第3話 導
2人は芝生の上で日向ぼっこをしながらくつろいでいた……。
「あっ、そういえばお前なんていうの?」
「ん? あ〜そうか、まだ自己紹介してなかったね」
(異世界だと名前は、名・姓で表記するらしい。あれ? 何で知って……。異世界語を習得したから、文法も身に付いたのか?)
「アイキ・イワナミって名前だよ。君は何て名前なの?」
「おいらはエプって言うんだ!」
「へ〜エプか〜。よろしくね!」
「そういえば、アイキはこんな所で何をしてたんだ?」
「う〜ん……。何て言えば良いんだろう……。まぁ、帰る所が無くて黄昏てたって感じ……かな?」
「え?! 帰る所無いの?! ならおいらの家泊まって来なよ?!」
「え〜? それは悪いよ――」
「そんな事無いよ! 皆いい奴ばかりだし、母ちゃんも許してくれるよ!」
(……でも、断っても行く所も無いしな〜……)
「分かった。有り難く泊まらせて貰おうかな?」
「そうこなくっちゃ!」
アイキはエプについて行く……
「……あのさ〜?」アイキは歩きながら話し掛ける……
「ん? どうした?」
「エプはさ……、勇者の事、どう思ってる?」
「突然何だよ? 勇者か〜、そうだな〜……」エプは少し考えて……
「おいら達魔物の王様、魔王様を倒そうとしてる奴だよな? 何でそんな事をしようとするのか分からないんだよな〜。魔王様は悪い人じゃ無いのにさ〜」
「……そうか……」
話しているとエプは止まり……
「さあ、着いた」
前を見ると壁に洞窟の入り口がある
「へ〜、ゴブリンって洞窟に住んでるんだ」
「あぁ、中に入ると意外と明るいから安心して?」
2人は洞窟の中へと入って行く……
少し進むと奥の方から、光と音が差し込んで来る……。そのまま進んで行くと……
「……思ってたより広い……」
松明の光が強く、洞窟の中とは思えない程明るく感じ、入り口の前にある広間では子供ゴブリン達が遊んでいる。
子供ゴブリン達はアイキの姿を見ると怯え始める……
「皆! この人間はおいらの友達だ! 凄くいい奴だぞ!」
エプがそう言うと、子供ゴブリン達の警戒心が無くなる。
「じゃ、また今度な〜! おいらの家はこっちだよ」エプについて行くと、木のドアの前まで来る。
「ここがおいらの家。母ちゃんと父ちゃんが居るけど気を使わなくて良いよ」
ガチャリとドアを開けると、エプは普通に入って行く……
(……本当に入って良いのか?)
アイキは恐る恐る入って行くと……
「エプ! 一人で勝手に遠くまで遊びに行っちゃ駄目でしょ!?」
「母ちゃん! そんな怒らないで……」
「うん?」エプロンを着けたゴブリンがアイキを見つめる……
「誰?!」
「この人間はアイキって言うんだ! 悪い人じゃ無いよ! 凄くいい奴!」
「何を言ってるの?! そう言う問題じゃ無いでしょ!」母ゴブリンはエプをビンタする……
「ちょっ……! お母さん?!」アイキは申し訳無くなり止めに入る……。
その後、何とか落ち着き、母ゴブリンも泊まる事を許してくれた……。
「まぁ……。帰る場所が無いなんて可哀想に……。今日は家に泊まっていきなさい?」
「は、はい! ありがとうございます!」
(……何か申し訳無いな……)
夕ご飯はシチューを頂いたのだった……。