光る石を探して②
「フィル。もう少し、足の裏のこの部分で、地面を撫でるようにしてみたら…」
僕から出た言葉に、みんなは驚いた顔をした。でも、もう後がない。フィルは僕の言葉を信じて、もう一度挑戦してくれた。だけど、やっぱり完全に音を消すことは無理だったんだ。微かながらも、地面を蹴る音が響いてしまう。
その時、ルーイがはっと顔を上げた。その目は、オロオロとした普段とは違い、鋭い光を宿していた。
「シエル! 君、幻影の獣の位置が分かるの!?」
僕は少し迷った。はっきりとは言えないけれど、あの朝の練習と同じで、感覚として伝わってくるものがある。
「うん…なんとなくだけど、どこにいるか、分かる気がする」
僕の言葉を聞いて、ルーイの顔に確信が宿った。
「分かった! それなら、作戦を変更するわ!」
ルーイは、急いで僕たちに指示を出した。
「フィル、やっぱりあなたは全力で走って! 獣に気づかれる音を出しても構わない! ローディアスは、この大きな木の影に隠れて、準備してて!」
僕も、ルーイの言葉に耳を傾けた。彼女の頭の中で、何かが繋がり始めたのが分かった。
「フィル、あなたの足の速さは獣よりも速い。だから、獣を僕たちのほうへ誘導して。ただし、獣があなたを追いかけてきたら、すぐにローディアスのいる場所へ引き返してきて!」
フィルの目が輝いた。音を立てない、という苦手なことを無理にやるのではなく、得意な「速さ」を活かす。
「わかった!」
フィルは頷くと、一気に駆け出した。その足音は、森の中に響き渡り、すぐに幻影の獣が反応して、フィルを追いかけ始めた。フィルは、ルーイの指示通り、僕たちが隠れている大きな木の方向へと、獣を誘導してきた。
「ローディアス! 今よ!」
ルーイの叫び声と同時に、木の影に身を隠していたローディアスが飛び出した。彼の手に握られた木剣が、幻影の獣の頭上目掛けて、力強く打ち落とされた。ゴォン!という鈍い音が森に響き、幻影の獣は光の粒となって消えていった。
僕たちは、初めての成功に歓声を上げた。ミスト先生は、変わらず穏やかな笑顔で、僕たちを見ていた。ルーイの知略、フィルの速さ、ローディアスの力。そして、僕の「なんとなくだけど分かる」という直感。みんなの力が合わさって、僕たちは課題を乗り越えたんだ。