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ひととま  作者: 珈琲
第一章
33/105

32

北エリアを管轄する第四騎士団が機能不全に陥ってから、早くも三日が経った。


団員は1週間ほど慶弔休暇を取らせ、まだ陽が昇る前、静かな宿舎で団長・副団長は事務仕事に追われていた。

特例でFAXでも受理してくれている。


街の警備、清掃、神殿の警備諸々は援助に来た他の団に丸投げした。


三班の班長が入室してきた。

「街の皆さんが、たくさんエナドリ差し入れてくれたんでここ置いておきますね」

ダンボールにいっぱいだ!


「え、なに死ねってこと?」

「え、仮眠も許さないってこと?」


団長と副団長の声が重なる。


「いや……あと2時間後に追悼あるから……ですかね?」

班長は言葉に詰まった。


ーー



王子達の学習の場、北の神殿。

今回の戦場となった宿舎の裏手から山の方へ登ると、大きな岩が剥き出しになっている洞窟がある。


地下へと続く長い長い階段を降りると、そこには建国当初より神聖な場所として、国が管理してきた巨大な鍾乳洞が広がっている。


その奥にある“聖星の祭壇”は、由緒ある場所だ。

幾百年もの歴史の中で、数えきれない祈りが捧げられ、今もなお神聖な空気に包まれている。


灯をひとつともせば、全ての石がきらめき、まるで夜空の星のように輝く。


亡くなった団員たちは火葬され、小さな骨となり丁寧に集められた。

誰のものかは判別できなくとも、遺族たちはそれぞれ“一番綺麗だと思う場所“に骨を納め、静かに祈りを捧げていく。


早朝、国王も追悼に訪れた。

“聖星の祭壇”の前には、国王と王妃、各団の団長たちが並び、静かに冥福を祈った。

そして国王が、静かに追悼の言葉を述べる。


祭壇の両脇に置かれた灯が揺らめくたび、鍾乳洞全体がさらに神秘的に輝く。

団長が、亡くなった団員の名を一人ひとり読み上げるたび、洞窟内に静かな啜り泣きが響く。


団長と副団長、各班長たちは頭を下げ続けた。

団長は自分の力不足と言うが、責める者は誰もいなかった。

団員は失われたものの、一般国民には怪我人すら出なかったのだから。



この国――アマツシアは、山々に囲まれ隣国との関係も良好。

戦争など何百年も起こっておらず、国全体の魔力が高いため魔物が他国より強いくらいで、経済は安定している。


騎士の務めは国・民を守ること。これほどの大惨事は滅多に起きない。

身近な人々に被害が及ばなかったため、国民の多くにとっては「興味はあるが実感はない」

どこか遠い国の出来事のように受け止められていた。


国民のほとんどは危機感を抱いていない。


前例の無い厄災にも関わらず、団長と副団長は指揮を取り、自らの危険を顧みることなく仲間を庇いながら陽が昇るまで戦い続けた。

その姿は国民から英雄として讃えられ、団員たちからは絶大な信頼を集めることとなった。


生き残った団員たちは、貴重な戦力として国王からもその価値を深く認められていた。



ーーー


「やっと…やっと終わった…」


正装のまま、着替えも忘れてソファに寝転ぶ。

副団長は会議室まであと少しの所で行き倒れた。


実家が遠いので、宿舎以外に行くアテがない二人。

帰れない団員は近場のホテルに滞在している為満員。


そういえば、落ち着いたら連絡しろって兄からメールきてたなぁ。と思い出す。


「あ、もしもし兄さん?とりあえず終わったんだけど…」


「おーお疲れさん。迎えに行くよ。行くアテ無いだろ?」


まじ神…

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