第4話 友
夕ご飯を食べた後エプの部屋で寝る事になる。エプは小さなベッドで眠り、アイキは毛布を貸して貰い、床で寝ている……。
「ねぇ、エプ?」アイキは毛布を掛けて、横になりながら話しかける。
「ん? どうした?」エプもベッドで横になりながら、返事をする。
「君は人間の事をどう思ってる?」
「また突然だな〜。う〜ん……、昔から母ちゃんにも人間は危ないって教えられて来たから、ちょっと怖かったな……。でも、アイキと出会って話して見たら、全然いい奴だったから驚いたな〜」
「……人間と魔物って仲良くなれると思う?」
「何を言ってんだよ? おいらとアイキは友達でしょ?」
「そう……だよね……、……ごめん」
「さっきから一体何を言ってるの?」
「……今から僕が言う事を、落ち着いて聞いて欲しいんだ……」
「急に改まってどうしたんだよ?」
「……僕は……しなきゃいけない」
「……? 何だって?」
「僕は勇者を討伐しなきゃ行けないんだ!」
「……ど、どういう事? アイキは人間なのに、どうして勇者を倒すの?」
「……僕は、人間だ……。なのに、人類の英雄でもある勇者を倒す使命を持ってる……。半端者なんだ……。だから、明日にはここを離れて、旅に出る……」この時、アイキは何を思い、こんな発言をしたのか……。
別れを告げる為、決心をつける為、はたまた、ゴブリンを思っての発言だったのか。それは、アイキ本人にも分からなかった……。
「おいら、事情は良く分からないけどさ……」エプは言う……
「おいらはアイキの事、半端者なんて思わないよ? アイキは人間なのに、魔物のおいらと友達になってくれた初めての人だ。だから、アイキはいい奴だよ。明日から会えなくなるのは寂しいけど、その使命? を達成するのをおいらは応援するよ!」
「…………ありがとう。そんな事言われたの、初めてだよ……」何故だか涙が溢れる……。初めての感覚に戸惑ってしまう……
「明日旅に出るって言うけどさ? 何処に行くの?」
「……決まってない……」
「何だよ、決まってないのか。なら、おいら頭のいい奴紹介してやるよ? そいつなら何か良い事教えてくれるよ!」
「……うん。ありがとう……」
アイキは初めて救われた気がした……
――朝――
「おーい! 起きろ!」エプがアイキの腹を叩く。
「えっ! あ、おはよう。もう朝なの?」
「そうだ! もう朝だ! 今日は紹介したい奴が居るって言っただろ? 早く朝ごはん食べよ!」
(なんで地下なのに分かるんだよ……)
「と言う事なんです。一晩泊めて頂き、ありがとうございました! シチュー美味しいです!」朝ごはんのシチューを食べながら母ゴブリンに話す。
「あら、もう行っちゃのね? そうだ! エプと遊び終わったら一度戻って来てね? プレゼントがあるから」
「ぷ、プレゼントですか?」
「うん。その時のお楽しみね?」
そして、アイキとエプは家を出ると、入り口の広間まで向かう。
「いつもここらへんで〜あっ! 居た!」
エプは走って行き、話し掛ける。
「よっ! いつもそんなの読んでて面白いのか?」話し掛けたゴブリンは、自分の頭よりも大きな本を読んで居る……。
「うわっ! 急に話し掛けないで下さい! って人間?!」
「コイツは俺の友達でアイキって言うんだ! アイキは旅に出るんだけど何をすれば良いのか分からなくてさ? 相談に乗って欲しいんだ」
「よろしくね!」アイキはしっかりと挨拶をする。
「僕はギエって言います」
そして、2人はギエに事情を話した。
「ふむふむ、アイキさんは魔物と話しが出来る、珍しい人間なんですね? それならちょっと待ってて下さい!」ギエは本を石のベンチに置いたまま、どこかに行ってしまう……。すると、直ぐに戻って来て……
「この地図を見て下さい」
見るととても大きな地図で、このゴブリンの集落から、魔王城。更にはその先まで書いてある。
「ここら辺に確か魔物使いの家があると聞いた事があります」ゴブリンの集落から離れた森の所を羽ペンで囲む。
「へ〜。魔物使いか〜。確かに、魔物使いなら修行をつけて貰えるかも!」
「そうです! ここからだと3日は掛かりますかね〜……。ですが、通り掛かりに村もありますので!」
「…………」
「どうしたんですか?」
「いや、何でも無いよ! ありがとう凄く助かるよ!」
「この地図差し上げますよ」
「え? 良いの?」
「家に同じのが沢山ありますから」
「本当に助かるよ!」アイキは頭を下げながら感謝をする。
「おっ! 話終わったか? 何言ってるか分からないから退屈だったよ!」
「じゃ! ありがとうね! さぁ、戻って来てと言われたから戻るか〜」
2人はエプの家まで戻る。
「あら、戻って来たのね? はい、これ!」
母ゴブリンは大きな革のリュックを渡す。
「こ、これは?」アイキは驚き、尋ねる。
「旅に出るんだったら準備は万全にね! お昼とお夕飯。この時期は暑いから水分もしっかり摂るんだよ!」
「あ! ありがとうございます!」アイキは深くお辞儀をし、感謝を告げる。
「頑張ってね? エプ! 外まで送って上げなさい?」
「うん!」
アイキは最大限感謝をし、洞窟の入り口まで来る……
「……アイキ」エプが最後に話し掛ける。
「アイキなら、どんな奴とも仲良くなれる! この旅でも沢山友達を作れよ! あと……あと……いつか会いに来いよな!」
「……あぁ! 沢山お世話になった! 精一杯頑張って、いつかあい……に……。ううん! 絶対会いに戻って来るよ!」
「その意気だ! 頑張れよー!」
アイキは親友に見送られ、勇者討伐への旅に出るのだった……