皇帝陛下よりの親書
仰々しい言い回しは苦手です。
しばらくしてようやく再起動したルイーゼが、食いつくように、
「・・・失礼ですが国王陛下、今『転移魔法』と仰せられたのですか?転移魔法は人間には使いこなせない筈なのですが・・・」
あれ?そうなの?俺普通に使えてたけど。
「我が帝国も昔から転移魔法を研究して術式等解析を進めて参りました。結果『不可能では無いが実質的に不可能』という結論に達しました。」興味深い話だな。
「その理由は?」俺だけが使える理由が知りたい。
「発動するのに大量の魔力が必要なのです。帝国が誇る魔道師団の精鋭魔導師達が誰一人発動出来ずに魔力枯渇で気絶致しました。すぐ近くの、超短距離転移でさえそんな有様です。しかも学者達の試算では距離に応じて乗法で魔力量が跳ね上がるようで、最早人間の魔力量では実質的に不可能だと言う結論になりました。」
なるほどね。乗法て事は距離が2倍だと2×2で必要魔力量は4倍、距離が4倍だと4×4で16倍となる訳だ。そりゃー普通の人間には実質的に不可能かな?
「・・・一応他言無用で頼むんだけどさ・・・俺は創造神の加護で魔力量が無限になったんだ。だから多分転移魔法を使えるんだと思う。」
それを聞いたルイーゼは、まさしくハニワの様な顔になった。直ぐに再起動した後に、
「暗部からの報告で、リオン陛下が創造神様の代理人になられたと有りましたが、真の事だったという事の様ですね。」
本当は間違い召喚のお詫びに魔力無限付けてもらったんだけどまぁいいか。あながち間違いでも無いし。
「取り敢えず話を戻そうか。先ずは全員ソファーに掛けて寛いで欲しい。あなたがたはフォーチュン王国にとって国賓となる。疎略には扱えないからな。」
この言葉で使節団の全員がソファーに腰を下ろした。
その上で俺は渡された帝国皇帝からの親書を開封して中身を確認する。内容は・・・
要約すると、『フォーチュンから出て来ないと思っていたのに、ルフラン王国に出現して二万の兵を殲滅したと報告を受けた。我が帝国は、決して敵対しないからこれから仲良くしてください』という内容だった。まぁ賢明な判断だな。
「・・・ルイーゼ殿は、親書の内容をご存知かな?」
子供の遣いでもあるまいし、使節団の団長クラスが親書の内容をある程度は知らされているはずだ。
「・・・存じております。その為の全権を、私は皇帝陛下より与えられております。」特命全権大使って訳か。
「なら単刀直入に返答致す。これよりダンバス帝国と国交を樹立して、最恵国待遇を与える。並びに、両国間で交易を執り行う事とする。問題は通貨の交換レートだが、使節団には我が国の貨幣を帝国に持ち帰って頂き、然るべきレートを算定して貰う。さしあたってこんな所で如何かな?使節団団長殿。」
ルイーゼは目を丸くしていた。
「リッリオン陛下!まこと即断しても宜しいのですか?!本来数日掛けて検討すべき案件ですが」
「構わない。此方としても友好的な隣国は歓迎だ。農産物や鉱物資源も取引する相手が欲しかったからな。直ぐに返書をしたためるから明日にでもお渡し出来ると思う。」
「ご聖断、恐悦至極に存じます。」
「堅苦しい話はこれで終わりだな。それでは使節団の皆様への歓迎の宴を開催したいと思う。場所を変えよう」
いよいよ俺のターン!メシテロの始まりだ。
宴会が始まらなかった件・・・・




