表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひととま  作者: 珈琲
第一章
15/104

14

「じゃ、俺戻るねー!無理すんなよー!」

ノアは手を振って病院を後にした。


「はぁー。お父さん、やっぱり私ひとりじゃ無理なのかなぁ…」


「ちゃんと公園の人たち守ったじゃないか。怪我人もいないし、よくやったよ」

お父さんが頭を撫でてくれた。


「足の骨が完全に戻るまでは安静に、だって。

アキがいたら早いんだけどね。ここの先生も腕は確かだから、もうちょっと辛抱してね」

お母さんも優しく声をかけてくれる。


「アキの治療は痛いもんね。病院の方が安全かも……」


骨を正常な位置に作り直すのは高等技術だ。普通の回復師でも、患者への負担を考えれば半月はかかる。

アキなら即座に治せるけど、その分患者側への負担が大きすぎる。


「お父さーん…私もみんなみたいにカッコよく魔物倒したいよぅ…」

泣きそう。いや。涙でた。


「わかったよ。じゃあ治ったら、城下の図書館に行くか。ここよりは情報が多いからな」

怪我を減らす近道は強くなること。


「うん!ありがと!!」


父親とは、愛娘のお願いに抗えない生き物なのである。


ハルのように複数の属性魔法を扱える事例は稀で、しかも彼女は魔力量も少ない。どうしたって扱いが難しい。

二属性持ちの魔導士ならトップクラス、それはもう国王直属とか研究所のトップとかそんなレベル。そんな彼らは総じて魔力量が高い。

知識があっても、結局は自分の基礎魔力量に合った魔法しか使えないため、あまり参考にはならないのである。


本で知識を得ても、正直微妙ではあるけれど、何もしないよりはマシかな。って。


ーーー


団長や副団長、班長たちが会議室にいるとのことで

「戻りました」

報告にきたノア。


神殿がある山の麓には、騎士団の宿泊施設がある。ここで雪解けの春まで、警備や訓練にあたるのだ。

魔物の増加に伴い、近年は要請が多い。


「あ、ノア戻ったんだね。彼女、大丈夫そう?」

副団長リンデンが声をかける。


「ありがとうございます。おかげさまで無事です」


「それはよかった。君、魔物討伐したんだって?見てみたかったなぁ」

団長のアオトが楽しそうに言った。


「君、今年入団だよね」

「へー…」

「あまり調子に乗るとすぐ死ぬから気をつけてよ」

班長達はあまり面白く無さそうに小言を言ってくる。


「…でしゃばりすぎました。すみません」

感じ悪いなぁ…

でも、あまり目立ちすぎるな、ってエリックさんに言われてたの忘れてたなぁ。


ユキもノアも、実力だけで言えば騎士団幹部クラス。エリックのお墨付きである。


「まぁ、明日からは街の巡視、森での討伐、神殿の警備といろいろある。今日は休め」

団長が声をかける。


「はい。では失礼いたします」


「随分と所作が丁寧だな。どっかの坊ちゃんか?」

「いや、この町出身の親ナシみたいですよ。特にいいとこではなさそうです。兄が商店街の花屋で働いてるくらいで」


「じゃあ…ちょっとその花屋に行ってきてもらえるか。ついでに献花用をひとつ」

「そうなりますよねー。了解」

「俺行きますよ」一班の班長が言う。

「いや、リンデンに任せる」



結局、商店街の花屋で働く兄はやたら厳ついだけで、弟の才能を見込んで、稼ぎの大半を家庭教師につぎ込み教育していただけだった。特に怪しいところはなしーーーと報告した。


ーーー


その夜。団長は花束を持ち、五年前の事故現場へ赴いた。副団長も一緒だ。


「もうすぐ六年か。みんな第二王子のことばっかりだけどさ。

当時教育係だった兄貴も巻き込まれてんだよな。話題にすらされなかったけど」


「…この町でしたね。俺もガキの頃世話になったなぁ」


「八つ離れてたからさ。仲良かったんだよな。あーあ、どっかで生きててくんないかなー。夢枕にすら立たないんだよな」


献花台はない。きれいな柵があるだけ。花は崖へと投げ落とした。


「さー仕事戻るかー」

団長は大きく伸びをした。

「終わったら呑み行こーよ」



閉店した薄暗い静かな店内で、ヒスイはコーヒーを飲んでいた。

閉店間際に来たリンデンに気づいていた。

「悪ぃなぁ。アオト。リンデン。業務が長引いてんだよねぇー」


会話増えたので文字数増えました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ