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炎の獅子の試練~魔女からの贈り物~  作者: 大月クマ
オレ、占部洸。15歳
2/10

魔女からの贈り物

 それは昨日のことだ。

 数日前から起きていたことを、ある同級生に相談した。

 それは自分が、本当に占部洸(ウラベ・アキラ)か自信が持てなかったことだ。この間、いうなれば『他人の身体を間借りしている』ような感じだ。

 恐らく、本当のウラベ・アキラであれば、こんな行動はしないであろう。

 記憶を遡れば、占部洸(自分)は自分が嫌いであり、周りの大人……親も含めて、その他、人を信じなくなっていた。当然、クラスメイトなどもだ。一匹狼を気取っていた。

 その時に限って自分は、おかしな行動をした。

 高校に入ってから、噂に聞いていたこと。

『不思議なことは(おち)(あい)(いち)()に相談した方がいいよ』

 耳にした時は小馬鹿にしていた。不思議なことなどと……しかも噂は「恋愛が上手くいった」「嫌いな先輩がしばらく休んだ」などと、たわいのないことばかり――。

 いつしか、おまじないの天才『魔女・一夜』として、それなりに有名になっているようだ。

 しかし、吸血族や人狼族などなど、人間以外の種族がいる現代日本。ましてや来年度から、大人の事情でそんな連中が同じ学校に入ってくるという。だが、占部の記憶では、魔女は空想上の扱いだ。もちろん、魔法も――

 それなのに、昨日は彼女のいる理化学準備室に行ってしまった。


 ――何故、理化学部など魔法と正反対な場所に魔女がいる?


 そんな疑問を持ったが、入ってみると、

「なんでしょうか?」

 黒髪のおさげに、黒縁メガネの小柄の少女がひとりだけいた。絵に描いたような白衣の『化学部員』が、入ってきた自分に声をかけてきた。

「あっいや……」

 占部は言葉に詰まる。あまり人と話したことがないのが、裏目に出たようだ。


 ――こいつが噂の一夜か?


 小柄の彼女しか部屋にはいない。

 噂の一夜はビーカーを火にかけ、怪しい液体をかき混ぜていた。一見、化学の実験と思える。理科学部だ。それ以外になんだというのだろうか。

 魔女と聞いていたから、大鍋で怪しげな薬を煮込んでいるのを、期待したのかもしれない。「えっと……ウチのクラスの占部さんでしたけ?」

 首をチョコンと傾けて聞いてくる。

「――うん」

 やはり自分は他人と話し慣れていない所為か、小さくうなずく程度しか声が出なかった。

「何か……」

 不思議そうな顔をしながら、一夜の目線はゆっくりと占部を見続ける。

 そして、

「アナタ、ホントに占部さん?」

 と、妙なことを言いだした。

「どッ、どうして……」

「えっと、朝のテレビの占いで――」

 と、一夜が口にした途端、占部は、


 ――胡散臭い。来ない方がよかった。


 顔に出たのか、彼女は慌てだした。

「冗談、冗談ですってばッ!」

「……」

「クラスメイトでしょ? 入学してから、アナタのだいたいの行動を見ていて……アナタが、アタシのところに来る人ではないと――」

 あきらかに取り繕っているような気はしたが、占部はとりあえずこの数日間のこと。自分が『他人の身体を間借り』を彼女に説明した。

 占部を馬鹿にすることもなく、話を聞く一夜であったが、

「他人の記憶? 

 あっ、これが役に立つかも!」

 しばらく考えていた一夜は、机に隠れていたものを取り出した。

 それは巨大なリックサックだった。中身を取り出せば、目の前の小柄な彼女がすっぽりと入ってしまうぐらいの大きさ。数日間山登りするのかと、思えるような量の荷物が入っていそうだ。


 ――これで山にこもってなんて勘弁して……。


 そう思っていたが、一夜はおもむろにリックのチックを開けると、中身を取り出しはじめた。

 最初に出てきたのは教科書、ノート類。学校で使っているものだ。


 ――この子、毎日持ち歩いているのか?


 乱雑にリュックの中身を理化学準備室の机にぶちまけていく。中には飲みかけのペットボトルや弁当箱まで……まるで整理整頓がなっていない。

「これ! これをあげます!」

 そして、ようやくお目当てのものが見つかったようだ。

「何? これは……」

 渡してきたのは金色のネックレスだった。その先にぶら下がっているのは、ガラス管に閉じ込められた小さな砂時計。

「『魔法の砂時計』です。アナタの記憶を遡り、忘れたことを思い出すかもしれません」

「記憶? 忘れた?」

「なんで『他人の身体を間借り』がしている感じがしてるのか? ひょっとしたら、何か大事なことを忘れているのかも――。

 しばらく身につけていて、何かあったら教えてください」

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