やはりうなぎ尽くしは平穏には終わらない
宴が始まるまでもスンナリとは行かないのです。
漸く皇妃の肩掴み地獄&ルイーゼのお胸様地獄からどうにかこうにか逃れる事が出来た俺は、ついでにフォーバスのエルフ達の屋台に顔を出した。
目的は勿論、先程皇妃達に餌付けした蒸しパンを、エルフ達の屋台でも出そうと考えたからだ。
「あ〜♡王たま〜♡いらっしゃいでち〜♡」
「王様〜♡相変わらず良い匂いです〜♡」
「リオン神様!ようこそいらっしゃいました♡」
たちまち子供含むエルフ達にもみくちゃにされました♡
なんとかエルフ達を宥めて、俺は加熱用の魔導具に蒸籠をセットして、一口大の蒸しパン生地を並べた。
下に水を注いだら加熱開始。
蒸し上がる迄、俺はアイテムボックスから完成品の蒸しパンを出して近くのエルフ達に餌付けする。まぁ所謂試食タイムという訳だな。
「わぁ〜♡王たま〜!?この蒸しパンというのはおいちぃでち〜♡♡お代わりでち〜♡」
「王様〜♡蒸しパン美味しいです〜♡上の干しぶどうがまたいい感じです〜♡私もお代わりです〜♡」
「リオン神様!またしても美味しいお菓子を提供して頂きありがとうございます♡この蒸しパンは必ずや大人気になります!」
・・・予想通りにエルフ達は蒸しパンに魅了された様だ・・・。
そうこうしてるうちに、どうやら蒸しパンが蒸しあがった様だ。
俺が蒸籠の蓋を開けるや・・・。
たちまち辺りに蒸しあがった蒸しパンの良い匂いが充満しました(*^^*)
そしてその匂いに引き寄せられて周辺住民達がワラワラと群がってきやがりました♡
「ママ〜♡この良い匂いのお菓子食べたい〜♡」
「そうね。ちょっと!その美味しそうなお菓子を10個程頂けるかしら?」
「おっ俺にも5個包んでくれ!」
・・・あまりに希望者が殺到した為以下略・・・。
当然蒸し作業が間に合わない為に、結局俺のアイテムボックスから完成品を出す羽目になりましたとさ・・・。
まぁその間にもエルフ達に蒸しパンを蒸しまくる様に指示したんだけどね。
更に加熱魔導具と蒸籠を新たに二つ出してこれにて蒸しパン増産体制は整った!
くたびれたからあと宜しくね〜。(人はそれを丸投げという)
さてさて、そろそろ夕方だから戻って宴といきますかね。
帰還した・・・。
したんだけど・・・。
「遅いぞ武蔵!!ですわよ〜!私もう待ちくたびれてしまいましたわ〜♡さあさあ!早く宴を始めますわよ〜!」
・・・何故か『大魔神』皇妃がルイーゼと共に俺を待ち構えていやがりました。
「・・・リオン様。実は先程母がまたしても直感を発動致しました。何でも今晩の宴は母の大好物であるうな重が出るという事で、母曰く、万難を排して食べに行きますわよ〜!っと言って一歩も引かず、わっ私は母に半ば無理やり引き摺られて連れてこられました!ほっ本当です!わっ私は被害者なんです〜!」
途端に皇妃の気配が豹変した!再び例の黒いモヤをその身に纏った皇妃は、ズゴゴゴゴォッ!!という効果音と共に、
「・・・ルイーゼ・・・。汚れ役を全て私に擦り付けるなんて良い度胸ですわね・・・。貴方こそ目を♡マークにしながら喜んで付いてきた癖に、言うに事欠いてこの!私に無理やり引き摺られて来たぁ!?自分は被害者ですぅ!?どの口がそんな戯言を言うのかしらねぇー!!!」
言いながら皇妃はルイーゼのほっぺたを両手で摘んで引っ張ってグリグリしだした!
「あひゃっ!?ひひゃいひひゃいひひゃいへふほひゃーひゃまー!!(訳:痛い痛い痛いですお母様〜!!)」
もはやルイーゼは涙目どころか涙ボロボロ状態だ・・・。
散々ルイーゼをお仕置きしまくって満足したのか、
「・・・という訳で、私もうな重を相伴しに来たんですわ〜♡このところずっとフォーバスの復興事業にかかりきりでしたから、私も些か疲労が溜まってバテておりましたの。早くうな重を食べないと私過労で倒れてしまいますわよ〜♡」
・・・白々しい。毎日視察の名目でルイーゼと屋台の料理を食べまくっていたクセに・・・。
だがしかし!ソレを口にしたら俺の命に関わる!
まぁぶっちゃけ二人分増えるだけだしな。
まぁ問題はない。
では再びのうなぎ尽くしじゃあ〜!
うな重。
白焼きとわさび醤油。
肝吸い。
肝の串焼き。
プラス!
シルフィー達エルフ用に特別メニューだ!
浅草老舗鰻店は何もうなぎだけがメニューでは無い!
シルフィー達には特上天ぷら重を用意した!
揚げたてのサクサク天ぷらは江戸前らしく胡麻油で揚げてある。
重箱に盛り付けたら特製の甘じょっぱいタレをたっぷりかけた珠玉の天重だ。
さてそれでは宴を・・・「ちょっと待ったぁぁぁぁ!!」
?何故かいきなりストップがかかった!?
見れば(シルフィー以外の)嫁達が総出で挙手していた。
嫁達は口々に、
「リオンよシルフィー達エルフにばかりズルいのじゃあ!重箱の上にこれでもかってくらい美味しそうな天ぷらが山盛りなのじゃあ!?しかも上にかかっているタレがまたヨダレが出る程の美味そうな匂いなのじゃあ♡リオンよ我はソレも食べたいのじゃあ!」
「私もムーちゃんと同じですぅ!はっきり言って物凄く良い匂いですぅ!うな重と一緒にその天ぷら重も食べたいですぅ!」
「リオン様私も同意見です。無理してでも食べたいです。」
「・・・リオン様は私を侮ってる・・・。私は燃費が悪い・・・この程度の量なら問題無く食べ尽くす・・・。」
「リオン様心配無用ですぞぅ!私の胃袋に加えて私にはお腹の子供の胃袋もあるのですぞぅ!この程度の料理、食べ尽くすのは雑作もありませぬ!この命に替えても完食致す!」
「リオン様この天ぷら胡麻油の凄く良い匂いがするよぅ♡悠里是非とも食べたいよぅ♡」
「リオンちゃん!ミオやアクアちゃんは精霊なの!その気になればミオ達は幾らでも食べられるの!さっさとうなぎ尽くしと天ぷら重を寄越すなの!」
「ミオちゃんに同意なのです!すぐさまうなぎ尽くしと天ぷら重を食べさせて欲しいのです!」
「・・・妾はこれでも神の一柱じゃからのぅ。お供え物は幾らでも受け付けるぞえ。まぁバッチコーイじゃな。」
・・・相変わらず俺の嫁達は大食いでござるな・・・。
ここで、(よせばいいのに)皇妃とルイーゼまで、
「リオン王!この天ぷら重という料理もとても美味しそうですわね〜!是非とも吟味致しますわよ〜!」
「リオン様凄く良い匂いです♡今から楽しみですー♡」
二人共しっかりと乗っかってきやがりました♡
仕方ない。では気を取り直して改めて宴を・・・。
と思ったら、いきなり俺の左手が恋人繋ぎされてしまった!
何奴!?
「パパ。抜け駆けはダメ。」
まさかのユーノでした(*^^*)
ユーノは相変わらずの無表情で、
「パパが世界樹の近くに設置した転移門から凄く良い匂いが漂って来た。あれではおちおち寝て居られない。パパは私の安眠を妨げた責任を取るべき。私の分も用意して。」
ぐぬぬ・・・。またしても一人メシタカりが増殖しおった!
え〜〜〜〜い!!!
今更一人増えるも二人増えるも一緒じゃあ!
強引に宴開始じゃあ!
メニューはうなぎ尽くしと天ぷら重!詳細は割愛。
あとどちらも些かくどいから、箸休めにキュウリと大根の味噌漬け、大根の沢庵漬け、白瓜の奈良漬けを用意した。
さあちゃっちゃと宴である!
「やはりうな重は美味いのじゃぁぁぁ♡何時食べても美味いのじゃあ♡この天ぷら重もまた捨てがたいのじゃ♡このタレが絶品なのじゃあ!松尾純米大吟醸お代わりじゃあ♡」
「リオンさん♡うな重美味しいですぅ♡天ぷら重もとても美味しいですぅ♡サクサクの天ぷらにこのタレが凄く良く合いますぅ♡松尾純米大吟醸お代わりですぅ♡」
「リオン様天ぷら重美味しいです♡うな重も白焼きも最高です♡箸休めの味噌漬けが良いアクセントです♡松尾純米大吟醸お代わりです♡」
「・・・やはりうな重美味しい♡・・・天ぷら重も美味しい♡・・・どちらもお代わり♡・・・松尾純米大吟醸お代わり・・・。」
「素晴らしいですぞぅリオン様♡うな重も天ぷら重!どちらもお腹の子供が狂喜乱舞しておりまするぞぅ!ぬぉーどちらもどんどんお代わりなのだぁ〜!松尾純米大吟醸はまとめて一升瓶にて持て〜い!!」
・・・コイツの胃袋の心配をした俺がバカだった・・・。
「リオン神様♡この天ぷら重美味しいです♡私とお付達に天ぷら重と漬物をお代わりです♡」
「やはりうな重美味しいよぉ♡この天ぷら重も美味しいよぅ♡モグモグッ!どちらもタレの混じったご飯が秀逸なんだよぅ!バリバリッ!箸休めの沢庵漬けも最高だよぅ♡松尾純米大吟醸お代わりだよぅ!」
「リオンちゃんてば中々に味な真似をするなの!ミオは確かにうなぎ尽くしを要求したけど、相変わらずリオンちゃんは予想の斜め上を行くなの!まさか天ぷら重何ていう隠し玉を用意しているなんて想定外だったなの!箸休めの漬物と肝吸いのお陰でミオはモリモリ食べられるの♡どんどん行くなの!」
「うなぎ尽くしは美味しいのです!うな重はまさしく未知との遭遇なのです♡白焼きはわさび醤油との相性が抜群なのです♡うなぎの脂がワサビの力で綺麗さっぱり洗い流されるのです!高圧洗浄なのです♡天ぷら重もまた至高の料理なのです♡サクサクの天ぷら!それにかけられた甘露なるタレ!まさしく味のトールハンマーなのです!アクアは粉微塵に粉砕されたのです!天ぷら重に栄光あれ〜!なのです♡箸休めの漬物も肝吸いも捨てがたいのです♡お代わりなのです!松尾純米大吟醸お代わりなのです♡」
「ほほう・・・。うな重とはまたえらく豪勢じゃのぅ。ふむ・・・コレは背開きじゃな?するとさしずめ江戸前の技法じゃな?江戸に公方がおった頃はよく稲荷神社に奉納されたものじゃ。懐かしいのぅ。残念ながら平成以降はその様な奇特な人間は居なくなってしもうたがのぅ。まぁその頃にはうなぎ自体えらく高価になったからのぅ。無理からぬ事じゃて。モグモグッ!うむ。この天ぷら重も胡麻油を使った正統的なる江戸前の天ぷらじゃ♡これまた懐かしいのぅ♡妾はすっかりリオンに餌付けされてしもうた♡今地球の日本に帰れと言われても妾は断固拒否するぞえ。バリバリッ!このような美味しき料理に妾の大好物の奈良漬けまであるのじゃ♡妾は今幸せなのじゃあ♡」
「やっぱり私の直感に間違いはありませんでしたわよ〜!!相変わらずうな重は美味しいですわ〜♡リオン王の新作である天ぷら重もまた至高の味ですわ〜!!松尾純米大吟醸お代わりですわよ〜♡」
「リオン様天ぷら重美味しいです♡サクサクの天ぷらに濃厚なタレ!最高です!相変わらずのうな重も美味しいです♡松尾純米大吟醸お代わりです♡」
そして俺の自称『娘』であるユーノはと言うと・・・。
凄い勢いで爆食しておりました。
「やっぱり匂いは嘘をつかない。パパもママもズルい。こんなに美味しい料理を食べるのに私を除け者にするなんて許し難い暴挙。本来なら市中引き回しの上で磔獄門だけど、美味しいうな重と天ぷら重に免じて特別に許す。」
・・・何やら物騒な事言ってるなオイ!!
さて、皆さんの予想通り・・・。
俺はやはり一口も食べられませんでした(*^^*)
やっぱり・・・ぴえん。
まさかのオールスター総出演!?の宴でした(*^^*)




