停学処分
「カンニングしただろう」
試験結果は上々だった。だが、担任は占部洸が不正をしたと決めつけた。
まあちょっとやり過ぎた感はある。
いきなり、学年トップ10に入り込んだから、疑われても仕方ないのであろう。
「――いいえ」
「ウソをつくんじゃない!」
「――いいえ」
「正直に言えば、今なら許す」
「――いいえ」
「貴様ッ!」
ただ成績が上がっただけなのに、彼女は理不尽にも停学2週間を喰らってしまった。
――救え! ウラベ・アキラを救えなかったじゃないか!
異世界の住人であるマイケルは、学校で情報収集を行おうとしていた。しかし、憑依している少女は登校もままならず、人付き合いもしていない。ならばと、真面目に行って、情報収集のために自分の落ち込んでいた成績を上げた。
その結果が、不正を疑われ、停学2週間。
あの魔女。一夜の頼んだ魔法具が届くのに、あと1週間。
――他に情報収集する方法はないのか?
占部の記憶には『夜の街』が、情報が集まる。と、記憶していた。まあ、彼女がいた異世界でも、情報収集といえば『夜の街』なのだが……
――この日本の夜の街って、こんなに明るいの!?
異世界の彼女にとっては、驚くことばかりだ。電気の明かりは、魔法ではない何か……錬金術の延長の科学とかで、彩り豊かに輝いている。
――どうすべきか……
正直、彼女はどう情報収集すべきなのか解らなかった。
ただ、占部の記憶……路地の曲がり角に立っていて男が来たら話をしろと。そして、『何かあったら路地裏に逃げ込め』と――
しかし、
「仕事の邪魔だ!」
「ちょっと、なにこの子――」
「ガキの来るところじゃねぇぞ!」
先程から遠巻きに、人々は近づくどころか、避けて、罵倒して、どこか行けと厄介払いする。
これでは情報収集なんて出来やしない。
――格好が悪いだろうか?
そうは思ってみたが、外出する着替えがほとんどなかった。一夜は、『この世界の常識は、占部の記憶を頼れ』と言われてはいたが、例によって、マイケルは拒否反応を起こしていた。布の量が少ない事に――。
仕方がなく、セーラー服で来たわけだが、これが問題なのであろう。
「お嬢ちゃん。ちょっといいかな?」
――ヤバい!
ニコニコと人の良さそうな青い制服――警備隊というヤツだ。
関わるな、ウラベ・アキラの記憶が警告する。
彼女はとっさに振りかえって走り出した! だが、
「暴れない。ちょっとあっちでお話を聞こうか……」
腕を捕まれて逃げられない。
――何だ、こいつ! 本当に人間の力か?
人間の力ではないと感じた。
彼女は左手首を掴まれているが、その握力に痛いぐらいに食い込んできた。いくら占部という少女になったとはいっても、人の力の強さはわかる。
引きずられるように、警察官に連れていかれた。
薄暗い路地裏へと――