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ここは冬場は腰より上に雪が積もり、すぐ埋もれて物流が停滞しがちな田舎街、スノラーナ。
街外れの森の手前、1階でパン屋と薬草SHOPを営む木造二階建ての家に住んでおり、薬草SHOPは半年ほど前にオープンしました。
そこは若干ゴツめな父親、映えが好きな母親、兄と双子の妹弟の5人がのんびり暮らしていました。
それは双子の姉、ハルが9歳のころのことです。
魔物がいる山の麓、初めての夜間の薬草採りについていった時のこと。
昼間とはだいぶ印象の違う森。父エリックは運転する車を目立たない所に停め、兄のユキと双子の弟アキにくっついて夜間にのみ咲く薬草、月夜草を取りに行きました。抜くと光らなくなるので、夜じゃないと見分けがつかないのです。
ランタンを持った父エリックが先頭を歩き、その後ろをハル、さらに後ろに兄弟が続く。
「暗いから気をつけて」
「足元に気をつけてね」
兄弟が揃って後ろからハルに声をかけます。
「うん…」ハルは緊張気味。
無理もない。夜は基本、魔物が活発で危ないから母親とお留守番。今夜は初めて連れて行ってもらえたので、嬉しいながらも緊張していた。
(兄曰く、この辺の魔物は結構強いらしいです)
するとエリックは立ち止まり、後方に向かって
「魔物だ。気をつけろ」と静かに言いました。
戦闘体制に入る4人。
父は大きな斧を地面から生成。
続いてユキも地面から剣を生成、アキはランタンの光から投てき用のナイフを生成。
ハルは首に下げている、弟から貰った魔石を握りしめる。
夜行性のダークウルフ5体は4人に襲いかかるも、斧で両断、剣で切り裂き、ナイフで眼球を刺されあっけなく討伐された。
「急に暗闇から出てくるとびっくりするね…お腹空かせすぎ…」
ハルは何もすることなく戦闘は終わってしまう。
「冬越えの準備しないバカなんだろ」剣を土に戻しながらユキが言う。
「ほんとだよね。たまにしか人来ないだろうし…普段何食べてるんだろねー」アキもそんな感じ。
「さて。ちょっと急ごうか。いつもと雰囲気が違うからな。さっさと終わらせよう。面倒くさいことは避けたい」父が速度を上げる。
森を進み、山の麓まで夜行性の魔物たちを倒しながら進む。時折熊ほどの大きな魔物も出てくるけど、
「あんまり魔物いねーな」
「僕でも余裕だね」
「昼間よりは多いんじゃないの?」
「んーー…なんか微妙」
1番多く夜間の薬草採取に来ているユキは違和感を覚えていた。
「油断はするなよ。ここは強い魔物が多いからな」森の東側に目をやる。
ユキもそっちを見ながら「ふーーん」
いつもの採取場所に到着し、湧水のそばにほんのり光る草の群生。
「ハル、あれだよー」アキは「コレコレ!」ってハルを呼ぶ。
父とユキは安全のために結界を張っている。
目当ての月夜草を見つけ父が数本採って瓶に入れ、そばの湧水も入れる。摘んで数分もしたら輝きは消えてしまう。
覗き込むハル「おおーキラキラー!!ほんとに光ってるー!」
輝いているところを初めて見た。ずっと見てみたかった。自分だけ見たことがないのがちょっと嫌だった。
「その辺の回復薬とは効果が比べ物にならないからな。貴重だし高く売れるし」
父が湧水で月夜草を洗いながら言う。
「店番俺もやるから売れたら焼肉!」
「最近出来たカフェもー。ケーキもお菓子も人気でさ。首都の流行りなんだってー」
「まじかー…まぁケーキも美味いけどさ。それよりお前女子に混ざりすぎじゃね?」
「えー、だってハルといると自然と女子の会話に入っちゃうんだってー」
ケラケラ笑うアキ。
ジト目になるユキ。
「はいはい、無事に帰ってから決めるぞ。その辺の薬草も採っていくか。ユキ、ハル、アキ、その赤い花と青い花、根っこごと10本くらい抜いてくれ」
3人「はーい」「はいよー」「はいよー」
パシャッ、パシャッ。
「ねぇお父さん、今日の記念にこの水晶採っていい?お留守番のお母さんにもこの嬉しい気持ちをお裾分けしたい」
大きめな水晶クラスターをスマホで撮影しながら、湧水のそばでキラキラ輝くガーデンクォーツを指差す。
「いいけど採れるか?(お父さんには?)」
「俺がやるよ(俺にもくれ)あ、ごめん。いっぱい折っちった」
ユキがすっとぼけながら簡単に折ったポイントを6本ほどハルに渡す。
「…ありがとうー!ペンダントかブレスレットかなぁ〜…いっぱい折ってもらったから…はい、お父さん、にいちゃん。水晶だからお守りになるね」
父とユキはアイコンタクトをした。
「今日記念日〜」とか言いながらアキにも渡しに行く。
「え、僕はいらんし」アキは興味無かった。
「…」ハルは話しかけなかったことにしてその場を離れた。
スマホ=スマートな魔法通信端末
ただの薄い四角くで通話やメール、ネット、ゲーム、撮影なんかができるだけのやつになります。
色々ちまちま手直ししていますー。