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炎の獅子の試練~魔女からの贈り物~  作者: 大月クマ
オレ、占部洸。15歳
9/10

猿人!?

 ヤバい、逃げろ! と、(うら)()(あきら)の記憶が警告してくるが、逃げられない。人とは思えないもの凄い力で手首を掴まえられ、両手で外そうとしても無理だ。

 それよりも、警官が人気のない場所に、彼女を引きずり込む理由があるだろうか? 先程までのきらびやかな街並みとは全く違う、薄暗い路地へ――。

「今日の飯だ!」

 ようやく離した。だが、それは何かの目の前に――獣のような、それでいて人のようなもの。正体が判らないが、何体かいるようだ。

「お嬢ちゃんが悪いんだよ。真夜中にひとりで徘徊しているから。

 補導するのは面倒くさくてねぇ」

 警察官はひとりでなんかブツブツ言っているが、彼女はそれどころではない。

 地面に叩きつけられて、その何者かに肩を掴まれた。

 彼女の肩を掴む指は芋虫みたいに太く、掴む腕にはもじゃもじゃの毛で被われている。そんなのが自分達の方へ……暗闇の奥へと、引きずり込む。

「このッ!」

 当てずっぽうであるが、獣の頭がありそうな場所を蹴りつけた。

 占部の体力は確実に異世界の自分よりは少ない。だが、痩せ気味(ガリガリ)だが関節が柔らかく、鞭のように扱える。

 手応えはあった。手が緩んだので隙ができた。身体をひねり、占部は飛び起きる。

 その時、スカートのポケットから、何かが落ちた。

 あの魔女・(いち)()からもらった宝珠(オーブ)だ。

 慌てて握り締める。魔女の説明では、魔法が使えるようになると言ったが……彼女は、半信半疑で握り締めた。

 すると、自分の中に燃えるような感触。そう、異世界で魔法を使っていたときと変わらない感触が、身体にわき上がってきた。

 気が付けば、透明だった宝珠が、燃えるように赤くなっている。


 ――今ならいける!


 右手で握り締めた宝珠。左手に力を込めると、熱く燃え上がる感じがした。見れば、炎の弾が生まれようとしている。

「食らえッ!」

 自分を暗闇に引き釣り込もうとしたそれが、人間で無いことは判断した。

 左手に宿った火球を投げつけた。

 彼女を自分達の方へ、引きずり込もうとした1匹に命中した。

「グアワワワァー」

 自分の放った火球により、暗闇が照らし出された。そして、そこには全身毛むくじゃらの、人間とも猿ともわからない生き物がそこにいた。

 現在3匹。

 火球が当たった1匹は、アッという間に体毛が燃え上がり、火だるまになった。首を掻きむしりながら倒れ込む。気管にでも火が回ったのか、息が出来ずにのたうち倒れ込んだ。そして、動かなくなった。

 それを見た他の獣は、身の危険を感じたのだろうか。見た目に反して警戒心が強いようだ。散らばり、闇の中に消えていってしまった。

「待てよ!」

 気が付けば、ここに引きずり込んできた警察官が、逃げようとしているではないか。

 占部は案外、足が速い事をようやく知った。(スニーカー)は安物らしいが、走りやすいので、ダッシュが効く。体重は軽いが、そのまま飛び上がると、逃げる警察官の背中に蹴り込んだ。

 重さはスピードで解決できる。

「痛ってぇー……」

「警官さんよ。どういうことか説明してもらおうか!」


 ――救え! そうすれば試練を終えられる。


 あんな人間とも猿ともわからない生き物。占部の記憶には、この日本にはいない。しかも、この警察官は『今日の飯だ!』といっていた。

 他にも被害者がいたのであろう。つまり、あれを退治することなのか……いや、そんな簡単な事ではないはずだ。この世界の異変の一片を掴んだだけだ。

「この……グッ!」

「女子高生に向かって、拳銃はないだろ!」

 警察官は、腰につけた拳銃というものに手を伸ばそうとした。

 彼女は咄嗟に、伸ばした手を踏みつけて阻止する。しかし、大人の男の力に、負けてしまった。彼女は振り払われてしまった。立ち上がり間合いを取られると、拳銃がこちらに向けられる。

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