20
ハルは家での療養許可が下りた。まぁ退院。
父エリックが病院まで迎えに来てくれた。
「ちゃんと治ったら城下行きたいなー」
ハルは助手席で、足をパタパタさせる。
「そうだなぁ。一週間くらい泊まれば研究所に行く時間もあるだろう。
ゆっくり勉強すればいいさ」
エリックはバックミラーを見ながら言った。
「わぁい」
「今回は一人でよく頑張ったなぁ」
エリックは腕を伸ばし、ハルの頭を撫でる。
たわいのない話をつつも、エリックは落ち着かない様子だった。
……なんだろう?
ハルは気になった。
“ガチャッ”――“チリーン”
「ただいまぁー」
夕方近くに家に着いた。ら。
ハルは目を細める。
大人二人がヒスイさんに抱きついて泣いてるし、ノアに抱きついてる子もいる。
……すごくカオスだ。
あれ?ノアが家にいる……。
「おー。ハルおかえり」
ヒスイが声をかけた。
「あ、おかえりー。もう大丈夫なの?」
ノアも片手を上げる。
「うん、まぁ……大丈夫なんだけど……。どうしちゃったかんじ??」
ハルは首を傾げた。
「いやぁ、バレちゃったかんじー?」
ノアが頭を掻く。
「それ……大丈夫??」
ハルは不安になった。
なんか軽いね?
「どうだろうね?いつかは仕方ないとは思ってたけどさ。
ちょっと早かったかな……」
ノアは少し俯きながら答えた。
「弟さん……王子様なんだよね……?」
ハルは小声で聞く。
王子様が家にいると、逆に自分が場違いに思えてくる。我が家なのに。
なんだか震えますね。
「うん。普通に王子だよ」
ノアは答えた。
ー
「皆さまが兄を助けてくださったのですね。感謝しかありません」
アオトとリンデンが深々と頭を下げる。
「兄様を助けていただいて、ありがとうございます」
第五王子のルカも頭を下げた。
「頭をお上げくださいませ。楽しく過ごさせていただいてますから」
母ユウカは、イケメンが揃っているのでとてもご機嫌だった。
お茶や焼き菓子をどんどん出している。
「まさかエリックさんの家とは……師匠がこれじゃ、そりゃ強くなるよなぁ」
アオトは納得した。
「いいなぁー。俺も稽古つけてほしいなぁ」
リンデンは羨ましそうにノアを見る。
「この話は三人の秘密で頼むよ。
ノアの目的を叶えないと、このままずっと王子たちの悲劇が続くだろう。
今まで通り、普通の態度と評価を続けてやってほしい」
エリックはアオトとリンデンに、深々と頭を下げた。
「頭上げてくださいよ」
アオトとリンデンは困っている。
「まぁ……他の王子達を殺させないってだけですけどね。
先代国王の時代は一人残して皆殺し。その前も死んでる。
扱いやすい王子を残しているのかと思いますし。今回も王子は複数人。
俺とルカが狙われたし、また次もあるでしょう。
誰も殺されなかったら、犯人がボロ出すかもって……」
ノアは石畳で正座をしながら言った。
その膝の上に、ルカが座っている。
「確か何代か前に崩壊しかけたことあったみたいですよね。王太子が大怪我負ったとかなんとか。
さりげなく誰かがやりすぎたって事なのかな……。神は選んで無い、か……」
アオトは顎に手を当てながら考え込む。
「実際は成功してないけど、ノエル王子殿下に対しては成功したと思っているだろう。
次は別を狙うか、再度ルカ王子殿下を狙うか…」
一人でぶつぶつと呟いている。
「敬称とか要りませんので……。
だから俺が内部から犯人探そうかな、と……」
ノアの足は感覚が無くなってきた。
「これ聞いたら協力するしかないじゃん。
最低限、班長になれば城に上がっても不自然じゃないしなぁ」
リンデンはクッキーをつまみ、口に放り込む。
「ああ、そうだな」
アオトは紅茶を飲み、頷いた。
「誰も俺を殺せないくらい強くならなきゃいけないから。まあ理想なだけですけど。
でも不正では嫌だし、贔屓はやめてくださいね。
あと敬語も無しで、今まで通りでお願いします」
ノアはルカの頭を撫でる。
「それとルカは……しっかり勉強して稽古も参加して、殺されない程度には強くなってくれよ」
「……はい……」
ルカは俯きながら、大人しく返事をした。
「他に協力者はいないのですか?
一人じゃ無理がありましょう。知ってればある程度は庇えます」
アオトがエリックに問いかける。
「そうだなぁ……俺の息子。第一騎士団に入団したユキと、救助隊の試験を受けに行ったアキはしっている」
エリックは静かに答えた。
「ユキは俺より全然強いですよ。俺、ほんと勝てないですし」
ノアは何故か誇らしげに言う。
「第一騎士団の方には言わないのですか?」
リンデンが尋ねる。
「まぁ、バレたら、かな。
あまり話が広がったら危ないしな。そもそもノアの身バレが早すぎてなぁ……」
エリックが呆れながらノアに視線を向ける。
「はい、すみません。ルカが覚えてるとは思わず……」
ノアはしょんぼりと言った。
「ごめんなさい、覚えてたせいで……」
ルカが俯く。
「んー、そう言われるとちょっと複雑……」
ノアは顔をしかめた。
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