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やがて君を魔女にする  〜異能ゼロの俺が、最弱魔法少女を“勝てる形”に組み替える話〜  作者: 蒼久保 龍
一章2部 幻影魔法が背負う過去

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82話 未来の魔女の六門生たち

【前エピソードのあらすじ】

フィナの力でクロエを説得し、協力をしてクロエの協力者を懲らしめる運びになる。

そして俺たちは、澪奈の情報を踏まえ作戦を練り始める。


「クロエは透明になる魔法があるだろ。あれで3人一緒にこっそり近づいて懲らしめるってのが、第一感だな」


 俺が思っていたことを言うと、クロエが後ろでボソリと言う。


「あの魔法を使って相手にトドメを指すことだけは、絶対にしないから」


「なんで」


 俺は率直に尋ねる。


 あの時、透明になって泣いていたクロエを見たときからずっと思っていた。

 魔法で透明になれるなら、それをずっとかけた状態でいれば敵なしだろう。

 人間は受容感覚の半分以上を視覚に頼っていると言われていたはず。


「クロエちゃんは透明になる魔法自体は使えるよね? なんて名前だっけ」


「バニッシュサイト。でも、私はこの魔法が嫌い。なんだか、自分の姿を消して戦うなんて、臆病者みたいじゃない?」


 クロエを揶揄する言葉で、臆病の魔法使いと誰かが言っていたような覚えがある。


「でもまさか、たかがそんな理由でトドメをささないとか決めているのか?」


 コンロに向かい合う俺の背中にクロエの痛烈な視線が突き刺さる感覚。図星だったのか?


「わ、私だって激流砲は戦闘であんまり使わないし、似たようなものじゃない?」


 フォローを入れるフィナ。図星だったらしい。

 しかも、激流砲は使わないんじゃなくて、使えないんだぞ。


「とにかく、私は自分を消す魔法を使って戦うことはしても、その魔法を決め技にするような、そんな格好悪いことはしないから」


 それをすればもっと強くなれるのに、とは言わないでおこう。



 それから、料理を皿に盛って二人の前へ出す。

 献立はすきやき風豚バラ野菜炒めと、白ご飯。ご飯はそれぞれお茶碗に盛ったが、箸ではなくスプーンを渡している。


「何このタレ、美味しい」


 クロエは俺の作ったすきやき風の豚バラ野菜炒めを気に入ってくれたようだ。


「それはすきやき風だ。すきやきと似た味付けにしてある」


「な、なるほど……。これが、すき焼き風」


 モグモグと元気よく食べるフィナの隣で、今日のクロエはゆっくり、分析をするように食べている。


 ちなみに、俺はクロエに出すためレンジで温めてから冷めた冷ご飯をもう一度温めなおして食べているため、米が少し固い。

 また、すきやき風炒めも、寝ていたクロエに出すため皿に盛ってしまっていたものをレンジで温めなおして食べた。

 残り物っぽくなってしまったご飯なので、少し味は劣るのかもしれないが、それでも悪くなかった。

 

 食後、洗い物はフィナに任せ、俺はこたつ机の前に座って、手帖を読んでいた。

 確認をしていたのは、六門生のページ。


・光線の魔法使いアリス

・学術70、体術50、魔術70

・未来の魔女 1年目 六門生

・反射鏡のリボン、人払いのスカーフ

・光線魔法、浮遊魔法


・解析の魔法使いハク

・学術100、体術20、魔術30

・未来の魔女 1年目 六門生

・望遠の虫眼鏡

・解析魔法、毒針魔法


 この2人と、もう1人のラミアは六門生で団体行動をしていたとのこと。

 しかし、部隊の名前は記載されていない。

 すでに、ラミアが討たれたからだろうか。


 そして、あと1人の六門生は、少し離れたページにいた。


・妖狐の魔法使いリゼ

・学術50、体術80、魔術50

・未来の魔女 1年目 六門生 未来九〇番隊

・防魔の外套

・妖狐魔法


 フィナ以外の魔法使いが修行を開始した今年の4月時点では、六門生がクロエ、ラミア、エミリー、アリス、ハク、リゼの6人であると予測できる。

 そして、何気なく開いたフィナの頁。


・水の魔法使いフィナ

・学術1、体術1、魔術1

・未来の魔女 1年目

・天体儀の宝玉、他5個

・水魔法


 ん?

 宝具の数が手帖の内容と合わない。

 天体儀の宝玉、万華鏡の杖、識者の手帖、水神のセーラー服、潔癖のプリーツスカート……。

 あと1個増えてるのは、なんだ?


 思い当たるものは、そこに無造作に置かれているランタン。

 このランタンは、本物なのだろうか。

 あるいは、レプリカでもこの手帖にカウントされる……?


「ラミアのページ、あるの?」


 こたつ机の向こうに座るクロエが、正座で座りながらこちらに問いかけてくる。


「俺が最初に見たときは書かれていたが、今はないな」


 すでに確認していたので即答する。

 

「クロエ。普通に質問していいか?」


「別にいちいち断らなくても、機嫌が良い時は答えるわ」


 ふんっと、目を逸らしながら、鼻につく言い方をする彼女。


「あいつと戦うため、六門生ラミアの能力を教えてくれ」


 俺がそう言うと、クロエは思い出すような仕草をしながら、慎重に答える。


「象牙の魔法使い。象牙魔法と長剣魔法を使う。魔法の種類は……」


 ・アイボリーランス、白い象牙を体から延ばす。攻防一体の魔法

 ・エレファントライブ、象の身体能力を身体に憑依させる魔法。象牙魔法が半獣魔法と言われる所以。

 ・ビーストシールド、象牙で盾を作る上に、自分のパワーも上げて守る。二重詠唱でよく使う。

 ここまでが象牙魔法。


 途中、フィナも補足をするようにコメントしてくれたが、やはりフィナは説明が大雑把だ。

 クロエの観察眼と言語化する能力は、フィナに比べて優れていると思う。


「ちなみに、ラミアは魔法を二重詠唱する技術がある。ビーストシールドを完全体得しているから、それを盾にして、今から言う長剣魔法で戦うのがスタイル」


「完全体得?」


「魔法を宣言もせず、結界描画もせずに使えるようになることを完全体得と言うの。私の飛行魔法のようなものよ」


 なるほど、そんな用語まであるのか。

 俺は頭の中で情報を整理する。


 魔法を使うためには、普通、結界を描画して、魔法の名前を宣言する。描画と詠唱が必要。

 しかし、描画を描かないで宣言できる無描画。

 〇〇魔法、という頭の言葉を省略する略詠唱。

 完全に言葉を省略する無詠唱。


 そして、無描画と無詠唱を組み合わせ、何もせずに魔法を発動する、別名完全体得。


「私も、完全体得してみたいんだよね! かっこいいじゃん!?」


 確かに、水魔法! と宣言して、目のまあの虚空に指で描きながら発動するよりは、よっぽどかっこいい。


「ま、そこら辺はあなたが知る必要もないわ」


 クロエはそう言うと、次に長剣魔法を俺に教えた。


・ギガントブレード、超重量で人間の身長ほどの剣を作り出す。ラミアの攻撃モードの時の件

・レイピアソード、軽量で細身の剣、ラミアの防御モードの時の剣。


「ラミアの魔法は確かこれだけ」


 フィナの魔法の数よりも多いが、クロエの魔法の数よりも少ない。


「ちなみに、ラミアとクロエはどっちが強いんだ?」


「クロエちゃん!」


 フィナが洗い物を終えて、こちらに近づいてくる。


「里の中でやった修行模擬戦の結果はね。ま、本気で殺し合っているわけではないから参考情報程度に思って」


「やっぱりクロエって強いんだな」


「あなたに言われると嫌味に聞こえるから、二度と強いって言わないでね」


 気持ちは分かるがストレートすぎる。


「じゃ、出発する前に作戦会議を始めよう」


 俺がこたつ机の前に座った2人を見ると、フィナとクロエは真面目な表情で俺を見る。

 

「まず、フィナ。普通の魔法使いを相手にするより、厳しい戦いになると思って欲しい。本気で叩き潰す気でいかないと、フィナもクロエも、命を奪われるより酷い目に遭うことになる」


 クロエがごくりと息を呑む。

 フィナも少し緊張した面持ちで頷いた。


「その小林と戦う作戦だが。基本的にフィナとクロエは距離を置いて戦って欲しい。相手はさっきも言ったお札を持ってる」


 そして、俺はフィナを見て問いかける。


「フィナは3個目の魔法、湧水の羽衣を習得したってことで良いんだよな?」


「うん! 結界の書き方を変えたから、発動率100パーセントになってるよ!」


 フィナは誇らしげに胸を張って答えた。


「じゃあ、次はクロエ。魔法と宝具を全て申告してくれ」


 クロエはギョッとしたように顔を上げ、嫌がるような表情を見せた。

 その様子を踏まえ、俺がフィナをちらりと見ると、フィナは言う。


「クロエちゃん、言いたくないなら言わなくて良いからね」


 いや、言ってくれと言ってほしかったんだが。


 と、思った時、クロエは小さな声で自分の情報を話し始める。


次回の投稿予定日は1/24(土)です。

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