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ひととま  作者: 珈琲
第一章
31/104

30

外は牡丹雪に変わり、血生臭さが掻き消された代わりに冷え込みが強くなってきた。


起き上がれないノアを肩に担いだヒスイ。

「大丈夫か?」

「そこ傷が……」

「ちょっと辛抱してくれ」


「よかったら、みなさんもどうですか? 傷の手当てくらいならできますよ」

と、先輩2人とグリムも一緒に出発した。

花の仕入れにも使う車なので、4人ぐらいなら余裕だ。


「あ、もしもし? エリックさん? ちょっと4人運ぶわ……ん? あぁ、もうしばらくは無理だろうね……1時間くらいで着けるといいけど。通行止めもあるから、渋滞が…」

運転中なので、ハンズフリー通話だ。


ーー


「あ、来たよー!」

窓から見ていたハルが両親に伝える。


車からグリム達3人が降りてくる。

「すみません。よろしくお願いします」


家に到着してすぐ、客室へ案内するお母さん。


ヒスイさんに担がれてノアも出てきた。

「………」

とりあえずノア以外はみんな大丈夫そう。



3人を水魔法でスッキリ綺麗にしたら部屋を出て、次はノアのところへ。

お父さんの薬草茶を飲んですぐ寝ちゃったって。




電車が止まってるって連絡があったお父さんは、アキを迎えに家を出た。



ーー


ぼんやりとした意識の中。


ふ、と我に返ってきた。

「あの……さすがに着替え手伝ってもらうの……恥ずかしいんだけど……」


「文句言うなよ。俺、片手しか無いんだし」


ヒスイが風魔法で浮かせてくれている間に、ハルの水魔法で汚れを落として寝巻きに袖を通す。


「……」


「あはは、見ないから大丈夫だよー」

ハルが苦笑いしてる。



怪我してたって恥じらいくらいはある。



「……あの薬、使う…………?」


「…んんーーー、まぁ……。感染症とか危ないじゃん?ほんとごめんだけど」



「うわーうわーうわー……逃げたい…」



アキお手製の回復薬は、爆速で無理やり細胞を活性化させて修復するので超痛い。皮膚の下をぐにょぐにょとミミズみたいな“何か“が動き回り治していく。見てる側も非常に気色悪い。

あまりのヤバさに怪我が極端に減った。私も絶対に嫌。

でも皮膚を突き破るような骨折だって数時間あれば完璧に治してくれるし、傷痕も残らない。……それでも私は入院の方がいい。


アキはもちろん、両親も絶対使わない。


…あれ?私たちだけ??いや、私ももう使わないから兄ちゃんとノアだけ?


動けないから、とても塗りやすかった。



「やば…じわじわきてる……」


声が震え始めたので泣きそう。

よしよし、と頭を撫でる。


熱もあるので氷嚢も乗せとく。


「ハル、面倒だろうから下がってていいよ。あとは俺が見とくから」


「……」


「時々様子見にくるね」


「ああ、助かるよ」





リビングで食事していたら、声にならない叫び声が聞こえてきた。


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