表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひととま  作者: 珈琲
第一章
3/106

2

少し遡り夕方。

ハル達が森へ入る少し前のこと。



山の中腹にある住居エリアに向かう途中、二人が乗った馬車が襲われ、崖下へ突き落とされた。



青年は急いで風魔法を使い、同乗していた少年と自分を包んでわずかに浮かせ、衝撃を和らげた。

だが、馬車内から脱出するまでには至らず、そのまま地面に衝突。

馬車の破片が全身に降りそそぎながらも、なんとか一命を取り留めた。


「おい、無事か?…なんとか助かったな」

「まったく…さすがにこれはやりすぎだろ…三十メートルはあるじゃん」


崖上を見上げながら呆れる少年。

目の前には原型を留めない馬と御者と馬車。

自分たちは傷だらけ。


騒ぎと血の匂いに誘われ、魔物達が徐々に集まってくる。



「救助が来るのか来ねぇのか、どこまで持つかねぇ?」

青年は剣を構える。


「救助が来たら殺されるだけだろ。ムカつくけど逃げないと」


「俺が惹きつけておくからお前はさっさと逃げろ。死んだら意味ねぇから」


「それはお前も同じだよ」


長い髪を一つにまとめた少年は、そばに落ちていた大剣を手に取り構える。

「ヒスイ、いくぞ!」


そう叫ぶと魔物に斬りかかっていった。


ーーー



魔物に取り囲まれながらも、必死に護符で結界を張り、守りに徹するヒスイ。


「クソ、ここまでか…」

属性が合ってない札は弱ぇなぁ。

まぁ背後が岩肌で後ろからは来ねぇけど…あいつ抱えて逃げれねぇしなぁ。


そう思いながら、横目で大怪我を負った少年を見た。


元馬車の近くでしゃがみ込み動けなくなっている。

「臣下を庇う奴があるか。バカかよ…」


「だって仕方ないじゃん。お前がよそ見なんかしてるから。

俺一人じゃ生きてけないしー」


二人の体力も限界に近くなり、ぼろぼろの結界内に入り込んできた魔物。


ヒスイに向けて鋭い爪が襲いかかり、腕を斬り飛ばされた。



ーーー


アキの光で照らされた先、少し開けた場所にバラバラになった何かの残骸があった。車輪があるから乗り物かな?

「あれは……?なんだ??」



青年の顔を見た途端、父は青ざめた表情を浮かべ、魔物に斧を振り下ろす。

「あー…まじなやつー…」

アキは頭を抱えた。


三人とも父を追い、駆け出した。


「いま助ける!ユキは俺と。アキとハルは救護と支援を!」


斧を振り回し、巨大な魔物を次々と両断していく父。


ユキも勢いよく踏み込み、自身より何倍も大きな魔物を斬り刻んでいく。


「なかなか大物じゃん」

ユキは楽しそうに言った。


二人が魔物を蹴散らし、ハルとアキが通れるよう一直線に結界までの道を作っていった。





「大丈夫ですか!?なんでこんな所に…」

アキは青年のもとに駆け寄り、治療を始めようとしたが…。

「腕の出血が酷いから…もう使えないかも…」



「まぁいいさ……。申し訳ないが、そっちの馬車の側にいる方から頼むよ」

と声をかけられた。


「これ馬車だったの??」

馬車の方を見ると…


ぐったりと、銀髪?の少年?がしゃがみ込んでいた。

胸元からはぼたぼたと血が流れており、腕は不自然な角度に曲がっていた。



側には大きな剣と真っ黒な短刀が落ちている。



僕と同じくらいの子かな…てゆーか大丈夫かなこれ……。

アキはちょっと不安になりながら、近づいた。


「ちょっとごめんね」

急いで光の魔法を展開し、傷を治してゆく。



ハルは魔石を右手に握りしめ、左手を地面に当てた。

火の魔法を広範囲に展開し、みんなの力が強くなるように魔法をかけた。

続いて、土の魔法で結界を張り直す。

さらに汚れを洗い流すために、水の魔法で大量の水を創り出す。

アキが瓶に詰めて魔力を込め、即席の回復薬をつくった。


飲ませたり傷口にかけて消毒。少年の腕の角度を直し、回復魔法をかける。


頭から回復薬をじゃぶじゃぶかける。

かなり雑だが、一番効率がいいらしい。


すぐに傷は癒えていくが、彼の意識はまだ薄っすら程度だった。


ハルはぼんやり眺めながら、魔法を使うアキの手元を見つめていた。



魔法ってほんと、綺麗だよねぇ…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ