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やがて君を魔女にする  〜異能ゼロの俺と落ちこぼれ魔法使いの現代異能成長譚〜  作者: 蒼久保 龍
序章3部 夢を賭けた一戦、廃工場の死闘

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44/60

44話 自分の思いを曲げないこと

【前エピソードのあらすじ】

マリアとの激闘の翌朝。フィナを家から出ないよう言いつけ、俺は学校へ向かう。

すると、いじめをしていた金髪男は、俺ではない別の男を標的にしていた。

それを見た俺は、柄にもなく声を出していた。


 俺がそう言うと、教室の空気が凍りつく。


 触れてはならないものに触れたような感覚。


 その金髪男はギロリと、力強く俺を見る。

 が、俺は全く臆さずに言った。

 

「まだ、そんなくだらないことをしてるのか」


 すると、金髪男は笑う。


「ちょっとツラ貸せよ」


 が、俺は出来る限り覇気を込め、脅すように言う。


「ツラ貸せっつーなら、覚悟決めろよ」


 俺は決死の覚悟で、本気で、続けて言う。


「俺はお前らが屋上から尻尾巻いて逃げたあの女よりも強いやつと喧嘩をした。結果、俺はこのザマ。だけど――、捻挫程度で済んでる」


 すると、教室の一角から小声がする。


「一昨日の屋上不審者騒動か?」


「不審者にやられたあいつ、脳震盪で入院したって……」


 金髪の男は俺の捻挫した足をチラリと見た後、息を呑む。

 そこに、考える隙を与えないよう俺は言う。


「喧嘩するってんならタイマン張ってやる。けど、本気で命賭けろよ」


 所詮、あの程度で逃げ出す程度の男だ。

 俺の読みでは、少し脅せば何も言えなくなる。


「おい、あいつやっぱり――、やめとこうぜ……」


 金髪男の後ろから、大柄な男が声をかけた。

 彼は思ったより気弱に、そんなことを言う。まるで昨日までの態度と違うが……。


 それでも、金髪男はまだ動かず、俺の方を睨む。


「クラスの底辺のくせに、舐めとんか!? あぁん!?」


 そう言いながら俺の方へ近寄ってきて、自慢の筋肉を見せつけるよう袖をまくってから、胸ぐらを掴まれそうになる。

 が、すぐに言葉が口を出る。


「弱いものいじめなんて、ダサいことすんじゃねえ」


 俺は迷いなくそう言った。

 すると、不意に後ろから声が響く。


「カズくん、その人に手を出さないほうが良いよ」


 カズとは俺の名前ではない。

 おそらく、金髪の名前だろうが、俺はこれまで何にも触れずに生きてきたから、何もわからない。


 分かることは、本で読んだり教科書で学ぶ机上の空論の知識だけ。


 俺は所詮、その女の声がどんな名前か、目の前の金髪がどんな名前なのかわからない。


 俺はクラスの他人の名前なんて全く覚えていない、はずだった。


「レナてめぇ、俺に逆らうってのか? あぁ?」


「私も薄々感じとるんよね、カズくんたちのやっとーこと、見とられんって」


 女の方の声は知っていた。


 女の名前は真司澪菜。

 1年の時からずっと、いじめられている俺を陰でからかってきた女。


「そ、そうだぞ。カズ、いじめは良くない」


 もう1人、男の声が響く。


 すると、もう何人か、男子は澪奈に追随して発言する。


 なんとなく、澪奈の方を見ると俺はダサい気がするので、ずっと金髪の顔を見続けている。

 毎回、澪奈は俺に絡んできたから、その姿はよく覚えている。


 全体的に危うい雰囲気がある女子だ。


 どこか、制服のワイシャツを緩く着たり、スカートを極端に短くしたり、緩い感じな雰囲気で、男の目を惹く要素がつまっているような女子だ。

 

 そして、それだけではなく、目鼻立ちも整っていて、どこか大人っぽく華やかな雰囲気もある。

 

 依然、俺は胸ぐらを掴まれていたが、真司麗菜が一言そう言ったことで明らかに教室の雰囲気が変わる。

 複数の男子が俺の援護を行う。

 全員が金髪男やその取り巻きの方を見て攻撃をする雰囲気。


「ちっ」


 金髪男は俺の胸ぐらから手を離して、立ち去っていく。

 と、そこに追い打ちするよう、澪奈が言う。


「カズくん、そいつに手出さん方が良いけん。武道をしとって、なかなかの実力者。これ、巫女さんからの本気のアドバイスね?」


 ん? 


 なんで俺が武道を習ってたって知ってるんだ?

 

 金髪男は無視をして出ていく。

 が、その取り巻き、赤髪の大柄な男は去り際にこんなことを言っていた。


「やっぱり、あいつに手出しはしないほうが――」


 最後まで聞き取れなかったが、もう俺に手出しをしないでいてくれると大変助かる。


 しかし想定外だな。

 不思議なことに解放され、俺はほっと息をついている。


 正直、ボコボコにされるものだと思っていた。


 それを承知で言った。


 理由は、俺がそう思ったから。


 何とか金髪男をやり過ごしたので、俺はいじめられていた眼鏡の男に声をかける。


「大丈夫か?」


 すると、その眼鏡をかけた男は、俺に誠心誠意、礼儀正しく頭を下げた。


「ありがとう! その、俺、逆に、君がいじめられていた時、何も言えなくて……」


「気にしないでいい」


 俺がそう即答すると、後ろから声が響く。


「ちょっと、――くん」


 真司澪奈は誰かの名前を呼んだ。


 しかし、名前の部分だけ聞こえない。聞き取れない。


 この場合、大抵は誰かが俺の名前を呼んだパターンだ。


 俺は後ろを振り返り、まるで名前を呼ばれたかのように反応する。


「どうした?」


「――くん、私の勘だけど。あえていじめられとったん?」


 彼女がわざとらしく大きな声で、わざとらしい顔を作ってそう言うと、教室が静まり返る。


 澪奈はきちんと俺の方を見ている。やはり、俺の名前を呼んだらしい。


 振り返って彼女の顔を見ると、彼女は文句なしに美人だ。


 フィナとも、クロエとも違う雰囲気。

 スッと伸びる美しい二重と、艶やかな唇、それは彼女のメイク技術によってさらに映えている。


 フィナやクロエより短い、いわゆるボブカットの黒髪は全て綺麗に縦に並んでおり、手入れされていることがわかる。


 そして、特徴的なのは全校生徒の誰よりも短いスカート。


 彼女はクラスの女子全員から疎まれているように見られているが、一方、男子生徒の注目も集めている。

 まるで、両極端な反応だ。


「どうしてそう思うんだ?」


「いや、――くんって喧嘩強かろ」


「めっちゃ弱い」


 俺は正直に、かつ、周囲のクラスメイトの口調を真似てそう言い返す。

 そして、もうすぐ始まる授業の準備をしようと、澪奈から目を切って椅子に座った。


 すると、澪奈はわざわざ俺の席の目の前まで歩いてきて、机に手を置いて言う。


「どうして、あえていじめられるような真似をしとったん?」


 俺がそう言うと、澪奈はわざとらしく顎に手を当てて考える様子。

 一方、俺は周囲の男子達の視線が痛くて痛くて仕方がない。


「俺のことは構わないでくれると助かるんだが――」


 俺がそう言いかけたところで、澪奈は俺の耳元でボソッと呟くように言う。


「あなた……、協力者でしょ」


 俺はその言葉に不意を突かれ、思考が停止した。



次回の投稿予定日は10月15日(水)です。

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