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ノアは大きく息を吸い込み深呼吸。
さすがに緊張している。
一呼吸置いて、
「じゃ、いきまーす!」
手のひらに乗せた魔石に、そっと魔力を通した瞬間。
ノアの手から「パチッパチッ」と電気花火の様な小さな光が散り始めた。
「お。すごい!」
毛先がふわりと浮き、周囲の空気までもピリピリと痺れさせる。
「おお。なんか手がピリピリくるね」
ちょっとくすぐったい感触に、思わず笑ってしまう。
ーーーバリバリバリッ!!ドォォーーン!
次の瞬間、一筋の雷がノアの目の前に落ち、
煙を上げながら放電する大剣が、地面に突き刺さっている。
ノアは反射的に右手を引っ込めていた。
「あっぶね……」
「こっわ……」
ハルとヒスイはちょっと後ずさった。
「まぁ、でかいから手に収まらなかったんだろうな」
冷静なお父さん。
地面から大剣を引き抜き、構えてみせる。
「わ……すごいな。軽い。持ちやすい!」
そう言って、少し離れた場所でブンブン振り回す。
「あとは魔石無しで、同じ要領でやればいいよ。生成させる座標意識するくらいだな」
「うん、わかった」
2回目以降もすんなりと生成しているノア。
さすがですね。
「ハル、お先どうぞ」
ヒスイさんに促された。
「う、うん…」
一旦深呼吸し、お父さんから魔石を受け取る。
今は震えていない。
待ちに待ったよ、この時を。
多属性の魔法が使えるから。たくさん悩んで。
一つの属性に縛られた武器は嫌。属性の切り替えなら器用にできる。
「いっきまーす!」
右手の魔石にただの魔力だけを通した。
ぼんやり光る魔石が、強く光った。
ーーーザクッ。
スマートで細長い柄、先端に向けて緩やかにカーブする刃が地面に突き刺さる。
「出来たぁ!!」
引っこ抜き、柄の部分を抱きしめ俯く。
「……あぁ……最高……!夢にまでみた私専用…うふ……うふふふ………」
ニヤニヤが止まらない。
自分の背丈よりも高い、2mくらいはあろうその武器は、鎌。
本来なら外側の峰は切れない部分のはずなのに、鋭い刃になっている。殺傷力は抜群だ!
「え?鎌…?」
「鎌……」
アキとノアが思わず声を出した。
恐らく草を刈る農具の方ではなく、死神が持つアレをイメージしたのであろう。
今、ハルが抱きしめているのは、刃が両側にある戦闘用の大きな鎌だった。




