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やがて君を魔女にする  〜異能ゼロの俺が、最弱魔法少女を“勝てる形”に組み替える話〜  作者: 蒼久保 龍
一章2部 幻影魔法が背負う過去

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80話 魔女狩り組織 黎明の支配

【前エピソードのあらすじ】

フィナがクロエを引き留める中、俺の携帯に真司澪奈から携帯電話に連絡が来る。

「もしもし」


 澪奈の声が響く。


「ありがとう、何か分かったか?」


 俺がさっそく本題に入ると、澪奈は意地悪な声音で言う。


「って、簡単に教えるわけなかろ」


「はあ、そんなことかと思った。要件はなんだ」

 

 澪奈の引いたような声が聞こえる。


「いやいや冗談やけん。そんな性格悪くなか」


 彼女は困ったような声音で言った。


 少しくらい条件をつけても良いのに、とは思いつつも、素直に好意を受け取ることに。


 ふと、こたつ机に置いてあるご飯が目に入る。


 置きっぱなしにしていたため、完全に冷めてしまっている。

 が、レンジで温めれば食べられそうなので、俺は食器をキッチンに持って行きながら、澪奈の話を聞くことにする。


「えーっと。最近、魔法使いの協力者でありながら、大量に宝具を受け取っている要注意人物の名前はあった」


「……そんな情報、どこで仕入れるんだ」


「それは秘密。でも、あんたが探してるのは小林ユウサクって名前であっとる? 宝具を受け取る見返りに、1億円以上魔女狩り組織にお金を流し込んでいるってさ」


「小林、1億円、か」


「思い当たる節があると?」


「ああ。なんか宝具を魔女狩りから何千万円で買ったとか言っていた」


「ビンゴ。そいつは――。って、おじいちゃん!?」


 耳がキーンっとなるような大声に、俺はスマホを耳から離す。


「勝手に部屋に入ってこんとって! は!? うるさい! くたばれ!」


 なんか、電話の向こうでいきなり祖父と喧嘩をし始めた。

 しばらくケンカが続きそうなので、俺はご飯が盛られた茶碗と野菜炒めの盛られた皿にラップをかけて冷蔵庫に入れる。


 そして、ふとフィナとクロエの方を見ると、フィナはクロエをベランダから家の中に入れようとしていた。


 クロエは俺の方をじっと見ていたが、俺がそちらを見た瞬間、目を逸らす。


 一方、電話口の澪奈は祖父を無理やり追い出したらしい。


「とっとと出ていって。しっしっしっ」


 そんな声が聞こえた数秒後。


「ごめんごめん、お待たせ。それで――、なんの話だっけ」


「魔女狩りから宝具を買った男の話だ」


「そうそう。それで……いや、ちょっと待って」


 再び、電話口から澪奈の声が遠くなる。

 遠くから、ガラガラっと障子か何かを開ける音が聞こえた直後、遠くから声が響く。


「やっぱり!? 聞き耳立てるとかきもっ! あっち行って!」


 おじいちゃんの声らしき声も聞こえるが、それ以上の剣幕で澪奈が怒っているため聞き取れない。


 バタン!


 何かを閉める音が響いた後、電話の近くに澪奈が戻ってくる。


「はぁ、はぁ。お待たせ」


「なんだか大変そうだな。家族か?」


 俺が炬燵机の前に座り直してからそう尋ねると、澪奈は小声で言う。


「そう。私のおじいちゃんは魔女とか魔法使いとか大っ嫌いやけん。こんなことしとるのがバレたら怒られるんよ」


 おじいちゃんも、魔法使いなどを知っている側の人間らしい。


「すまん、ありがとう」


「気にせんとって、こっちの事情やけん。で……、宝具を買った男の話ね。その男は、世間的には名を出していない魔女狩り組織、黎明の支配っていう組織から大量に宝具を購入してる」


「黎明の支配?」


 なんとも新興宗教チックな名前だ。


「うん。それが今日の深夜、小林ってやつがその組織と取引をするらしいけん。場所は文化街商店街の近くなんやけど、位置情報を送信する履歴が残るのも嫌やけん、もし行きたいなら今から案内するわ」


 文化街商店街は、この街のかなり中心部にある商店街だ。


 福岡市内まで行くためのJRと西鉄の間にある商店街。

 昔はかなり栄えていたと聞くし、今も水天宮の祭りなどで街に画期を彩る昔ながらの商店街らしいということくらいしか知らない。


 夜はまた、異なる雰囲気になり、昔と変わらぬ活気があるらしいが、俺は夜にあの街へ行ったことがない。


「今日の夜か……、でも澪奈がついてくるのは危険だろ。本当に大丈夫か?」


「まあ、そこらへんは慣れとるけん任せてん。じゃ、今日の夜10時に西鉄駅前でよか?」


「ありがとう」


 どんな進め方を考えているかは不明だが……、ここまでサービス盛りだくさんなのは、やはり疑念が残る。


 俺もクロエに偉そうにアドバイスをしておきながら、本質的には無償の依頼を怖がっている。

 クロエほど極端に頼みごとを嫌うわけではないが、どうしても裏を読んでしまう癖がある。


 そこからは中身のない会話をして電話を切り、どうしようかと考え始めようとしたところ、フィナとクロエがこたつ机の向かいに並んで座っていた。


 そして、フィナが小首を傾げて尋ねてくる。


「誰と話してたの?」


「俺の知り合い。クロエの協力者に関する情報をもらった」


「え!? どういうこと!?」


 俺は澪奈のことと、澪奈に聞いた情報を共有する。


 クロエの協力者は魔女狩り組織にとんでもない金額のお金を献金して、宝具を買っていること。

 そして、今夜、その魔女狩り組織で取引が行われる予定ということ。


「フィナとハルをこれ以上巻き込むなんて……」


 そう言い淀むクロエに対し、フィナはにっこりと笑う。


「助けて欲しいって、言ったじゃん」


「む」


 クロエは両眉を下げ、困ったような表情に変わり、そのまま恐る恐ると言った様子でフィナに言う。


「その、私、助けて欲しいって言ったけど、その、やっぱり私のせいで、フィナやハルが危険な目に遭うのはちょっと……」


「クロエちゃん」


 フィナが隣に座るクロエの両手を掴んで言う。


「何?」


「私を不幸にしたくないからじゃなくて、クロエちゃんは自分が傷つくのが怖いから、私たちを止めてるでしょ」


「なっ……」


 クロエの身体がぴくりと跳ね、目を丸くする。


「私の幸せはクロエちゃんと一緒に楽しく修行をすることって言ったよね」


「そ、それは」


 確かに、そう言われれば、そうだ。


 俺が言語化できていなかったことを、フィナは言った。

 クロエの行動は、悪く言えば他人を庇うようなフリをして、結局は自分が傷つくのが怖いだけ。


 フィナはじっとクロエを見て言う。


「私の幸せは私が決める。そして、今の私は、クロエちゃんを助けられることで喜んでる。だから、あとはクロエちゃんが勇気を出すだけ」


 すると、クロエは俯いたが、数秒後、小さな声で言う。


「勇気……」

 

 しかし、フィナはそう言ったクロエの頭を撫でる。

 やっぱり、フィナの方が歳上感があるな。


「でも、今からすぐ行くより、少し休んだ方が良くない? ほら、クロエちゃんも――」


 クロエを気遣うように言うフィナに、俺は即答する。


「いや、あの小林という男は、用意する時間を与えれば与えるほど厄介になる。お金でいろんな武器を買うからな」


 すると、クロエも小さな声で言う。


「確かに、取引現場に行くと言うことは、また宝具を何か手に入れようとしている可能性が高いし……」


 目元は腫れているが、すっかり涙が止まったクロエは、静かにそう言った。


「それに、家以外の場所で会うことができる機会は重要だ。あいつの家は宝具が多そうだし、攻め込むのは難しそうだからな」


 正直、俺も朝から動き回っているから体力的に辛い部分もあるが――、それでも今日、動くべきだろう。


「でも、懲らしめるってどうするの?」


「あいつがどれだけのお金持ちかは分からないが、あいつ自身が強いわけじゃない。宝具を全部奪えば戦闘力は下がるだろうし、お金を奪えば宝具を買えなくなる」


 例えば、通帳を奪うなんて犯罪行為だが、今はそうも言ってられない。

 俺を殺すと脅しているんだからな。こっちも殺す気で行かないと、殺される。


 本質的な問題の解決にはつながらないかもしれないが、それが今打てる最善策だ。


「でも、ハルにも人間の友達がいたんだね」


 フィナは完全に悪気なさそうな顔で俺に言う。

 友達ではないが、面倒くさいので今は友達ということにしておこう。


「確かに、あなたって友達少なそうだものね」


 クロエはうんうんと深く頷きながら言う。

 きっと、こいつは悪気があって俺に言っている。


 ……お前にだけは友達少なそうとか言われたくない。


 ただ、名前を失って以来、友達が少ないのは事実だ。

 最近は関わる人が増えてきたから、少しだけ友達ができた。


 しかし、友達と言うものは難儀だ。いつから友達でいつから友達じゃないかが分からないから困る。

 好感度ゲージが見えたら便利だろうに。


「友達募集中だぞ」


 俺が冗談半分でクロエに言うと、クロエはキョトンとした顔で言う。


「え、私たちって友達の友達だから友達じゃないの?」


次回の投稿予定日は1/17(土)です。

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