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ひととま  作者: 珈琲
第一章
28/104

27

ここ最近の事件ですっかり忘れていたが、第四王子イチハは怖がり、自室に引き籠もっているらしい。

側近が何度も様子を伺うも、無視を決め込んでいるとの事。


ここを突破されれば王子達の居住区まで一直線に行けてしまう。

団長は死守する為、宿舎前の広場でベテラン達と共に待機していた。


一方で副団長は、現在危険とされる市街地へ行った。

まだ明かりがついている民家へは、

「外出をしないように」

と声をかけながら捜索していく。


火事にならぬ程度に火を放ち、灯りを増やしてゆく。




その時ーーー


ザッ……。


建物の影から、勢いよく斬りかかる影。

騎士の剣を持っていた。


紙一重で後ろへ飛び退き、胸の辺りをかすられる。


「勝手にウチんとこの剣、使わないでくれる?」

剣に炎を纏わせ、構えた。


副団長のジャケットには血が染み出し、ベッタリと張り付く感覚。

痛みがあるとはいえ、気に留める暇は無かった。


「誰の指示……って、頭ねぇから無理か。

そっちは神殿の方だからな。探す手間が省けたぜ」



灯りに照らされたその姿は、昼間の話に聞いていたグランニールとはだいぶ違っていた。

頭部はなく、白衣は茶と真っ赤な血でべっとりと染まっている。

かつての頭がそのまま一つ目となり、腹部の深い裂け目に収まった怪物へと変貌していた。



すぐさま後ろの団員が信号光を打ち上げる。


ーー


ノアはグリムと同じ組。あとはニ年目とか三年目とかの先輩二人。あんまり覚えていなかった。


今は神殿も商店街も見下ろせる東側の高台で待機している。

ここは街でも有名なデートスポットなので、数組のカップルが居た。

「邪魔して悪いけど、ここに留まっているように」

と、先輩は注意を促していく。



「あーあ。二班がほぼ壊滅状態らしいじゃん」

「東エリアの第三騎士団に要請したみたいだけど、いつ来るんだかな……」

「はぁ……第三ってあんま好きじゃないんだよなぁ」

「絶対マウント取ってくるよな」

「団長同士仲悪いもんなぁ……」


先輩達が愚痴をこぼす横で、グリムは小さな望遠鏡を覗いていた。


「今のところ動きは無さそうだよ。……音も無く、背後から突然斬られるんだってさぁ」


「えーなにそれ、やだ…」


「俺らまだ一年目なのにね。最近ハード過ぎて頭追いつかないんだけど……。あ、ノアも見る?」

グリムが望遠鏡を渡そうとした。


「んー……いいや。俺、片目瞑れないからピント合わせるの苦手なんだよね。

でもほんと、最近なんか急に動き出してる感じするよね。困ったことでも起きてるのかなぁ…?」

とぼけながらノアは言う。


その時だった。

神殿と商店街の中間あたり、高台からは西側の上空に強烈な白い信号光が打ち上げられた。


「あっちだ!」

グリムが指差す。


一気に場の空気が張りつめた。


「行くぞ!」

「殺られないようにな!」

先輩達はやる気充分。高台から駆け降り急行する。

結構離れている。



副団長達は交戦中。騎士たちと共に、怪物を囲っていた。

後から駆けつけてきた団員達は

「俺たちの出番は無さそうだな」

と、口々に安堵の声を漏らす。


団長の無線にも『対象物と交戦中』との報が届き、胸を撫で下ろしたその時――。



宿舎の方へ移送されていた団員達の亡骸が、突如青白く発光し始めた。


「……何?」

側にいた騎士が、仲間だったはずの亡骸に魔法で頭部を破壊された。


「た、大変だーー!!仲間の亡骸が動き出しました!!」

息を切らし、団長の元へ飛び込んできた。


行った先、団長の目の前に広がった景色。

それは……

血塗れになりながら、かつての仲間だった屍と戦う騎士達の地獄絵図だった。


団員の大半が魔族の為、自身と同等かそれ以上の敵となる惨劇が広がってゆく。

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