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ヴァンプスレイヤー・ダンピール  作者: 龍崎操真
Extra EPISODE3

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Hunter's rustplaatsの一日 前編

 Hunter's rustplaats。

 表向きは普通のオランダ料理をメインにした食事ができ、裏では金をもらう事で交魔市に巣食う吸血鬼を狩る掃除屋達の窓口と、2つの顔を持つレストランだ。

 本日はそのHunter'srustplaatsの一日の様子をお届けする。



 

 AM 7:00

 毎日の始まりは店主による掃除から。軒先に落ちているタバコの吸い殻などのゴミを箒でちりとりへ集め、空き缶を拾い集めると、アルバートはうんざりした表情を浮かべた。


「まったく毎日毎日……! ゴミはゴミ箱へ捨てるのがマナーだろうが……」


 掃除を終えたアルバートはブツブツと愚痴をこぼしながら店の中へ入っていった。




 AM 7:30

 アルバートがブラックボートの看板を店先に設置して、チョークを走らせ始める。どうやら、本日のオススメメニューを書いているようだ。書き終わった後、腰に手を当てて身体を伸ばしていると、目を引く白い髪と半袖のロングコートが特徴の少年、この店の吸血鬼ハンターの1人である朱渡(あかど) 明嗣(めいじ)が現れた。眠たげに目を擦る明嗣は腰へ手を当てて身体を伸ばすアルバートへ親しげに声をかける。


「おはよう、マスター」

「おう、明嗣か。おはようさん。今日はいつも以上に眠そうだな」

「まぁな……。映画垂れ流してぼーっとしてたらいつの間にか朝になっててよぉ……」

「何を見てたんだ?」

「名前を出すのも嫌になるくらいのつまんねー恋愛映画さ。鈴音が見てみろってうるせぇから見てみたけど後悔したぜ……。で、口直しにサブスクで色々漁ってたらこの通りって訳だよ。ふぁ……」


 明嗣が大きく口を開けてあくびをした。その後、明嗣が目尻に溜まった涙を手で拭うと、アルバートはニッと歯をむき出して笑う。


「まっ、そんな時もたまにあるだろうな」

「ったく、たまには守備範囲外のも悪くねぇかもなと思ったら、とんだハズレ引いたぜ。クソッ……」

「まぁ、そう言うなって。朝メシ作ってやるから機嫌直せよ」

「今日のモーニングは?」

「昨日、良いブルーベリーや梨が手に入ってな。ブルーベリーは仕込んでジャムにしてある。トーストに塗ると美味いぞ〜? で、梨の方はコンポートにしてフルーツケーキに使う予定だ」

「つまり、今日の朝メシはトーストね……」


 と、話ながら2人は店の中へ入って行ってしまった。




 AM7:35

 店が開店した。

 この店はその日によって内容が変わるモーニングセットを出すのも特徴で、本日はいちじくやブルーベリーなどのフルーツジャムを選べるトーストとスクランブルエッグのセットである。

 トーストは表面がこんがりと焼き上がっており、齧るとサクッ、と心地良い音を立てる。だが、それでいて中はフワフワの食感でお手本のような焼き上がりとなっていた。選んだブルーベリージャムを塗ってもう一度齧ってみれば、ブルーベリーの風味が合わさって思わず顔が緩みそうになってしまう。スクランブルエッグの方も、ケチャップがかけられたシンプルな物だが、これまた食感がフワフワで優しい仕上がりとなっている。極めつけは汁物として添えられたコンソメスープ。よく煮込まれた野菜などのおかげで、飲めばホッとするような優しい味わいとなっている。

 だが……。


「お前なぁ……。たまには美味いの一言くらいねぇのか?」


 つまらなそうな表情でモーニングを食べている明嗣へ、アルバートは呆れたように声をかける。一方、コンソメスープが入ったマグカップを手にした明嗣は、アルバートの小言を気にも止めずにすました顔で返す。


「何も言う事がねぇくらい美味いからコメントがねぇの。それに、いちいち感動してたらキリねぇだろ」

「生意気言いやがってコイツ……」


 分かりづらい返事に歯ぎしりをしつつ、アルバートは食後のアイスコーヒーを作るために厨房は向かった。



 

 AM7:50

 食後のコーヒーを飲んでいた時の事だった。店の出入口の扉が開き、元気に挨拶する少女の声が飛び込んできた。


「おはようございまーす!」

「おう、澪ちゃん。おはようさん」


 厨房から顔を出したアルバートがやってきた少女、この店でウェイトレスのアルバイトをしている彩城(さいじょう) (みお)へ挨拶を返す。夏のせいか、梅雨明けまで下ろしていた紫がかったストレートヘアがポニーテールへと変化していた。


「店長、おはようございます! 今日も暑くなりそうですねー……。あ、すぐ準備します!」

「まだ忙しくないからゆっくりで大丈夫だぞー」

「はーい! あ、明嗣くん。おはよ!」


 澪がカウンターでアイスコーヒーを啜りながらスマートフォンを見ている明嗣へ声をかける。対して、明嗣は顔を上げると共に、手を軽く上げて返す。


「うーっす……。今日も元気そうだな……」

「明嗣くんはなんだか眠そうだね。寝不足?」

「まぁな……。鈴音に布教された映画見てみたらとんでもねぇハズレでよー……。ったく、当の本人は夏休みだからってまだ優雅に夢の中とは良いご身分だぜ」

「そ、それは残念だったね……」


 恨めしげな声の明嗣へ、澪は苦笑を浮かべながら奥の方へ消えていった。

 その後、明嗣と同じように朝食を食べに来ていた1人の女性客が席から立ち上がる。


「あ、お会計ですね! 少々お待ちください!」


 席から立ち上がると同時に、澪がパタパタと駆けてきた。会計を済ませて店を出る間際、「また来てくださいね!」と呼びかける澪の元気な声に、女性客は小さく会釈を返して店を後にした。その後、澪は厨房にいるアルバートへ大きな声で呼びかける。


「えーっと……。店長、まずはこの皿を全部下げちゃいますね!」

「はいよー。ついでにそのまま洗っといてくれー」

「はーい!」


 元気良く返事をした澪は、さっそく仕事に取り掛かった。だが、食べ終わった皿をまとめ、厨房のシンクへ運ぼうとした時の事だった。澪はテーブルの上に何かあるのを見つけた。


「なんだろう……これ……。ペン……? 書き仕事でもしてたのかな……」


 何の変哲もないただのペンだ。なので、澪は客が忘れ物をした時に入れておく箱の中、その中にあるペン立ての中にペンを立てて仕事に戻った。

 だが、その中に仕込まれたカメラの存在に気付く事はなかった。

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