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炎の獅子の試練~魔女からの贈り物~  作者: 大月クマ
オレ、占部洸。15歳
4/10

無理ゲーのスタート

 (うら)()(あきら)は、魔女・(いち)()から渡された魔法の砂時計(クロノグラス)で、忘れていた記憶を思い出した。

 自分がこの世界の人間ではないことを――。


 ――あの獅子()の試練はこれかよ!


 彼女は、ドッと記憶がかき込まれていく感じで目眩が襲った。倒れそうになるのを、洗面台の縁を掴み持ち堪えようとしたが、上手く力が入らない。結局、床に座り込んでしまった。


 ――マイケル・マーティン=グリーン。それがオレの本当の名前だ!


 他のことを上書きされそうだが、名前だけは忘れないでおこうと、そう彼女は誓った。

 自分は、異世界の住人であり、試練のためにこの世界に送り込まれたのだと。そして、どうやらウラベ・アキラという人物に憑依していることを突きつけられた。


 ――元の世界に戻るのは……やっぱり、世界を救うことか?


 改めて思うと、ノーヒントでこの世界に飛ばされた。

 何をどう救えというのか分からない。そもそもこの世界が危機になっているかということも、間借りしている身体の持ち主、ウラベ・アキラの記憶によれば……ない。


 ――情報収集からか……


 改めて占部洸(自分)の身体を眺めた。


 ――貧弱。飯をちゃんと食べているか、こいつ?


 元の世界では、ウラベ・アキラの記憶にある言葉を使えば、『剣士』であったことを思い出した。だが、力も無さそうだ。今の依り代となっている四肢は、棒きれのように見えた。胸の膨らみも、もっとあった。

 この世界では剣などを持ち歩くのは、犯罪だという。武器が使えないとなると、身体能力で何とかしなければならない。

「使えるのかな?」

 と彼女は両手を少し開けて、目の前に持っていく。そして、念じた。

 するとどうだろう。少しだけ、赤い光が渦を巻きはじめた。だが、それまで。ロウソクの炎よりも小さな光が灯ったかと思うと、すぐに消えてしまった。


 ――魔法はまともに使えないのかよ!?


 一応、この日本という世界でも魔法は使えるようだ。だが、期待しているような光の塊にならなかった。

 体力もない。武器も使えない。魔法も上手く使えないとなれば最悪の状態だ。


 ――世界を救え! これじゃあ、生けていけないじゃないのか!?


 その原因を作ったのは、彼女が夢の中のように、翼のある獅子を怒らせた所為かもしれない。


 ――手がかりはないか? 人が集まるところ……とにかく学校に行ってみるか。


 どうやって行けばいいかわかる。家を出て、駅に向かい、電車というものに乗る。

 記憶を取り戻す手助けをしてくれた、あの魔女・一夜に会って話をするべきだ。

 何かヒントを持っているかもしれない。

 決心がつくと、占部は身支度を始めた。ボサボサの髪は赤いリボンで縛り……ただ、黒いセーラー服を着るのに抵抗を覚えた。


 ――こんな足を見せるの穿くのかよ!?


 丈の短い、太ももの上半分しかないスカートを穿くのに――

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