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ひととま  作者: 珈琲
第一章
39/104

38

ノアは大きく息を吸い込み深呼吸。

さすがに緊張している。

一呼吸置いて、


「じゃ、いきまーす!」


手のひらに乗せた魔石に、そっと魔力を通した瞬間。


ノアの手から「パチッパチッ」と電気花火の様な小さな光が散り始めた。

「お。すごい!」

毛先がふわりと浮き、周囲の空気までもピリピリと痺れさせる。


「おお。なんか手がピリピリくるね」

ちょっとくすぐったい感触に、思わず笑ってしまう。


ーーーバリバリバリッ!!ドォォーーン!


次の瞬間、一筋の雷がノアの目の前に落ち、

煙を上げながら放電する大剣が、地面に突き刺さっている。


ノアは反射的に右手を引っ込めていた。

「あっぶね……」


「こっわ……」

ハルとヒスイはちょっと後ずさった。


「まぁ、でかいから手に収まらなかったんだろうな」

冷静なお父さん。


地面から大剣を引き抜き、構えてみせる。

「わ……すごいな。軽い。持ちやすい!」

そう言って、少し離れた場所でブンブン振り回す。


「あとは魔石無しで、同じ要領でやればいいよ。生成させる座標意識するくらいだな」

「うん、わかった」


2回目以降もすんなりと生成しているノア。

さすがですね。




「ハル、お先どうぞ」

ヒスイさんに促された。


「う、うん…」

一旦深呼吸し、お父さんから魔石を受け取る。

今は震えていない。


待ちに待ったよ、この時を。

多属性の魔法が使えるから。たくさん悩んで。

一つの属性に縛られた武器は嫌。属性の切り替えなら器用にできる。

「いっきまーす!」


右手の魔石にただの魔力だけを通した。


ぼんやり光る魔石が、強く光った。


ーーーザクッ。


スマートで細長い柄、先端に向けて緩やかにカーブする刃が地面に突き刺さる。


「出来たぁ!!」

引っこ抜き、柄の部分を抱きしめ俯く。

「……あぁ……最高……!夢にまでみた私専用…うふ……うふふふ………」

ニヤニヤが止まらない。


自分の背丈よりも高い、2mくらいはあろうその武器は、鎌。

本来なら外側の峰は切れない部分のはずなのに、鋭い刃になっている。殺傷力は抜群だ!


「え?鎌…?」

「鎌……」

アキとノアが思わず声を出した。


恐らく草を刈る農具の方ではなく、死神が持つアレをイメージしたのであろう。

今、ハルが抱きしめているのは、刃が両側にある戦闘用の大きな鎌だった。

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