表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/297

有栖川 悠里の憂鬱

少し話が暗いです。

有栖川 悠里視点



私は孤児だ。

と言っても、両親はちゃんといる。

ただ、今の御時世よくある話で、私を産んだ後両親が離婚、双方が引き取りを拒否した為、生活能力のある母親が止む無く私を養護施設へ預けたと云う訳だ。

実の所、元父親は365日パチンコパチスロ三昧の毎日だったし、母親も男を自宅に連れ込むのに不都合だから私を養護施設へ入れただけだった。

この養護施設は、15歳になるか、中学を卒業したら強制的に退所しなければならない決まりだ。

幸い私は、院長先生の紹介で場末のアパートに住むことが出来たし、アルバイトも紹介して貰えた。

院長先生個人の援助で定時制ながら高校も出して貰えた。

因みに元父親は私が10歳の時にパチンコ店で喧嘩に巻き込まれてナイフで刺されて死んだらしい。

母親も男と同衾していた所に元交際相手が殴り込んで来て、双方もみ合いに巻き込まれて喉を切り裂かれて死んだ。

何方も自業自得の碌でもない死に様だった。

各言う私も碌でもない人生だ。

高校は出たけど、大学なんて到底行けない。学費が払えないし、奨学金制度使う程成績良い訳じゃ無い。

それでも生活する為、就職しなければならない。

そうして就職した先が、まさかの真っ黒なブラック企業。

休日出勤は当たり前。17時に(形だけ)タイムカード押して再び仕事。そのまま深夜会社に寝泊まり、翌日早朝から仕事して、朝9時に再びタイムカード押すという毎日。

確か15日連続出勤した事もあった気がする。

そんなこんなで入社して早六年。

もういい加減に疲れがピークに達していたと思う。

だからだろう。

フラフラと歩いていた私の足元に、怪しげな魔法陣が発生している事に私は気が付かなかった。


・・・・気が付くと、周りの光景は一変していた。

都会の喧騒など何処にもなく、どうやら私は巨大なすり鉢状の何かの中心部分に立っている様だ。

自分でも訳が分からなかった。ただ自分の中で(もしかして)という思いがあった。

『異世界召喚』私が入社して以来、ただ一つの趣味、いえ楽しみ。其れがひたすらラノベを読む事。

異世界から召喚された主人公が有り得ないチート能力で無双したり、素敵な異性とイチャラブしたりして、その時だけは理不尽な現実を忘れる事が出来た。

私が(もしかして私異世界から召喚されたかも!?)なんて夢想したとしても、無理は無いと思う。

しかし現実は非情だった。

しばらくすると、空腹と喉の乾きに苛まれ、まるで身動きが取れなくなった。じっと蹲ったまま、私このまま死んじゃうかもと覚悟もした。

意識を喪いかけた時、人影が視界の端に入った。

直後、私は意識を手放した・・・・


目覚めた時、私は見知らぬ殺風景な部屋にいた。

周りには見慣れない服装の男達が数人立っている。

その中で、明らかに立場が上と思われる男が、

「目覚めた様だな。早速だが幾つか問い質したい事がある。」

おもむろに質問してくる男。

幾つかの遣り取りの結果、どうやら私は本当に異世界から召喚されたらしいと理解した。

ただ意図的に召喚された訳ではなく、魔法の研究所の暴走事故による偶然の異世界転移だった様だ。

どちらでもいい。

元の世界に戻った所でブラック企業に扱き使われるだけだし、元の世界に身寄りがいる訳でも無いから。


そして今私はフォーチュンという国への使節団一行に随行している。団長のルイーゼ様曰く、フォーチュンには神様がいるらしい。その方ならば私を元の世界に送還出来るかもしれないそうだ。

・・・正直、帰りたくないなぁ・・・


明日はもう少し頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ