レイのクラス：《クラス・ドール》の日常
シエルが《クラス・デ・ゼトランジュ》で個性豊かな日々を送る一方で、彼の幼馴染であるレイは、アカデミーの最上位クラス、《クラス・ドール》に在籍していた。そこは、文字通り武術の国の未来を背負う、最も才能に恵まれた子供たちが集う場所だ。
《クラス・ドール》の担任を務めるのは、ミーシャ・アルテミスという女性教師だった。彼女は、流れるような銀色の髪と、氷のように透き通った瞳を持つ、息をのむほどに美しい女性だ。常に背筋を伸ばし、その佇まいには一切の無駄がない。剣士としての腕も一流で、その教え方は非常に洗練されており、生徒たちからの信頼も厚い。しかし、彼女の心の中には、ミストリードへの一方的なライバル意識が秘められていた。「あの掴みどころのない男が、なぜアカデミーにいるのか」「あんな放任主義で、本当に生徒が育つのか」と、彼女は内心で常にミストを意識し、その指導方法に疑問を抱いていた。もちろん、ミストが彼女をライバル視している様子は一切ない。
《クラス・ドール》の生徒たちは、皆が優秀だった。彼らは日々、完璧な武術の型を追求し、効率的なマナの運用術を学ぶ。ミーシャの指導は厳しくも的確で、一人ひとりの生徒の紋章と才能を最大限に引き出すことに特化していた。学業においても、彼女は生徒一人ひとりの理解度に合わせて課題を作成し、徹底した指導を行っていた。
その中でも、レイの才能は群を抜いていた。彼女は細く鋭い剣を愛用し、その技術は日ごとに磨かれていく。彼女の剣筋は、まるで疾風のように素早く、針の先端のように正確で、見る者を魅了した。レイは、シエルが《クラス・デ・ゼトランジュ》にいることを悔しく思っていたが、同時に、彼に恥じないよう、この《クラス・ドール》で誰よりも強くあろうと日々鍛錬を重ねていた。
しかし、《クラス・ドール》には、レイと同じくらい、あるいはそれ以上の才能を持つ生徒がもう一人いた。彼の名はクラウ。彼は、レイとは対照的に、長大な槍術を得意としていた。その槍は、まるで体の一部であるかのように操られ、遠近を問わず圧倒的な破壊力と精密さを誇った。クラウの存在は、レイにとって良きライバルであり、時には刺激剤ともなっていた。
ミーシャ・アルテミスの指導のもと、レイとクラウ、そして《クラス・ドール》の生徒たちは、来るべきクラス対抗戦に向けて、その実力を着実に高めていた。彼らは知らなかった。最下位の《クラス・デ・ゼトランジュ》で、シエルという少年が、全く異なる方法で、しかし着実に、彼らとは異なる「レベルアップ」の道を歩み始めていることを。
