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やがて君を魔女にする  〜異能ゼロの俺が、最弱魔法少女を“勝てる形”に組み替える話〜  作者: 蒼久保 龍
一章2部 幻影魔法が背負う過去

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70話 宝具のレプリカ

【前エピソードのあらすじ】

エミリーはクロエに話を聞こうと言い、フィナを連れて家を出て行ってしまう。取り残された俺は、何か情報を得られないかと思い、澪奈に連絡をすると、何かを知っているような反応が返ってくる。


「ああ、なんか、普通の協力者とは勝手が違うらしくてな」


 俺が指示を出さないと、フィナは魔法が使えない。ということを隠して言う。


「……噂は聞いたことがある。最近、やたらと宝具のレプリカが出回るようになったってね」


「レプリカ?」


 この間、フィナに関する偽の噂を流した手紙も、確か宝具のレプリカだって話だったか。


「はあ、そこは知らんと? 魔法使いが使う宝具を、人間が使えるように改良したんがレプリカ。噂を聞いたことはあるけど、本物は見たことがないっちゃん。ちなみに、その一般人男性は新興宗教と関係あったりせん?」


「ある。魔女狩りから買ったって言っていた気がするな」


「そう……。それなら、ちょっと時間をくれん? 助けになれるかも」


 澪奈は思いの外、俺に協力的だ。

 何かを調べてくれるらしい。


「本当に良いのか? 俺はお前に返せるものがないぞ」


「いいと。――には期待しとらんけど、あなたのパートナーの魔法使いさんには、いざという時私を守って欲しいから。恩を売っておきたいし」


 うーん。よく分からない。

 例えば、澪奈は定期的に何者かに襲われたりしているのだろうか?


 進んで引き受けて助けようとしてくるのは、やや怖いな。

 いろいろ聞かないと、いずれ大変なことに巻き込まれるような、嫌な予感がする。


 が、今は目の前の問題に集中するべきだ。


「また連絡するけん」


「了解、ありがとう」


 電話を切る。正直、澪奈が頼りになるのは嬉しい誤算だ。


 さて、俺にできることはこのくらいか……。

 本でも読んで待っとくか。


 ふと、俺はクロエが置き忘れた荷物が目についたが、触らないでおく。

 フィナに怒られた経験があるからな。



 2人が出て行って数分後の出来事だった。


 俺がフィナを待つため部屋で本を読んでいると、鍵を閉めなおしたの玄関の扉が、何者かによってガチャガチャと触られた。


 まーた、来訪者か。


 しかし、チャイムは鳴らない。


 嫌な予感がする。敵かも知れない。

 フィナもエミリーもいないから、居留守を使うか……。


 っていうか、この状況。思えば俺が一番ピンチじゃないか?


 俺は部屋の中、いつもフィナが寝ている押し入れを開け、フィナが寝ていない下側の荷物を少しだし、その中に隠れた。


 そして、いつものエアガンと、先ほどクロエに持たせて持って帰ってきたランタンを握りしめる。


 自室とリビングを繋ぐ扉はあえて開けておく。


 と、その時。窓のカギが開きっぱなしだとそこで気づく。


 が、完全に隠れてしまったうえ、顔は出さない方が良いだろう。


 ベランダに簡単に上がられることは無い、はず。


 玄関から音は聞こえなくなった。

 部屋はシーンと、音が無くなる。


 と、今度はベランダから音が聞こえる。


 ……って!? 

 ここは2階だぞ。よじ登るのはかなり難しいはず。


 窓の外、1階から音も何も聞こえなかった。


 そんな状況で突然、2階のベランダに人の気配を感じるなんて……、全く想定していなかった。


 俺はフィナがいつも寝ている押入れの下の段に隠れているため、誰がベランダにいるか分からない。

 息を飲む。

 

 ガラガラ、と窓が開く。


 俺は、深呼吸をしてランタンのスイッチを押す準備をする。

 カーテンがひらひらと舞い、向こう側の人影だけが見える。

 その人影は――、女性?


 そして、その人影がカーテンから出た。


 その女性の口元から下だけが見え、窓から入ってきたのがクロエだと分かり、俺は納得する。


 飛行魔法でベランダに回って入ってきたのだろう。


 俺は肩を撫で下ろし、彼女に声をかけようとした。

 その時だった。


 ガチャ。


 何故か、俺の家の玄関の扉の鍵が開いた音がする。

 あれ、鍵を閉めてなかったか……?


 すると、クロエの声が聞こえた。


「ごめん、忘れ物したから窓から、……って、な、なんで……」


 玄関とダイニングをつなぐ廊下の方から、ドタバタと音が聞こえる。


 音しか聞こえない。


 ドサッと、何者かが地面に転んだ音が聞こえる。

 そして、聞き覚えのある声が響く。


「クロエちゃん。迎えに来たよ」


 非常にねっとりとした、クロエの協力者の声。


 ハアハアと、息が上がっている男性の呼吸音が聞こえる。


「な、なん、で、あなたが、ここ、に」


「もう、使えない魔女狩りどもに金を払うのはやめたんだ。あいつら、何回も失敗するから」


「そ、それに、なんで、このランタン……、さっき私が――」


「このランタン、1つ1200万くらいするんだよ? さっきの1つ目はどこ? 返して」


 みしっと、フローリングの音がする。彼の体重で、歩くたびに地面から音が鳴っているらしい。


「くそっ」


 クロエの声が響くとともに、フローリングの上を走る音が響く。


 おそらく、室内での戦闘を避けようとしたのだろう。


 室内での戦いは部が悪いということを、彼女自身もわかっているらしい。


 小林という名の協力者は、魔法を使い宝具も使う。


 さらに、彼はクロエの致命的な弱点である、男性だ。


 六門生クロエよりも強いということは、おそらくそこら辺の魔法使いよりも強い。


 さらに、彼はお金で魔女狩りも味方につけているのだから、普通の魔法使いより遥かに厄介だ。

 

 だから、俺はクロエの判断が正しいと思う。

 窓は空きっぱなしだし、例えランタンの光があろうとも、あの男はかなりの巨漢だ。


 左足を怪我しているとはいえ、全力で動かせばこの室内からは逃げ切れるに違いない。

 俺もここから動かないほうが良いだろう。


 そう思っていた、が。


 クロエの足音が、突如止まる。


「か、身体が――」


 そして、そんな声も響く。


「いっつもいっつもすぐに逃げ出す悪い子のために、新しい道具を取り寄せたんだ。クロエちゃんのために、2800万円も払ったんだからね」


「こ、このお札……、なんで……」


「ほら」


 男がそう言った瞬間、ドサッと身体が倒れる音が聞こえる。


「ふふふ、クロエちゃん、逃げられるものなら逃げてみてよ。今度はぜーーーったいに、離さないから」


「な、なんで、なんで!?」


 また、ドタバタと音が聞こえるが、3秒ほどたつと、音がピタッと止む。

 男が歩く音が、みしっとフローリングから響く。


「う、動いて! ねえ!」


「無駄だよ。このお札でクロエちゃんの影を縛ったんだ」


「な……!?」


 みしっ、みしっと男が歩く音が聞こえる。


 室内戦を避けるという選択肢を採用してもなお、クロエは小林に負けたらしい。


 おそらく、ダイニングに入ってすぐの位置か?


 俺の位置から見ると、押し入れを出て、開けっ放しにした扉の向こうに2人がいると思われる。


「さて、クロエちゃん。一緒にお家に――」


「いやっ! なんでっ! なんで私を狙うの!?」


「狙うなんて……、僕は君の協力者だよ? 君と一緒に暮らしたいんだ」


「嫌って言ってるじゃん! 最初会った時から、一緒に暮らさないって!」


「なんで!? 僕は君にしてあげられることは何でもする! 心地よい布団も、美味しい食事も、全部用意してあげられる! 君に相応しい協力者になれるよう、いろんな道具も買い集めた、君のための武器も取り寄せた」


「話聞いてる!? 嫌って言ってるじゃん! なんでわかってくれないの!? 私はあなたに何も求めてない! 食事をくれとも、家に居させてくれとも言ってない! ただ、放っておいて――」


 そこまで言ったところで、パチンと、乾いた音が響く。


 クロエの声が、止まる。


「僕が、君を幸せにしてあげるって、言ってるんだ! 君と同門の象牙の魔法使いは、魔女狩りに狩られて魔法を抜かれたんだよ!」


 やや苛立ったような、男の声。


 しかし、同門の象牙の魔法使い――?


予告通り、年末年始は一週連続投稿です。

次回の投稿予定日は12/28(日)です。

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