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やがて君を魔女にする  〜異能ゼロの俺が、最弱魔法少女を“勝てる形”に組み替える話〜  作者: 蒼久保 龍
一章3部 親友を守るため・廃ビルでの戦い

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88話 対 宝具を扱う協力者 再戦

【前エピソードのあらすじ】

取引中、クロエの協力者は魔女狩りを殺そうと動く。

当然、それをフィナが許すはずもなく、戦闘が始まる。


 リボンには、等間隔でダイヤのような宝石が施されており、それらの宝石が禍々しい光を放っている。


 幻影魔法中の声は位置バレに繋がるため、俺たちは誰も言葉を発しない。


 と、小林は続けて言う。


「抜け殻女のために買ったんだけど、僕はクロエちゃんの身体や、性格や境遇、何もかも僕にピッタリで、気に入ってるんだよね」


「そ、そのチョーカー……、なんで、あなたが――」


 クロエは思わず言葉を漏らす。彼女はこの道具を何故か知っているらしい。


「もうこれ以上反抗されるのはごめんなの。言っとくけど、僕は強いよ。3人まとめて死ぬくらいなら、クロエちゃんが奴隷になったほうが良いと思うけど、どうかな」


 俺はクロエの方をチラリと見る。

 彼女の目は、明らかにあのチョーカーをみて怯えに変わっていた、が。

 月光に照らされたクロエはすぐに顔を横に振り、はっきりと小林に言い返す。


「私、いや、私たちはあなたに勝つ!」


「ふん、じゃあやってみろよ。象牙魔法、アイボリーランス!」


 彼の身体から鋭くとがった象牙が伸びるが、それはクロエの幻影に向かって飛んだのだろう。あらぬ方向に向かって伸び、壁に突き刺さった。

 クロエの魔法のおかげで、相手との間合いが取れた。


「フィナ! 1番特大!」


「水魔法! 水流衝撃波!」


 フィナがそう叫ぶと、薄暗いオフィスの半分ほどを埋め尽くす水の塊が出現し、小林がその水の中に入る。

 丸型で生成できない場合、空間を制圧するように発生するらしい。


 天井から地面まで、完全に水で覆われている。

 小林は水の中でもがいている。これは完全に決まったか。

 また、その水に飲み込まれた蛍光灯が一本割れた。

 電気が水に流れ込めば――。


 そう思った時だった。


 薄暗い部屋の中、小林の方からものすごい勢いで、フィナのみぞおち付近に何かが伸びた。


 フィナは直前に気付いて少し身体を動かしたので、みぞおちへの直撃は避けるが、脇腹にその何かが直撃して横に転ぶ。


 その結果、魔法が中断されてしまったのか、水の塊は消える。


 フィナは小林に見えていなかったはず……、音だけで判断したのか?

 それにあの棒は……。

 

 伸びてきた細い棒らしき何かは、一瞬で小林の方へ戻っていく。


「フィナ! 大丈夫!?」


 クロエがフィナの方を見て声を上げる。


 明確な隙。


 俺は不味いと思ってクロエの方へ駆けだした。


「このビッチが!」


 小林は俺かクロエを狙うと読んだ。

 結果、クロエの方を狙った。


 彼は音を頼りにしているのか、それとも幻影魔法が消えたのか、あの巨漢で、かつサンダルを履いているとは思えない速度でクロエに対し距離を詰める。


「なっ……」


 クロエはそう言うと、ドサッと尻もちを付く。

 完全に、この間の出来事がトラウマになっているらしい。


 気づけば小林は細長い棍棒のような、赤塗りの木の棒を持っている。

 もしかすると、フィナのみぞおちに入ったのはこの棒か……?


 小林はクロエに詰め寄り、彼女の髪の毛を掴もうとするが、俺はその横から走って左手で殴り掛かる。


 しかし、薬で反射神経も向上しているらしい小林は、俺の方を素早く振り向き、右手に持つ棍棒で上から殴り掛かって来た。


 咄嗟に、横へ回避しながら右手のBB弾拳銃を撃つ。

 が、視界も悪く、弾は当たらない。小林は間髪入れずに棍棒を乱雑に横に振った。


 俺はそれをかわすことができず、横腹でその棒を受ける。

 小林の筋力が増加しているからか、耐えるために腹筋や背筋に力を入れていてもかなりの衝撃だった。


 幸い、当たったのは棍棒のほぼ根元。


 俺は視界が揺れ、また、反射で横腹を押さえ、膝をつく。


 と、そこで小林は棍棒を両手で振りかぶって、俺の頭をカチ割ろうと思い切り振り下ろす。


 間一髪。


 俺は無我夢中に横へ転がって避けるが、そこで小林は陰縫いのお札を取り出して、俺の影に投げた。


 お札は、少ない蛍光灯に照らされて伸びる俺の影に吸い込まれるかのようなスピードでくっつき、その直後から俺の身体はピクリとも動かない。


「僕を敵に回したことを後悔するんだな。この寝取り野郎」


 どれだけ力を入れても、身体がうんともすんとも動かない。


「あ、あいうえおかきくけこ」


 痛みに顔を歪めながらも、試しに声が出せるかどうかを試すと、声は出せた。良かった。


 今、影に口や舌やのどの形が映っていないからか?

 そんな俺に対し、小林は思い切り棍棒を振りかぶる。


「ふざけやがって! まず1人目だー」


「フィナ、3番」


 小林が思い切り振りかぶる直前、フィナが脇腹を抑えながら、やや苦しそうな声音で叫ぶ。


「水魔法、湧水の羽――」


 しかし、小林がフィナの方をちらりと見て、棍棒をフィナの方に向けると、棍棒はものすごい勢いでフィナの方に伸びる。

 が、フィナは2回目だからか、間一髪その棍棒を避ける。が、右手は痛そうに下腹部を押さえている。


「邪魔すんなよ。てか、君、誰?」


「私は水の魔法使いフィナ、そこのハルのパートナー」


 フィナが呼吸を整えながらそう言うと、俺の視界の端で小林は憎むような目で俺を見た。


「ん? 水の魔法使いって、どこかで聞いたような……。って」


 小林は思い出したように笑い出す。


「あの、水の魔法使い!? はっはっは! 名簿で見たぞ! 全科目1点の逆カンスト魔法使いじゃないか!」


 名簿?

 やはり、識者の手帖以外にも、魔法使いの成績や情報を知る術があるのか。


「君、可愛いね……。胸もクロエちゃんほどじゃないないけどいいサイズだし、お尻はでかいし……、セーラー服コスプレもいい感じ。って、あーーーー、そっか。最初から落ちこぼれ魔法使いが来るように仕込んでいればよかったのか! はぁー、ミスった」


「どういうこと!?」

 と、フィナが言うも束の間。


 小林はバットを振るように、その棍棒を両手で握りしめ、俺の首から上を吹き飛ばそうと振り始めた。


「まずはお前から、死ね!」

 

「ハル! 危ない!」


 フィナは俺の視界の隅で、走りながらそう叫んだ。


 油断こそしていなかったが、相手は薬を飲んで化け物じみた身体能力。


 やはり、予見できない強さを持つ相手は、最も恐ろしい。


 俺は静かに、死を覚悟した。


 ビュン、と棍棒が俺の首に向けて振り下ろされた。


次回の投稿予定日は2/14(土)です。

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