第2話 始
「……ん? ここは……?」気が付くと木々に囲まれた、ふかふかで暖かい芝生の上で眠っていた。
少し目線を上げると強い日差しに目を細めてしまう、何処からか鳥のさえずりだけが響く幻想的な空間。
「……もしかして、本当に異世界に?」アイキは自分の掌を見ると、意思通りに握って開くのを観察する。
「夢じゃなさそうだ……。どうしよう、勇者を討伐するには――」アイキがこれからの事を考えていると……
ガサガサッ
と、目の前の草むらが揺れる……。
「……も、もしかして魔物? ヤバイヤバイ! どうしよう……」腰回りに手をやるが……。
「……うっ、本当にそのまま転移されてる……。剣すら持たせてくれないのか!」アイキは全身身震いしながら、草むらへと差し足で近づく……
「べ、別に怖がら無くても良いですよ〜……」小さく呟きながら、恐怖で震え切ってる腕で草むらを掻き分けると……
「「うわーー!!」」
しばらく放心状態となり、意識が戻ると草むらにはゴブリンが居た事に気付く。
「ごご、ゴブリン?!」初めて本物のゴブリンを見たので、感動と衝撃で声が震える。
(どどど、どうしよう……! まま、先ずは挨拶だよね? ととと取り敢えず)
「こっ、こんにちは。ゴブリンサン、今日ハイイテンキですね」驚きの余韻で呂律が上手く回らず、変な喋り方になってしまう……。
「「…………」」
(……っ嘘だろ!? ガン無視とかある?!)
「……あれ?」良く見るとゴブリンは気を失っている様だ。
(さっきのでまだ放心状態から戻って無いのか?)
「おーい! ゴブリンさん? いい天気ですよ~!」ゴブリンの目の前で手を振り、大きな声で話す……
「……はっ! うわああぁ!!」
「うわっ!!」ゴブリンが突然大声を出したのに驚き、後ろの木にドンとぶつかってしまう……。
「え? だ、大丈夫か?」
「痛いです……。驚くなら言ってよ……」
「……あれ? お前、人間なのに話せるのか?」
「……あぁ、あらゆる生物と会話出来るチート能力を貰ったんだ――」
「え! すげぇじゃん!? お前、オイラと友達になってよ!?」そう言うと、ゴブリンは手を差し出す。
「ん? あぁ、ありがとう!」アイキも手を握り起き上がろうとする……
「…………」
(……起き上がれねぇ!)
ゴブリンの身長はアイキの腰程度しか無かった……。