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部屋に戻り、ハルはベッドで枕を抱きしめる。
「どうしよう。興奮してきた!!」
憧れがついに!!
ニヤニヤが止まらない。
飛び跳ねたい!!!
「あんまり興奮するとベッドから落ちるよ」
テーブルで頬杖をつきながら、呆れている。
「そうだけどさぁー。やっぱり…ねぇ?やっとだよ?長かったわぁーー。」
興奮冷めやらぬといったかんじだ。
「でもこれでハルが武器持ったら、攻撃魔法と武器と両方使えてちょっとズルいかなー」
「アキ、攻撃魔法無いもんね。でもアキの回復魔法って結構攻撃的じゃん?」
「そこはワザとだし。治療放棄は最大の攻撃かもだけど。そこまで鬼じゃないしさ」
「殲滅対象が身内になっちゃうもんね…」
こわいこわい。
「ハルが大怪我したら、めっちゃ痛い魔法にするからね。覚悟しといてよ」
「えー…それはナシ」
二人で話していると、ドアをノックされた。
コンコン。
「「ん??」」
ドア越しに
「ノア起きたんだけどさ、なんかする事ある?」
ヒスイさんの声だ。
「あ、今行くから水でも飲ませといてー」
「あ、よかった。起きたんだー!」
二人は立ち上がった。
ーーー
「おはよ。気分はどうかな?」
アキが白衣を着て診察している。
なんか悪役のセリフみたいに聞こえるのは気のせい?
「…だる重」
ぼんやり呟く。
「多分それ寝過ぎ。丸2日くらい寝てたし。水飲んだ方がいいよ」
ノアはヒスイが用意していたグラスを手に取り一気に飲み干した。
「…ゴクゴク……はぁぁぁ生き返る…」
「ノアの怪我治すの時間かかったんだよね。すごい集中してたくさん魔力使ったんだよ。とても大変だったんだよ」
言い方に圧を感じたノアは(湯水の如く魔力が湧き出る癖に)と思いつつも、自分の腰を触って確かめる。
「……痛く無い。アリガトウ…」
アキはニコッとした。
ノアはゾクッとした。
「なんか雰囲気怖いくない?大丈夫?アキってノアにいつもそんな感じだったの…?」
ちょっとブルっとしちゃった。
「ふ…そうなんだよ。助けて…」
ちょっと乾いた笑いをしている。
「いいでしょ。ハルが甘やかし担当してくれてるんだから」
腕組みして椅子の背もたれに寄りかかる。
「双子なんだから上手く分けあってよねー」
ノアは追加注文をつける。
「月替わり制……とか…??」
ハルがぼそっと呟く。
「んーー……案外悪……ぶっっ!!」
ヒスイがノアの顔面にクッションを投げつけた。
「お前さぁ………」
(あ、怒った)
(怒った)
(怒られた…)




