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成長の形

アカデミーの授業は、僕にとって毎日が新しい発見の連続だった。特に《クラス・デ・ゼトランジュ》の授業は、一般的な武術の訓練とはまるで違う。ミスト先生は、僕らの個性を引き出すのが本当に上手なんだ。

僕らの世界には、あらゆる場所に満ちている**「マナ」**と呼ばれる力が存在する。動物も植物も、そして僕たち人間も、このマナを取り込み、それを原動力として生きているんだ。武術の国の僕らは、特にこのマナを体に取り込み、それを力に変える術を学ぶ。そして、僕らが生まれつき持っている「紋章」は、どんな種類のマナを、どれくらい効率よく使えるかを示しているんだ。

入学する前に受けた神聖樹の儀式を思い出す。あの儀式は、子供たちの体内のマナを一時的に増幅させて、そのマナが発する色を見るためのものだったと、最近になって知ったんだ。僕が「薄く光る赤色」の紋章だと判定されたのも、その時のマナの輝きだったんだな。そして、僕らが「ギフト」と呼ぶ能力も、実はこのマナの輝きが形になったものなんだと、ミスト先生は説明してくれた。

ある日の勉学の授業で、僕たちはこの世界の「レベルアップ」について学んだ。僕はこれまで、レベルアップっていうのは、武術の腕を磨いて、もっと強くなることだとばかり思っていたんだ。ロゼ乳母の教えも、常に「もっと強く」だったから。でも、ミスト先生の話は、僕の考えていたこととは少し違っていた。

「みんな、この世界での成長、つまりレベルアップは、決して一つの形だけじゃないんだ」

ミスト先生は、そう言ってゆっくりと教壇の前に立った。いつものぼんやりした瞳の奥に、何か深い輝きが見えた。

「もちろん、武術の技能を磨くことは大切だ。マナを効率よく扱い、体を鍛えることもそうだ。だけど、それだけが全てじゃない。例えば、自分の能力を深く理解すること。それから、新しい知識を学ぶこと。困難な状況で、仲間と協力し、チームとして最高の答えを導き出すこと。あるいは、自分の苦手なことに粘り強く挑戦すること…そういった、内面的な成長や、他人との関わり方、知恵の積み重ねも、すべて君たちのレベルアップに繋がっていくんだ」

先生は、ボードにいくつかの言葉を書き出した。

「技能の深化」「知識の習得」「戦略的思考」「協調性」「精神力」。

「これらはすべて、君たちが世界で生き抜くために必要な力だ。アカデミーの授業は、君たちそれぞれの紋章の特性や、体に取り込んだマナをどう使うかに合わせて、これらの力を伸ばすためのものなんだよ」

その話を聞いて、僕はなんだかホッとした。僕には、レイみたいに飛び抜けた体力も、ローディアスみたいな怪力もない。でも、ミスト先生の言うことなら、僕にもできることがたくさんあるような気がしたんだ。特に、朝、木の下で目を閉じる練習をしてから、僕の「直感」は少しずつ研ぎ澄まされてきている。マナの流れを少しだけ感じ取れるようになったのかもしれない。もしかしたら、僕のその「直感」も、僕なりのレベルアップの形なのかもしれない、って思ったんだ。

その日のチームワークの授業では、僕たちのチーム、つまり僕とローディアス、フィル、ルーイの四人組に、複雑な課題が出された。迷路のような森の中で、隠された「光る石」を見つけ出し、無事に持ち帰る、というものだ。ただし、途中で遭遇する幻影の獣は、特定の音にだけ反応するという条件付きだった。

「さあ、君たちならどうするかな?」

ミスト先生は、いつものように穏やかに、僕たちを見守っていた。僕らは、それぞれの得意なことを活かして、この課題に挑むことになったんだ。これは、僕たちが「レベルアップ」するために、とても大切な一歩になるだろう。

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