炎の魔法
「形勢逆転だな! 魔女っ!!」
「そうかい……」
占部は黒い筒をジッと見つめた。
――燃えろ!
拳銃は熱で真っ赤に染まり出すと、爆発した。中の火薬が、彼女の魔法によって爆発したのだ。
「ギャー!」
警察官は悲鳴を上げた。しっかりと見ていないが、拳銃を握り締めていた手が血で真っ赤だ。指を吹き飛ばしたかもしれない。
「なに? さっきの悲鳴は!」
「爆発した音が聞こえたぞ」
警察官の悲鳴が、拳銃の爆発音が表通りに響いたらしい。通りで歩く数名が、その音に気が付いたようだ。
――ヤバい、ヤバい!
彼女はその場を急いで立ち去るしかなかった。
厄介事に巻き込まれるのはゴメンだ。しかし、警察官の飼っていたバケモノが、ヒントかもしれない。
――だからといって、今はどうしようもない!
獅子の試練。
解決方法は深夜の暗闇のように全く、見当が付いていない。
……
「何しているんですか!?」
突然、空から声が聞こえてきた。聞いたことがある声だ。
「いっ、一夜!? どこに!」
占部が声のする方角を見上げたが、夜空が広がっているだけだ。
「こっちです。こっち!」
声はドンドン近づいてくる。だが、姿は相変わらず見えない。
「どこにいるんだ。一夜!」
「ここですって! 背が低いとかアナタもバカにしているんですか?」
「そうじゃなくて!」
どこを見回しても声だけだ。だが、
「あっ、ゴメンナサイ!」
と、布がこすれる音が聞こえた。
すると突然、目の前に魔女・一夜の姿が現れたではないか。
魔女は、フード付きのローブを着ていたようだ。そのフードには被ると、風景に溶け込む魔法が掛かっている様子。そのために姿が見えなかったのだろう。
「魔法の宝珠を使ったんですね。だから飛んできました!」
と、左手に持った竹箒を見せる。
「それも魔具か?」
「ホームセンターで買ったものに、アタシの薬で……そんなことより、ここはマズそうです。
行きましょう!」
と、竹箒を水平に掲げた。
するとどうだろうか、フワリと一夜の小さな身体が浮かび上がる。
「さあ、早く! ホウキに捕まってください!」
「こういうのは……跨ぐんじゃないのか?」
「お尻が痛くなるでしょ!」