルが戻ったら」
顔が死んでる。
「ちょっとくらい付き合ってくれてもいいじゃない。副団長は現場なんでしょう?」
第三騎士団団長、ルシアンである。
「あー。悪いね。疲れてるからほっといてくんない?要請だしてから時間かかりすぎだしゴミ掃除しか役に立ってないんだけど」
真顔で応える。明らかに嫌そうだ。
「せっかく派遣してあげたのに失礼ね」
腕組みしながら片頬を膨らませる。
「こっちは生死を分ける状況だったから。近いから要請してんだし、間に合わなければ意味ない。状況舐めてたんだろ」
「仕方ないじゃない。市街戦なんて200年以上西エリアでは無いのよ。市街地に来る前に処理して終わり。状況も分からないから準備なんてすぐ出来ないわよ」
「今後しばらくは激化するかもな。ウチみたいになんないように気をつけておけば?じゃぁね」
手をひらひらとさせ、アオトは駅の方へ向かった。
「感じ悪いわね。まったく。団長のくせに電車とか…」
「今の状況じゃあ仕方ないさ。一人時間も欲しいんだろうし。それに前、所持品丸ごと黒焦げにしたのまだ根に持ってるしなぁ」
「えーー。ちゃんと謝ったわよー。それに鞄あったら終電前に帰っちゃうじゃない!飲めないわ!」
「そういうとこじゃん?」




