84話 同級生と魔法使いの邂逅
【前エピソードのあらすじ】
作戦会議でクロエの協力者との戦闘方法を確認した俺たちは、真司澪奈と約束した西鉄久留米駅前へ向かう。
俺たちは福岡を走る唯一の私鉄、西鉄の久留米駅前に来ていた。
澪奈との約束の場所は、中央改札前だ。
俺は少しでも動きやすい服装にしようと、上は安物のゆったりとした白Tシャツに、下はジーパン、靴は黒と白のスニーカーを履いた。
また、肩から下げた黒色のサコッシュには、財布とBB拳銃を入れている。
一方、フィナは紺色リボン白色のセーラー服に紺色のプリーツスカートを着たいつもの姿、クロエも黒色ワンピースを着たいつもの姿のまま。
「本当、人が多い……、って、え! あれってもしかして仕立て屋さん!?」
フィナはさっきから、駅のいろんな施設を見て盛り上がっている。
先ほどから彼女の様子を見ていて、俺はフィナに対し、家の近くの田舎景色しか見せていなかったと気づいた。
「フィナ、油断しすぎ!」
そう言いながらも、クロエは焼鳥屋さんや牛丼屋、アイスクリーム屋の看板をチラリチラリと見た。
彼女も駅前は初めてらしい。
「澪奈は……」
俺はそんな言葉をつぶやきながら周囲を見渡し、スマートフォンを見る。
『着いたぞ』
メッセージも送ると、すぐに既読マークがついて、返事が来る。
『あ、見えた』
俺が顔を上げると、澪奈がイヤホンを取りながら片手を上げていた。
彼女はやや厚めに見える、グレーがかった白色のパーカーに、グレーのスウェットを履いていた。
そして、スニーカーは黒色と白色のスニーカー。
ストリート風なキャップを被り、そのキャップには大きな縁のサングラスをつけている。また、白色のスポーティーなポーチを肩からかけている。
いつも学校で見る、ミニスカートを履いている彼女の印象とは打って変わって、ボブカットが映える、ボーイッシュなコーディネートだ。
「ういーす」
澪奈は学校で会う時と同じテンションで俺にそう言いながら、後ろの二人を見た。
「とりあえず、改札だと目立つから移動するか」
俺がそう言うと、澪奈は率直に言う。
「黒いワンピースを着た子が協力相手だとして、そっちのセーラー服の子は何者?」
確かに、普通はそう見えるのか。
「いやいや、ハルは私の協力者です! そこ、大事!」
フィナは俺と澪奈の間に割り込んで言う。
「ハル?」
「俺の偽名だ。それに連れが二人いる点についても、移動をしてから話そう」
「あー、そういうこと。片方が今回の」
澪奈を含め、とりあえず3人を連れて、目的地方向に向けて歩き出す。
移動の途中、フィナはいろんな場所をキョロキョロと見ていた一方、クロエは澪奈を警戒しており、ずっと彼女の姿を見ている。
「ってか、2人も協力しとるん? いそがしかね」
「まあ、色々あってな。今回のターゲットが、ワンピースを着ている方の協力者なんだ」
俺がクロエを目線で指してそう言うと、澪奈は「複雑やね」と言った。
・
それから、移動中はフィナの街を見た感想以外の会話もなく、文化街商店街の方まで歩いてきた。
クロエはずっと、澪奈のことを警戒しているらしい。
澪奈と俺の会話もない。澪奈も魔法使いを警戒しているのか、チラチラと2人のことを見ている。
文化街商店街から通りを1本入ったやや人気の少ない暗い路地の道脇で、俺たちはようやく立ち止まる。
月が無い空の下、数本の街灯がその道を照らしていた。
今日はゴールデンウィークだが、夜が遅いからか、主要な道を外れると人が一気に少なくなる。
しかし、活気はある。
やはり、この商店街やその近隣の街並みは夜がメインなのだろうか。
「さて、じゃあ紹介するが、こっちが謎の女、真司澪奈」
「私の紹介、雑すぎん」
クレームを言われても、これ以上何を紹介しろと言うのか。
「何故か魔法使いのことを知っているから、今回頼らせてもらった。昨日の電話で、今回のターゲットがこの近くに現れると教えてくれたのが彼女だ」
「私、水の魔法使いフィナって言います! よろしくお願いします!」
ニコッと笑って、無邪気な様子で勢いよく挨拶するフィナ。
一方、クロエはどこか疑わしいような視線を澪奈に向けてから、俺の方を睨んでくる。
「本当に、俺は澪奈のことをこれ以上知らないからな」
俺がクロエを見てそう言うと、なんでそんな人に頼ったの? と言いたげなクロエ。
視線で正論を言われるとは。
「2人とも何歳? 同い歳ぐらいっちゃない?」
「ああ、フィナもこっちのクロエも俺たちと同じ16歳になる年だ」
「それなら全員タメでよかろ? よろしくね、フィナ、それに、あなたがクロエ?」
クロエは警戒したような様子で言う。
「幻影の魔法使いクロエ」
「まあまあクロエちゃん! ハルの友達だから信用しようよ! ね!?」
「だから信用ならないのよ」
サラッと酷いことを言う。
「ま、警戒してもらっとうけん、こっちも本音で話すわ。――も可哀想やし……。いや、ここではハルが可哀想って言ったほうが伝わる?」
「ほら、クロエがそんなこと言うからハルが落ち込んだじゃん」
「別に落ち込んではないぞ」
「よろしくね! レナちゃん!」
フィナは俺のことを気遣うようにそう言いながら、澪奈に右手を差し出した。
すると、澪奈はその握手の手を取らず、フィナの目を真摯に見つめて言う。
「フィナちゃん、ごめんね。最初に言っておきたいんだけど、えーっと……。私はこの世界の神に支えている者なの。魔法使いなら分かるでしょ?」
その言葉が発された瞬間、薄暗い路地裏に緊張感が走る。
「やっぱりそんなことかと……」
クロエは真っ先に警戒モードだ。
気づけば、彼女は右手に銀の針を何個も持っていた。
と、フィナは恐る恐る澪奈に尋ねる。
「神って、も、もしかして……、レナちゃんは、神社とかいう施設で仕事をしている人だったり……」
「うん」
澪奈がそう言うと、フィナは一歩後退りをする。
何? 巫女は魔法使いにとってまずい存在なのか?
「ちょっとフィナ。ハルにちゃんと魔法使いの敵対勢力を伝えたの!?」
俺は何も聞いてません。
「じ、じじじ、神社!?」
フィナは衝撃を受けたようにそう言いながら、2、3歩、後ずさりした。
次回の投稿予定日は1/31(土)です。




