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やがて君を魔女にする  〜異能ゼロの俺が、最弱魔法少女を“勝てる形”に組み替える話〜  作者: 蒼久保 龍
一章3部 親友を守るため・廃ビルでの戦い

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87話 久留米市街・廃ビル三階での戦い

【前エピソードのあらすじ】

クロエの協力者を尾行すると、明らかに怪しい廃ビルの前に辿り着く。

その廃ビルの三階で、彼と魔女狩り3名の取引が始まった。

 たしか、ラミアという魔法使いが失踪したのも広島県と言っていたはず。

 

「まずは例の物を確認しろ」


 大柄な男がそう言う。


「おい。口の利き方がなってないんじゃないか?」


 小林が彼を睨んでそう言うと、先ほどから必死に相手をしている男が慌てて言う。


「すいません、こいつは新入りでして……。おい、お客さまには敬語を使えと言ってるだろ?」


「ちっ」

 

 大柄な男は舌打ちをした。

 彼は明らかに若い。また、上背や肩幅はあるものの肉体を意識して鍛えているようではなさそうだ。


 と、その直後、小林は右手のポケットからタロットカードを取り出す。

 そして、それを持つ右手に力がこもる。


「小林様! すいません、すいません! このバカにはあとできつーく怒っておきますので、とりあえず、商品をご確認ください、ね、ね?」


「ふんっ」


 小林はそう言うと、アタッシュケースに近づき、中を開ける。


 中にはぽつんと、市販の風邪薬のような、白い錠剤がいくつも入っている小瓶と、黒色のリボンに赤色の宝石がいくつもついたチョーカーが入っていた。


「ふん。隷属のチョーカーは見本通り、と」


「っ……!?」


 後ろから息がこぼれたような音。

 俺が振り返ると、クロエは眼を点にして、そのチョーカーを呆然と見つめていた。


 心当たりがある宝具なのだろうか。


 一方、フィナはクロエに対し、ジェスチャーで静かにするよう訴えている。


「……ん? これ、あの薬と見分け付かないじゃんか、本当に強化の魔薬なのか?」


 幸い、気づかれなかったようで、男たちは取引を進めている。


「ええ、そりゃあもう。全くの本物です。先日お渡しした鎮痛剤よりもいい薬ですよ。復讐したいお相手がいらっしゃるのでしょう?」


 復讐したい相手、おそらく、俺のことだろう。


「この錠剤1粒には1回分の身体強化の魔法と、1回分の魔法強化の魔法が入っていると言われておりまして、飲めば身体能力や反射速度が飛躍的に向上するほか、貴方様が購入された象牙のタロットカードの威力も向上します。ただ、大量摂取や飲み過ぎにはご注意を……」


「金額は」


「本物ですが、破格の300万円で、いかがでしょうか。チョーカーは本物なので8000万円です」


「……、分かった」


「お買い上げですね、ありがとうございます」


 男はそう言うと、アタッシュケースを小林の前に差し出した。

 すると、小林は慌てたようにチョーカーを手にとってポケットに入れた後、大きな指でその小さな瓶を手に取り、ふたを開け、1粒錠剤を取り出す。

 そして、その場で水も飲まず、錠剤を口の中に放り込んだ。


「さっそく、お試しですか?」


 小柄な営業マンのような男がそう言うや否や、小林は地面を蹴った。

 次の瞬間、先ほど舌打ちした大男の胸ぐらを掴んでいた。

 速い。

 油断をすれば一瞬で間合いを詰められるような速度。


「これ、効き目がすごいや」


 小林はそう言うと、右手を開いた状態で上にあげ、その大男を容赦なく思い切り、全力で横からはたいた。


 すると、大男は横に数メートル飛んで、彼は血を吐いた。

 男は衝撃のあまり気絶したのか、あるいは、首あたりの神経系が機能を停止して死んだのか、ピクリとも動かない。


 小林はその男を投げ捨てるように地面に放り投げ、次は窓際に立っていた男に向かって踏み切った。


「お客様、困ります」


 小柄な営業マンらしき男がそう言った時には、小林は窓際に立っていた、もう一人の男に対し、慣れないような様子で蹴りを入れた。


 すると、その男は2,3メートル飛んで部屋の隅まで吹き飛び、壁に当たって倒れた。


「こいつら、僕に失礼な態度をとるのがいけないんだ」


「で、では、私はここで失礼します……」


「ラミアとかいう抜け殻女、ちゃんと手配しろよ! 僕は早く女が欲しいんだ!」


「は、はいぃ! 可能な限り早く運びますので!」


「明日だ! 明日には持ってこい! じゃないと殺すからな!」


 そう言いながら、小林は大柄な男のもとにもう一度踏み切って移動し、気絶している彼の髪の毛を左手で掴んで引き上げる。

 そして、右手を握って振り上げ、その大柄な男の脳天からカチ割ろうと振り上げる。


「絶対だぞ! 明日までに持ってこないと、お前もこうして殺し――」


 腕が振り下ろされそうになった、その時。


「ハル!」


 フィナの声が響く、命を救う彼女の性格を読めば、このタイミングは予想できた。


「フィナ、3番!」


「水魔法、湧水の羽衣!」


 いつのまにかポニーテールになっていたフィナはそう言いながら、結界を描いて、自分の身体に水をまとう。


「投石魔法、アーケインバリスタ!」


 クロエも後ろから銀の針を何本も飛ばす。その針は綺麗にフィナの右左を追い抜いて、小林のもとへ飛ぶ。


「な、なんだなんだ!?」


 小林は掴んでいた大柄な男を盾にした。そのため、その大男の身体に針が4本刺さる。


「ひっ……!? ま、魔法使いだ! 逃げろ!」


 俺が後ろから響いた声の方をチラリと確認する。

 小林に吹き飛ばされて転倒していた、窓際に立っていた細身の男は、吹き飛ばされた際に武装手段であるBB拳銃が壊れてしまっていたようで、凹んだ拳銃をその場において、這いつくばりながら逃げていった。


 その様子を確認してから、俺は再度フィナの方を見る。

 水を纏って身体能力が高まったフィナは、万華鏡の杖を握って小林の目の前に迫っていた。


「その手を離しなさい!」


 フィナは万華鏡の杖で上から殴り掛かる。

 しかし、小林は鋭い反射神経でその杖を開いた右手でつかんだ。

 この間、殴りかかった時と反応速度が違う。

 薬の効果だろうか。


 そして、髪を掴んでいた男を投げ捨て、左手で左ポケットをまさぐっている。


 何かが出てくる。

 そう予感した俺は、フィナが突っ込む間に構えていた、BB弾拳銃を構え、彼に撃つ。


 それが命中すると、彼は「ああああああああああああ!」と叫んで、万華鏡の杖を掴んでいた右手の力が弱まったらしい。


 フィナは杖を彼の手から力いっぱい放して、もう一度思い切り振りかぶる。


「フィナ! 屈んで!」


 クロエの声が響くと、フィナはその動作を止めて屈んだ。


 パンッ!


 すると、フィナが立っていたところにBB弾が通過する。

 音の方を見ると、小林に物を売っていた魔女狩りが拳銃を撃ったらしい。

 

「ああああ、もう、かわされた! 小林さん、早く逃げて!」


 営業マンのようにへりくだって振舞っていた魔女狩りの男が叫ぶ。


 そう言いながら、そのスーツの男はフィナに向かって銃を構える。


「幻影魔法、イリュージョンリリック」


 が、その前にクロエの詠唱が完了した。

 男はフィナを狙って銃を撃っているらしいが、全く見当違いな方向に銃口が動いていく。


「クロエ、フィナの援護を頼む。俺がこっちを押さえる!」


 俺はそう言いながら、見当違いな幻影に向けて銃を撃つ相手に、銃口を向け、走りながら発砲する。


 パンッ、パンッパンッ。


 しかし、相手もこの広間の入り口の扉を遮蔽にして、こちらへ応戦する。


「誰かと思えば、お前ら……!」


 小林の声が響く。


 しかし、フィナの方に気を逸らせば、俺は撃ち負ける。

 俺は2人を信じて、扉からもう一人の男をこちらに出さないことに集中する。


「ハル! 肉弾戦は無理! 力強すぎ!」


「投石魔法、アーケインバリスタ!」


 状況が見えないが、聞こえる声の情報のみを踏まえて作戦を考える。


「フィナに距離を取らせたい! クロエ!」


 パンッ。


 拳銃を撃ちながら、俺はそう叫ぶ。


「幻影魔法、イリュージョンリリック」


 クロエの声が響く。


「こんのクソビッチ! めんどくさい魔法使いやがって!」


 小林の声が響く。すなわち幻影魔法が効いたということ。


「小林さん! 早く逃げないと!」


「逃げ出したいなら逃げろよ! 僕は絶対に、ビッチとクズを殺すんだ!」


 その言葉を聞いたスーツ男は、迷いなく逃げの姿勢に入る。


「す、すいません。お金をもらえないのであれば、わ、私は逃げますよ! 小林さん!」


「お前みたいな雑魚に誰が金を払うんだよ! とっとと失せろ!」


 小林はそう言うと、転んでいた大男を扉の方へ蹴り飛ばす。

 すると、大男は簡単に扉の前まで吹き飛んだ。


 身長の低い営業マンのような男は、その大男を扉の向こうへなんとか引きずり出してから、入り口の扉を閉める。


 と、俺は扉の向こうが見えるかつ、2人と影が重ならない位置、部屋の入口寄りに立つ。


 扉の向こうに撤退した男は、大男を何とか抱え、俺と目が合うとすぐに目を逸らしてエレベーターへ乗った。


 そして、戦況を見直すと、フィナはバックステップを踏んで敵から間合いを取っていた。


 部屋の中央前方に小林。

 そして、俺が扉側、フィナが窓側。


 クロエは指示通り、俺よりも後ろの位置に立って、今は幻影魔法を起動している。


 というより、さっきからクロエが俺の指示に従って動いている。

 これは嬉しい誤算だ。


「クロエちゃん」


 小林は仁王立ちをして、幻影を見ているのかあらぬ方向に視線を向けながら言う。


「もし、君が僕の元に来てこのチョーカーをつけるってんなら、そこの2人は見逃してあげる」


 小林は、そう言いながら、短パンのポケットから、先ほど受け取ったばかりのヒラヒラと真っ赤なリボンのチョーカーを取り出した。


次回の投稿予定日は2/11(水)です、

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