12
その日の夜、ハルは全てから開放され、ベッドで長い事ゴロゴロしていた。
アリスから『近々第四騎士団が神殿の近くで訓練とかするんだって!
ノアいるかもね!』
なんてメールが来たもんだから、ちょっと楽しみになったじゃん。
会うの久しぶりすぎる。
ハルは大きく伸びをした。
もうやらなきゃいけない事も無いし、自由だし!
見学に行こうかなー。
申請必要なのかなー?
ああ、ずーっとこの自由が続けば………続けば………。
うん、やめておこう。今だけにしておこう。
ハルは思い直した。
ーーー
「いってらっしゃーい」
ハルは部屋の窓からエリックとユウカが乗る車に手を振った後、ソファとクッションの隙間に埋もれるように寝転んだ。
両親が隣町まで買い出しに行った、お昼すぎのこと。
ハルは一人の休日なのでのんびり魔導書を読むことにした。
とても静かな家の中。
だいたいアキがいるから……一人って滅多になかったなぁ。前は、兄ちゃんとノアもいたし。
寂しくなるなぁ……。
すると突然、外からものすごい寒気を感じた。
急いで窓の外を見ると、雪の止んだ静かな銀世界が広がっているだけ。
「何……?」
ハルは顔をしかめる。
でも気のせいじゃない……。何、あの感じ……。
意識を集中させ、発生元を探しに外へ飛び出した。
雪はかき分けられていて、歩くのはそこまで大変じゃなかった。
バス停を過ぎ、学校の前までハルは進む。
その先には町立図書館と、木に囲まれ中央に噴水のある小さな公園がある。
公園では小さい子たちが遊んでいた。
「やっぱ気のせい?」
ハルは首をかしげる。
でも、噴水の方に違和感があるよね?
ふ、と視界に入ったのは、噴水の上にいた真っ黒な魔物だった。
普通に公園にいるはずもないそれが、辺りを見回していた。
「え、知らない!何あれ!?」
ハルは急いで噴水まで駆け寄る。
周りの子供たちは気づかず遊んでいた。
「逃げて!!」
ハルは声を上げる。
その時、黒い魔物が子供たちの方へ飛びかかった。
ハルは逃げ遅れた子の背中を風の魔法で強引に押し出し、急いで地面に右手をつく。
ぶわっと砂煙を上げて広がる土の魔法陣は、噴水を囲うように結界を張った。
魔物はハル目掛けて飛びかかってきた。
「わわわっ…!なにこれ、動き早くない!?」
ハルは辛うじて避ける。
すぐに向きを変え、再び襲いかかってくる。
何度も、何度も。
ハルは鋭い爪から必死に避ける。
「待ってー!避けきれないってー」
そして、ハルの腕を爪が掠める。袖が真っ赤に染まってゆく。
それでも魔物の背後に回り込めた瞬間、右手人差し指を魔物に向ける。
「氷と雷よ……」
魔物の真下に青と黄に光る線が伸び、魔法陣が瞬時に描かれた。
地面から複数の鋭い雷を帯びた氷柱が突き上がる。
そのうちの一つが命中し、魔物の腕を吹き飛ばした。
「よし、なんとか……!」
雷で少し麻痺したのか、動きが鈍くなっていた。
「今だ!風よ……!」
畳み掛けるようハルの正面には、緑に光る魔法陣が現れる。
鋭い風を発生させ、魔物を切り刻む。
……はずだった。
が、硬い。表皮がめちゃくちゃに硬い。
「えーー!やらかしちゃった!ミスった!?」
ハルは冷や汗がじわじわと溢れる。
心臓がバクバクいいはじめた。
魔物の爪と牙が目の前で光る。
「あ、やられちゃう……?」
やっぱり私じゃダメなんだなぁ……。
「あーーーもう!どーせ弱っちいですよーーだ!!」
ハルはヤケになって魔法で岩を生成する。
至近距離で飛ばしまくると、魔物は後ろへ下がった。
「よし、なんとか距離は取れたけど!今は食べられなかったけどっ!!」
息を切らし、足に深い傷を負った。
出血は止まらない。
「どうしよどうしよ、立てない……。まだ魔物そこにいるじゃん…」
焦りと痛みで視界が歪み、目の前が暗くなった。
表現の修正




