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突然のルカの言葉で
ドッキーーーン!!
心臓が口から飛び出すかと思った。
顔なんて見れない!返事も無理っ!!
え、なんで分かったの!?
覚えてたら記憶力ヤバくね?最後に会ったのお前まだ五歳だったよ?え??
深呼吸をし、
「グリム、よろしく」
と、顔が引き攣りそうになるのを抑えながら、グリムの額に雷避けのお札をバチンッと貼る。
「いってー」
力加減を誤った。
けど、とりあえず無視して横にルカを座らせ、二人分の小さな結界を張った。
気を取り直し、魔物に振り向いて剣を構える。
「誰の指示かな?」
ちょっと声が裏返りそう。
「それは知らないワ。私はそうする様に造られただけよォ。製作者は食べちゃったしぃ」
薄っすら姿が見えた。
オメーが普通に接してくれて助かったよ。
ちょっと感謝しちゃったじゃん。
雷を纏わせた剣で斬りかかるも、避けられた。
足元にはどんどん粘液の沼が広がり、口からも無数の粘液を飛ばしてくる。
避けながら、だんだん冷静さを取り戻してきた。
「あぁ、気持ち悪ぃなぁ」
感謝は終わり。
足元を気にかけながら雷剣で粘液を焼き切っていく。
距離を詰めながら再び斬りかかる。
「なんで狙ってんの?」
「すっきりするらしいわ」
雷に耐えきれず、支給された剣は崩れてしまった。
突如ノアの上空には、黄色く光る大きな雷の魔法陣が現れた。
「お前キモいしもう無理。話聞けなそうだし…要らないね」
魔法陣から大量の雷が降り注ぎ、辺り一面が金色に輝いた。
「いつの間に!?」
全く気づかなかった魔物に、逃げ場など無かった。
「魔法は準備に時間かかるんだ」
数分間、雷は落ち続けた。
ーーー
広範囲の雷撃。
戦闘中にこんな複雑なものを、ほぼ未経験の新人が作れるだろうか。
剣技と魔法は意識する部分が全然違う。
神殿までの道を駆け上がってきた第四騎士団一行。
王子もいるため、上位二十名ほどを引き連れていた。
眼前に広がる上空の魔法陣と雷で眩しい。
離れていても、ビリビリと痺れる。
グリムと組んでいるのはノア。グリムは水だからこれはノアの魔法で間違いなさそうだ。
「なんなんだアイツ…」
団長は唖然として立ち止まっていた。
同行していた一班と二班の班長も言葉を失っていた。
二班の班長が、眩しさから目を逸らした先の獣道が視界に入る。
……何かがある。
「……ん?なんだ?」
近づいてみれば、ルカの教育係、アーライルが横たわっていた。
「うわぁっ!」
不覚にも腰を抜かしてしまう。
「どうした?……うッ……」
見に来た団長も思わず口を抑える。
「直ちに調査班を呼べ!」
数日間かそこに居たのであろう。
着衣は赤茶色に染まり、乾ききっていた。
ーーー
ルカは無言で じーーーーっ とノアを見つめている。
気まずくて過呼吸になりそう。
仕方ない。しゃがんで目線を合わせ、
シーっと口に人差し指を当てながら
「……今日は何も無かったことにしましょうね。王子様」
「叫ぶよ?」
ルカを怒らせてしまった。
「……あーもう悪かったよ。明日か明後日、声かけるから。それまで誰にも言うなよ。また狙われるかもだから」
急いでヒスイ達に相談だ!やばいやばい。




