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炎の獅子の試練~魔女からの贈り物~  作者: 大月クマ
オレ、占部洸。15歳
5/10

ギャップ

 占部(うらべ)(あきら)は、朝、高校に登校すると理化学準備室に向かった。もちろん、あの魔女・一夜(いちや)にもらった『魔法の砂時計』の結果を伝えるためにだ。

 自分が、マイケル・マーティン=グリーンという異世界の住人であったこと。そして、この世界に『炎の獅子』の試練で飛ばされた事をすべて話した。

 記憶が上書きされる前に――。

 そう、彼女は自分の本当の『マイケル』の記憶が、上書きされていくのを感じていた。

 それは自分が、他人――依り代のウラベ・アキラになるようで、怖くて仕方がなかったからだ。

 魔女こと、落合一夜はそんな彼女の話を聞き続けた。

 異世界から飛ばされたの、この身体は借り物だのいう話は、通常なら驚くべきであろう。が、一夜は、そのことは気にするようなことはなかった。

 ただ、

「アナタ、男だったの!?」

「違う、女だ!」

「マイケルって、男の名前でしょ?」

「オレのいた世界でも、マイケルって言う名前の女を珍しいが……オレは前も今も女だ!」

「でも――」

 と、目の前の占部を見る。

 彼女の方は朝の身支度で、制服を着ることに抵抗があった。スカートの丈が短く、太ももを露出するのにひどく困惑したが、ジャージを穿くことでなんとか抑えた。まあ登校中に他の生徒から妙な目でみられていたことには、気が付いていた。

「今どき、スカートの下ジャージってのは――」

「この世界の学生は、こんな恥ずかしい格好しているのか? いや……ウラベは自分から短くしていたようだけど――」

「まあ、慣れましょう。ともかく、ジャージは止めて体操服の半ズボンがあるでしょ?」

「あれを履くのか? どっちも下がスースーして――」

「下がスースー?」

「スカートだっけ……だけだと歩いているときに見えるだろ? ペチコートがないのかこの世界は――」

「下が見える? あッ、占部さん?」

 一夜はゆっくりと、目線をあげていく。それは占部の鎖骨あたりで止まった。

 そして、言葉を選ぶように、

「下着はどうしているんですか?」

「えッ? ウラベの記憶にあわせるの面倒だったから、起きたときのまま……上からセーラー服、着ただけだと――」

「ブラとかは……」

「何それ?」

 途端、一夜の顔が真っ赤になった。

 そう寝起きのまま制服を着ていた。寝たときに付けていた、タンクトップとショーツのみ。

「ともかく、占部さん体操服を、着ましょう! アタシ、出ていますから」

「なんでだよ……」

「痴女、認定されたくなければ!」

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