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やがて君を魔女にする  〜異能ゼロの俺と落ちこぼれ魔法使いの現代異能成長譚〜  作者: 蒼久保 龍
一章 六門生誘拐事件

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51話 高校科学部の活動

【前エピソードのあらすじ】

学校で澪奈のパシリをしていると、たまたま同級生の優斗と会う。

彼や他の同級生と澪奈の話をしていると、「澪奈は敵も多い」という話を耳にする。


 確かに、澪奈は敵味方がはっきりと別れそうだ。


 何より女性受けは悪いと噂で聞いたことがあるし、教室の雰囲気からも感じる。


 最近は、学校という小さな社会でコミュニケーションをとることが多くなった。


 他人との会話から得られる知識は興味深いものが多い。


 俺は名前を失ってから、他人とのコミュニケーションを軽視しすぎていた。


 俺は澪奈について、同級生の情報を収集して少しは詳しくなった。


 その最たる情報は、彼女が学年中の女子から嫌われているということだ。


 どうやら、澪奈は自称サバサバ系女子であり、学年のどの女子グループにも所属していないとのこと。


 あいつは放課後、校内の女子とはまったく遊ばず、校外の女子や校内外の男子といつも遊んでいるらしい。


 その情報は俺が校内の女子に直接聞いた情報ではないが。


「じゃ、またな! 澪奈に変な虫がつかないか監視してくれよ」


 俺は蚊取り線香か何かなのか。と、思いつつ、俺は「じゃ」と、合わせるように言った。


 ・


「ずいぶん遅かったじゃーん」


「すまん、ちょっと駄弁ってて」


 化学実験室の中。目の前にいるのは真司澪奈。


 こいつが学校で一二を争う男子からの人気者女子。


 なお、女子からの人気はない。というかむしろ嫌われていると思われる。


 科学部は澪奈以外にも部員がいるらしいが、俺は他の部員を見たことがない。


 部室はなく、化学実験室が活動場所。


 まともな活動はしていない。


 活動は、部費で買ったお菓子を食べながら、澪奈の愚痴に付き合うという内容。


 俺は缶コーヒーを化学実験室のガス栓とシンクが付いたテーブルに置く。


 薬品っぽい匂いがするし、こんな場所でのんびり過ごすのはやや居心地が悪く感じるが、澪奈はここを自分の縄張りにしている。


 なんと澪奈は入学したての頃からずっとここで愚痴を発散する会をしているらしい。


 俺の他にも被害者がいるらしいが、人数を含め教えてくれない。


「はぁー、でさ! 私の前の席の女が私の顔見て、コソコソアイプチがズレてるとか聞こえる声で言っとると! はぁー、自分の眉毛ば見んって言いかけた」


 こんな愚痴に毎日付き合わされる俺の身になって欲しい。


 いつかバチが当たるぞと言わんばかりの口ぶり。


 これが、学園のアイドルなのだから、男は本当に見る目がない。


 いや、見る目がない、というより外見しか見ていない、と言うのが正しいか。


 真司澪奈は、女子高生ながらメイクもきちっと毎日欠かさずしている。


 制服も着崩していてスカートも短いから男の目を惹きやすい。


 しかしながら、完璧な女子高生も、中身は誰にも見せられない鬱憤や愚痴で固められているようで、その矛先はあろうことか俺へ向いている。


「でさでさ! 私は――」


 俺が天文学に関する本を読もうとした瞬間、澪奈は俺の本を上から取り上げた。


 彼女は制服を着崩しているため、ワイシャツを第一ボタンまで開けている。


 そんな彼女が座っている俺を覗き込む姿勢をとるので、首筋の下がチラリと見えそうになる。


 彼女の胸はそこまで大きくはなく、フィナと同じくらいかやや小さいくらいか。

 そのため、隙間から谷間が覗くことはない。


 だが、俺は念のため、紳士的に目を逸らした。


「ちょっと、聞いとっと!?」


「聞いてる聞いてる」


「本を読むな!」


「大丈夫。心を込めて聞くから」


「本を読みながら歯許さん。そもそも、私が何の話をしとったか、分かるん?」


「真司のアイプチがズレてたんだろ?」


 俺がそう言うと、澪奈は俺の脳天に思い切りチョップを入れた。


 ガンッと、頭のてっぺんから真下へ向けて衝撃が走る。


「私の、メイクは、完璧! ほらほら見てん! 私の目、目!」


 何が言いたいか分からないが、俺は脳天をさすりながらその目を見る。

 澪奈の目は、とてもナチュラルな二重で、ほんのりピンク色で可愛らしい。


「確かに、綺麗な目だな」


 適当に言う。


「そう。私は毎日完璧。ズレてるのはあの女とあんたの頭。わかった?」


 澪奈はそう言うと、科学実験室のパイプ椅子に座る。


「はぁ。せっかく新しい発散先を見つけたと思ったんに、愚痴ってもまともに聞かんし、聞いたと思ったら正論しか言わん。共感能力ゼロ」


「ん? 次は誰の話だ?」


 俺はカバンから新しい本を取り出しながら、率直に尋ねる。


 と、澪奈はわざわざ俺を指差して言う。


「あ、な、た、の、は、な、し!」


 共感能力ゼロとは、心外だ。


 今も文句の一つも言わずに、黙って本を読んでいる。


「はぁ、あんたは面白い話ないと?」


 そう尋ねられたので、俺は本を閉じ、澪奈の目を見て言う。


「なんで、俺が協力者だって知ってたんだ?」


 すると、澪奈はため息をついてから答える。


「それは何度も言った。私は巫女さんやけん」


「じゃあ今度、真司の家に行っていいか」


「は? 嫌」


「なんで」


「……、へえ」


 澪奈はそう言うと、ニヤリと笑う。


 バカにされても良い。


 俺はどうにかして澪奈が何者なのかを知りたかった。


 今、俺は情報量で澪奈に負けているから、毎日放課後に彼女の愚痴を聞き続けているのだ。


 澪奈もそれをわかっているからか、全く隙を見せてくれない。


「協力者を知っていると言うことは、魔法についても知ってるんだろ」


 俺が尋ねると、澪奈はニヤリと笑う。


「そ。何者かの魔法使いに協力していることは知っとーよ」


 フィナのことはまだ、知られていないらしい。


「澪奈は魔法のような不思議な力を使えるのか?」


 俺が尋ねると、澪奈はぴくりと反応した。


 そして、ため息をついてから答える。


「何回、同じ質問すると? 私は普通の女子高生。実家が神社だから知っとーだけ」


「魔法使いについて知っている時点で、普通じゃない」


 そう言うと、澪奈は顎に手を置いて考える仕草を見せて、ニヤリと笑いながら言った。


「何も知らんとね」


「え?」


 俺がそう答えると、澪奈は一言、俺に言う。


「それなら、私の美しさを例えてみて」



 思考がフリーズし、「は?」と呟いてしまう。



「だから、私の美しさを例えてみて」


「なんで」


「上手く例えられたら、私と自宅デートができるボーナスチャンス」


 何故か分からないが、澪奈の家に行くチャンスをもらえたようだ。


 仕方ない。

 俺が頭を捻っていると、澪奈は残酷なことを言う。


「回答には私が好きなものが入っていないとダメだから」


「は? 真司の好きなものなんて知らなーー」


「私の好きなもの、あなたが科学部に入ってから6回くらい言った気がするんだけどなー。ボーナス問題だなー」


 澪奈はニヤリと笑って、俺にそんなことを言う。


 もちろん、俺は澪奈の話を真面目に聞いていたことがないから、覚えていない。


「あーあ。私の話をちゃんと聞いとらんけん、そうなるったい」


 残念ながら、頭を捻っても思い出せないので適当に答える。


「んー、そうだな。澪奈には月が似合うと思う」


「ほお、月?」


「あぁ、それも満月だ。秋の満月の下、風に揺れるススキの中で、君が巫女服を着て立っていれば、惚れない人はいないんじゃないか」


 年齢よりも若干大人っぽく見える彼女は、そのシチュエーションが抜群だろう。


「って、いやいや何言ってんの。私が映える瞬間じゃなくて、私の美しさを例えてって言ったっちゃけど」


「あー、そうだったな。じゃあ薔薇の花」


「適当すぎるわ!」


 澪奈はそう俺に突っ込むと、スマホを差し出してきた。


「ま、私の好きなものは当てたから、ほら、連絡先」


 何やら、俺は澪奈の好きなものを当てたらしい。


 天才か?


「ちょーっと、明日からしばらく忙しいけん。ゴールデンウィークの……、あ! そうだ。最終日とかどう? 私の神社で!」


「了解。今晩、メッセージで調整すれば良いか?」


 俺がそう言うと、澪奈は驚いたように言う。


「そんなに私との自宅デート……、いや、神社デートが楽しみ?」


「電話のほうが楽か?」


 俺が無視をしてそう言うと、澪奈はため息をついてから言う。


「無視すんな。そっち関係の話はメッセージで残さないほうがいいけん、調整するなら電話にしい。っていうか、部活中に話せば良かろ?」


「じゃあ、どうでも良いことだけメッセージで送るぞ」


「どうでも良いことは送らんで」


「じゃあ何で連絡先をくれたんだ」


「それは、今後色々あるやろうし」


 澪奈はそう言うと、席を立った。


「じゃ、今日は帰るわー。神社デートの話は明日以降ねー」


「なあ、やっぱりデートっていうの、やめてくれないか」


 俺がそう言うと、澪奈はニヤリと笑って廊下の方へ出て行った。


 まさか、クラスの奴らに言ったりしないよな……。


 俺は彼女の連絡先を見つめてから、俺は一人で化学室の片付けを始める。


 て言うか、結局、あいつの好きなものって何だったんだ?


 まあ、別に知らなくても良いか。



 それからの帰宅道、俺はげっそりと痩せたクロエを見つけた。


 部活を始めてから、帰宅はこれまでよりも遅くなっていたし、今日はさらにバイト先のスーパーに寄り道して買い物をしていたため、時刻は19時を回っていた。


 他人と会話をしなければならないことが増え、ほんの少し、以前よりも毎日の濃度が増したように感じる。


 ふと、背負っているクロエの様子を見る。


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