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ひととま  作者: 珈琲
第一章
13/275

12

その日の夜、ハルは全てから開放され、ベッドで長い事ゴロゴロしていた。


アリスから『近々第四騎士団が神殿の近くで訓練とかするんだって!

ノアいるかもね!』


なんてメールが来たもんだから、ちょっと楽しみになったじゃん。

会うの久しぶりすぎる。


ハルは大きく伸びをした。


もうやらなきゃいけない事も無いし、自由だし!

見学に行こうかなー。

申請必要なのかなー?


ああ、ずーっとこの自由が続けば………続けば………。

うん、やめておこう。今だけにしておこう。


ハルは思い直した。



ーーー



「いってらっしゃーい」

ハルは部屋の窓からエリックとユウカが乗る車に手を振った後、ソファとクッションの隙間に埋もれるように寝転んだ。


両親が隣町まで買い出しに行った、お昼すぎのこと。


ハルは一人の休日なのでのんびり魔導書を読むことにした。

とても静かな家の中。


だいたいアキがいるから……一人って滅多になかったなぁ。前は、兄ちゃんとノアもいたし。

寂しくなるなぁ……。



すると突然、外からものすごい寒気を感じた。


急いで窓の外を見ると、雪の止んだ静かな銀世界が広がっているだけ。


「何……?」

ハルは顔をしかめる。


でも気のせいじゃない……。何、あの感じ……。


意識を集中させ、発生元を探しに外へ飛び出した。



雪はかき分けられていて、歩くのはそこまで大変じゃなかった。

バス停を過ぎ、学校の前までハルは進む。

その先には町立図書館と、木に囲まれ中央に噴水のある小さな公園がある。


公園では小さい子たちが遊んでいた。


「やっぱ気のせい?」

ハルは首をかしげる。


でも、噴水の方に違和感があるよね?


ふ、と視界に入ったのは、噴水の上にいた真っ黒な魔物だった。

普通に公園にいるはずもないそれが、辺りを見回していた。


「え、知らない!何あれ!?」

ハルは急いで噴水まで駆け寄る。

周りの子供たちは気づかず遊んでいた。


「逃げて!!」

ハルは声を上げる。


その時、黒い魔物が子供たちの方へ飛びかかった。


ハルは逃げ遅れた子の背中を風の魔法で強引に押し出し、急いで地面に右手をつく。

ぶわっと砂煙を上げて広がる土の魔法陣は、噴水を囲うように結界を張った。


魔物はハル目掛けて飛びかかってきた。


「わわわっ…!なにこれ、動き早くない!?」

ハルは辛うじて避ける。


すぐに向きを変え、再び襲いかかってくる。

何度も、何度も。


ハルは鋭い爪から必死に避ける。


「待ってー!避けきれないってー」


そして、ハルの腕を爪が掠める。袖が真っ赤に染まってゆく。


それでも魔物の背後に回り込めた瞬間、右手人差し指を魔物に向ける。


「氷と雷よ……」


魔物の真下に青と黄に光る線が伸び、魔法陣が瞬時に描かれた。

地面から複数の鋭い雷を帯びた氷柱が突き上がる。

そのうちの一つが命中し、魔物の腕を吹き飛ばした。


「よし、なんとか……!」

雷で少し麻痺したのか、動きが鈍くなっていた。


「今だ!風よ……!」

畳み掛けるようハルの正面には、緑に光る魔法陣が現れる。

鋭い風を発生させ、魔物を切り刻む。


……はずだった。

が、硬い。表皮がめちゃくちゃに硬い。


「えーー!やらかしちゃった!ミスった!?」

ハルは冷や汗がじわじわと溢れる。

心臓がバクバクいいはじめた。


魔物の爪と牙が目の前で光る。


「あ、やられちゃう……?」


やっぱり私じゃダメなんだなぁ……。


「あーーーもう!どーせ弱っちいですよーーだ!!」

ハルはヤケになって魔法で岩を生成する。

至近距離で飛ばしまくると、魔物は後ろへ下がった。


「よし、なんとか距離は取れたけど!今は食べられなかったけどっ!!」

息を切らし、足に深い傷を負った。

出血は止まらない。


「どうしよどうしよ、立てない……。まだ魔物そこにいるじゃん…」

焦りと痛みで視界が歪み、目の前が暗くなった。



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