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セバスチャン無双!

セバスチャンは完璧執事なのです♡

一方、同日同時刻のルフラン王国。


私はルフラン王国宰相のゴミ・クズだ。

・・・だが、その『称号』は数日後には過去形になるかもしれない・・・。

それもこれもリオンとかいう奴の所為だ!!

先ず奴の空飛ぶ奇っ怪なる船によって、我がルフランの王城が半壊せしめられ!我が国の威信は地に落ちた。

更には王都が未曾有の混乱状態に陥った。

我先に王都から逃げ出そうとする者達や、中には暴徒化して商店を襲って略奪行為に及ぶ者達まで出始めた。

王都に駐留している騎士団を総動員してなんとか暴徒共を鎮圧して、漸く騒動が沈静化したと思った矢先!

何と翌朝になると各地からの驚天動地かつ悲鳴混じりの報告と陳情がこの王都に殺到しだした!

曰く、

『自分の領地でありとあらゆる植物が枯れてしまった。田畑は全滅、領内の森林も全て立ち枯れした。現在、恐慌状態となった領民達が自分の元に押しかけて来ている。鎮圧の為大至急騎士団を差し向けて欲しい』

・・・内容の差異こそあれ、どれもこれも似た様な内容であった。

植物が全て枯れた!?ルフラン全土で!?

畑は全滅!?森林も!?

とりあえず紛糾する城を出て、王都周辺の視察に向かった!

先ずは自分の目で確かめねば!


・・・茫然自失・・・。

・・・それ以外に形容詞が思い浮かばない・・・。

『全ての植物が枯れた』この言葉からある程度は想像していたが・・・。

私は現在、王都にほど近い麦畑(だった土地)を視察しているが・・・。

以前視察した時は、見渡す限りの麦畑に黄金色の麦がたわわに実っていたのだが・・・。

・・・何も無い。

宛ら見捨てられた土地であるかの様に、

・・・土・・・土・・・土・・・。

そう!まさに土しか無いのだ!

下世話な言い方をすれば、ぺんぺん草1つ生えていない・・・。

遠くには嘗て林であったであろう、無数の立ち枯れた木々。

余りの事に我を忘れている私に見かねた護衛の騎士が、

「・・・宰相閣下。お気持ちは分かりますが、これは由々しき事態です。至急城へと立ち戻り、善後策を協議しなければなりますまい。」

騎士達に促され城へと戻る道すがら、私は茫然と馬を進める。

・・・善後策?

善後策だと!?

んなもんねーーーよ!!!

これでも長年1国の舵取りを任されてきた身だ。

少し考えただけでもこの状況が絶望的なのが理解できる。

有り体に言わば、『万事休す』だ!

現に、王都に限って言えば、既に食料品関連の商人達によって売り惜しみやぼったくりが横行し始めている。

ああいった行為は幾ら我々が禁止しても止められる物ではない。

そうこうしてるうちに城に到着した。

相変わらず各地からの報告や陳情が引きも切らず、城内の喧騒は凄まじい。中には怒号が飛び交う場所もあった。

(無駄だと分かってはいても)緊急会議を招集する様指示を出し、準備が整うまで執務室で休憩をとる事にした。

と、執務室の前に1人の兵士が立っている。

私に気付くと、

「宰相閣下。実は先程来、ダンバス帝国よりの使者がお待ちでございます。」

・・・忌々しい。

この!状況で!使者だとぉ!?

表向き平静を装いながら私は怒声をあげるのを必死に堪えていた。

あまりにもタイミングが良すぎる。

大方溺れている犬を、さらに棒で叩く様な事をしに来たに違いない。

あの国は、皇帝はともかく、皇妃エリザベートは稀代の策略家であり、同時に私に勝るとも劣らない腹黒女だからな。

この気に乗じてどのような要求を突き付けてくるものやら想像も出来ん。

正直、会いたくない・・・。

だがしかし、会わぬ訳にもいくまい・・・。

使者は当然、我がルフラン王国の惨状を目にしている。

使者を追い返すなど、我が国の崩壊を早めるだけだ。

帝国の要求がなんであれ、会わぬという選択肢は存在しない。

ううむっ・・・。我ながら気が重い。

なんとか覚悟を決めて執務室のドアを開けた。

中に入ると、来客用のソファーで優雅に紅茶を飲んでいた男が、私に気付いて立ち上がった。

・・・ある意味私の予想通りの人物だった。

男は恭しくお辞儀をして、

「息災そうで何よりです。宰相閣下。」

この男の名はセバスチャン。私はセバスの愛称で呼んでいる。

この男、表向きは皇妃専属の執事だが、その実皇妃エリザベートの腹心中の腹心なのだ。

謀略・・・諜報・・・そして・・・暗殺!!

凡そ帝国の・・・いや皇妃エリザベートの仕掛けたありとあらゆる策謀を、時には統括し、時には自ら実行してきたまさしく帝国の暗部を知り尽くしている男。

「・・・それは皮肉か?セバス。貴公も見た筈だ。今の我が国の惨状を。恐らく今の私は、傍目にもやつれている筈だ。生憎朝から多忙ゆえ、鏡を見ている余裕も無いがな・・・。セバス。貴公は態々私を笑いに来たのかね?」

するとセバスは、懐より書類の束を取り出して、

「・・・宰相閣下。私がこちらに参りましたのは、皇帝陛下直筆の親書を宰相閣下にお渡しする為にございます。先ずは中身をお改め下さいませ。」

そう言うとセバスは件の書類の束を私に手渡した。

正直読みたくない・・・。

今のルフランと帝国の力関係では、例えどんな理不尽な要求を突き付けられても拒む事は難しい。

最低でも領土の一部割譲。

最悪帝国の属国になれと言われる可能性もある。

震える手で親書を読み進めていく・・・。

・・・。

・・・・・・!

・・・・・・・・・・!?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?!?

余りの衝撃で、私は思わず親書を取り落としてしまった。

それほどこの親書の内容が衝撃的だったのだ!

その内容を要約すると・・・。


崩御した国王に対する皇帝からのお悔やみ。


今回の仕儀には皇帝のみならず帝国全てが心を痛めている事。


そこでささやかながら『資金』と『食料品』『医薬品』を王国に対して無償援助する事にした。


既に先発隊は王都に到着する頃合である。どうかお役立て頂きたい。


尚、今後も続々と支援物資を輸送する手筈となっている。随時王国各地に届けられる筈である。


帝国は今後とも貴国との友誼を切に願うものである。



と、この様な内容であった・・・。

思わず私は叫ばずにはいられなかった!

「・・・バッバカなっ!有り得んわぁぁっ!!」

見ればセバスは再び優雅に紅茶を飲みながら、

「・・・因みに先発隊とは私と共に来た20台程の馬車でございます。宰相閣下の裁可が降り次第、すぐさま物資を搬入できる様に手配済みでございます。」

「・・・セバス。貴公まさか私を油断させてこの場にて私を暗殺する腹積もりなのではあるまいな?」

「おやこれは異な事を。このセバスチャン、憚りながら妃殿下の専属執事に過ぎません。私如き一介の執事風情には暗殺などとてもとても・・・。」

・・・どの口がほざくのか!今迄皇妃の命で何人の政敵や貴族を葬ってきたのか、私が知らないとでも思っているのか?

いやそんな事はどうでもいい!それよりも!

「・・・だとしたら余計に合点がゆかぬ・・・。これでは帝国にとって損にしかならぬではないか!!無念ながら今の我が国はまさしく混乱の極み!場合によっては帝国は労せずして我が国を制服できるのだぞ!それをよりにもよって我が国に対して大量に物資を無償提供するだと!?セバス!目の前にいるのが貴公でなくば皇帝は気が触れたのかと疑うところだぞ!」

相変わらずセバスは優雅に紅茶を嗜みながら、

「・・・そうですな・・・。僭越ながら私もそれには同意致します。なれど今回の処置は陛下や妃殿下のご発案ではございません。口にするのも憚られますが・・・。実は恐れ多くも創造神様が、陛下、妃殿下、ルイーゼ様に対して神託を下した結果なのでございます。大地の精霊が激怒したのはやむを得ない。だがルフランに住まう民草達には何の罪咎は無い。そう創造神様は申されまして、陛下達3人にルフラン王国に対して最大限尽力する様命じられたのでございます。」

・・・セバスの話を聞いているうちに、私は脱力の余り膝から崩れ落ちていた・・・。

セバスは追い討ちをかける様に、

「・・・どのみち畑や草原はともかく、森林地帯が元通りになるには数十年単位の月日が必要でしょうからな。そこで老婆心ながら宰相閣下に提言がございます。」

何だ?今更改まって。

「提言だと?」

セバスは得たりとばかりに、

「これは帝国の使者としてではなく、私セバスチャンが個人的に友誼のある宰相閣下に申し上げるのでございます。宰相閣下。どうか早急にフォーチュン王国と和解、もしくは講和するべきであるとお勧め致します。理由を申し述べても宜しいでしょうか?」

・・・先日までのルフラン王国であれば、『馬鹿な事を言うな!』とにべもなくはねつけていたところであるが、現在の王国の現状がそれを許さない。

「・・・セバス。是非聞かせて欲しい。」

「まず1つ目。現在この国は創造神様と大地の精霊様の怒りを買っており、これは宰相閣下にとって政治的に極めて拙い状況です。しかしながらフォーチュンと和解すれば万事解決します。そうではありませんかな?そして2つ目。フォーチュンと和解すれば我が帝国だけでなくフォーチュンからも大量の支援物資が供給されるという事。そして最後の3つ目こそが肝要ですが・・・。先程私はルフラン王国の復興に数十年はかかるであろうと申し述べました。ですがコレもフォーチュンと和解すれば長くて数日で元通りになるでしょう。以上フォーチュンと和解するだけで、いいことずくめという訳です。はっきり言ってメリットしかありませんな。」

・・・まさしくぐうの音も出ないとはこの事だな・・・。

もしこの提言を拒否すれば、早晩私は今の地位を失うだろう。最悪自分の首と胴体が離れ離れになるかもしれん・・・。

「・・・どうやら選択の余地は無い様だな・・・。ならば善は急げだ。セバス!今更この様な事を頼むのは気が引けるが、我が国とフォーチュン王国との仲介役を頼みたい。引き受けて貰えぬか?」

「・・・そのお言葉を待っておりました。不肖このセバスチャン。全身全霊を持って仲介役を務めさせて頂きます。」

なんとなくだが、私は自分が窮地を脱したのだと、直感で理解した・・・。

はい!という訳で、ルフラン編でした(*^^*)

現場からリオンがお伝えしました〜(*^^*)

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