獅子と試練
魔女・一夜から魔法の砂時計を渡されて、付けたまま眠りに就いた占部洸は夢を見ていた。
「ここはどこだ!?」
目の前が真っ白になり、眩む。自分の立っていた感触もなくなり、空中に浮かんでいるような気がしてきた。
視界は一面、真っ白で何もないように思えた。だが、突然、目の前にたてがみの立派な獅子が現れたではないか。しかも背中には翼が生えている。
突然現れたのにもかかわらず、占部は冷静なままだった。
「――我が子孫よ」
「出たな!」
驚くこともない。知っている記憶だ。
「我が子孫よ……」
目の前の羽の生えた獅子が喋っているようだ。異常な状態にもかかわらず、占部は冷静なまま、その獅子に話しかけた。
「要件は手短にしてくれ」
「そう、急かすではない。我が子孫よ」
「どうせ力を手に入れるのには試練が必要なんだろ? 早くしてくれ!」
急に口からそんなことをいった。いや、彼女は前にそういう問答を、この獅子としたのだ。その記憶が再現されているのだ。
「その通りだ。我が子孫よ」
「何すればいい。お前をぶっ倒すか?」
「獅子は、余計な暴力は使わないものだ。我が子孫よ」
「説教はいいから、早くしろ!」
「ではよく聞くがいい。我が子孫よ」
「早くしろって、意味はわかっているのか?」
「うるさいわ! この小娘!!」
「恫喝で、オレをどうにかできると思うなよ! 炎の獅子かなんか知らないが!」
「小生意気な小娘にはもっともキツイ試練をやる。心せよ!」
「おう。生ぬるいのじゃあ、飽きちまう」
「――世界を救え!」
「はッ? それだけか?」
その途端、まぶしい光で再び目が眩んだ。