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ひととま  作者: 珈琲
第一章
38/105

37

今日は星が綺麗で、三日月が浮かんでいる。雪は降っていない。


家の中庭に、みんなで集まった。


「じゃあ、始めようか」

お父さんは静かに言う。


アキは補助係。万が一の怪我に備えての参加だ。


ハル、ノア、ヒスイの3人はお父さんの前に立つ。



「そんな畏まったものでもないけどな。家に古くから伝わるやり方だ。

原則、家族、血筋以外には教えない。あくまで親が教えるんだ」


技術を教えたら「もう用無し」と言わんばかりに殺される事が絶えなかったから、家族継承が主流になったんだって。


純粋な魔族の家系でも、途絶えることが多くて出来る人ももうだいぶ少ないらしい。


「どんな形、大きさ、装飾か。色や重さ、全部イメージして、脳裏に焼き付けること。一度生成したら、ニ回目以降は“完全一致“じゃ無と生成出来ない。忘れたら最後。もう出来ないからな。

なるべくシンプルな方がいいぞ。盛りすぎると細部まで思い出せなくなる。大きすぎてもその分魔力を使う。なるべく低燃費、瀕死でも創れるくらいの方がいい。」


「低燃費!!」

ハルは反応した。


「父さんの兄貴は、一度創れたっきり二度と作り創り出せなかったからな」


「怖っ……。でも兄ちゃんもアキも普通に出来てるよね」

せっかくの武器なのに一度きりだったら嫌すぎる。


「まぁね!忘れなきゃいいだけだからね」

アキは余裕の笑みを浮かべた。


「イメージが固まったら、あとはこの魔石に魔力を込めたら勝手に出来上がる。二回目以降は魔石を使わなくとも意識すれば形になる。少しの魔法を媒介に武器を生成すればいいんだ」


「なるほどなぁ……そう言われると緊張するな」

ヒスイは腕を組み、考え込む。


「まぁ、俺らはいつもの感じでいいんじゃない?

問題はハルだよ」

ノアがちらりと視線を送る。


「ハル、落ち着いてイメージしてね。手足震えてるよ?」

ちょっと心配そうに覗き込むアキ。


「あ、ごめん。感動を噛み締めてて震えてた!もうイメージはしっかりできてるから大丈夫だよ!」

ずっとこの時を待ってたんだから。忘れる訳ないじゃん!


「魔石は一つしかないから、順番に。なるべく、柄が手元に来るようにイメージを。失敗して腕を切り落とされる事故があるからな」


「……だからアキが控えてるんだ」

ノアが小さくつぶやく。


「優しくしてあげるよ?」

にっこりと笑って、しかし目だけ笑っていないアキ。


「!!」

ノアはビクッとした。


(サイコパスなんて言うから……)

(サイコパス呼ばわりされたの、気にしてるな……)

ハルとヒスイは同時にため息をつき、ちょっと呆れた。


「で、誰からいく?ハル…か?」

お父さんは話を知らないから冷静だった。



「い、いや…ちょっとみんなの見学してからがいいかなぁってー」

やる気だったのに、突然引っ込んだ。


「……じゃあ、俺から」

ノアが迷いなく手を上げた。


受け取った魔石はとても軽かった。角が取れ、丸みのある銀色の魔石。中央には何か魔法陣みたいなものが描かれていた。


3人はまじまじと石を覗き込み、息を呑む。


月の光が当たってとても綺麗に輝いている。


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